セグエ Research Memo(7):ネットワークセキュリティの新たなリーディングカンパニーを目指す(1)
1. 市場環境と長期ビジョン
セグエグループ<3968>が属するセキュリティ市場環境では、高度情報化社会の進展とともに、さらなるセキュリティ需要の拡大が見込まれる。一例を挙げると、サイバー攻撃は年々高度化・巧妙化が進むとともに新たな手口も日々生み出されており、最近ではランサムウェアの急増やIoT※の進行に伴う攻撃対象の増加等が起きている。これらに対応するため、企業や組織におけるセキュリティ対策の重要度は増しており、国内のセキュリティ(製品及びサービス)市場の2026年までの年平均成長率は6.1%と、世界市場の予想成長率(年平均10.0%)に近づくと予想されている。
※Internet of Things:モノのインターネットのこと。従来は主にパソコンやサーバ、プリンタ等のIT関連機器が接続されていたインターネットに、それ以外の様々なモノを接続すること。
こうした市場環境を踏まえ、同社は2019年8月に長期ビジョンを公表し、長期的な方向性としてネットワークセキュリティの新たなリーディングカンパニーを目指している。具体的には、AIやIoTなどの新しいテクノロジー、ユニークな発想のメンバーを結集したセキュリティソリューションプロバイダービジネスを展開することで、顧客、パートナーから信頼され、自らが誇れる業界TOP企業を目指す。一方、経営戦略の基本方針としては企業価値向上を追求していく。具体的には、既存事業分野の持続的成長、新規プロダクト、サービス、自社製品、自社サービスへの集中投資と拡大に加え、M&A戦略及び新たなビジネスモデル創出による爆発的成長を目指す。ベースラインの持続的な成長に加えて、爆発的な成長を達成するために、M&A戦略や新規事業を積極化する方針である。
2. 中期数値目標と達成に向けた取り組み
同社は市場環境認識や長期ビジョンに基づき、2020年2月に対外的には初めてとなる中期数値目標を発表した。2022年12月期に売上高150億円、営業利益10億円、営業利益率6.7%を目指していたが、計画策定時には想定しなかったコロナ禍そして世界的な半導体不足による納期遅延の影響を大きく受け、目標達成は厳しい状況となっている。
一方、2022年4月の東証新市場区分再編に伴い、同社はプライム市場へ移行したが、移行基準日時点(2021年6月30日)において、当該市場の上場維持基準のうち流通株式時価総額の基準を満たしていなかったことから、2021年12月に上場維持基準の適合に向けた計画書を発表した。基本方針として、流通株式時価総額基準の充足に向けて、事業成長を加速させて企業価値の向上に取り組み、時価総額の向上を図る。併せて流通株式比率の向上にも取り組み、さらなる流通株式時価総額の向上を目指す。また、新たな中期数値目標として、2024年12月期に売上高170億円、営業利益12億円、親会社株主に帰属する当期純利益8億円、EPS69円を掲げた。基準の充足に向けて具体的な施策を推進することで3つのビジネスをバランスよく伸ばし、目標達成を目指す。
なお、この中期数値目標は、売上高は会計基準の変更もあり2021年12月期実績比1.4倍(年平均成長率12.2%)にとどまるものの、営業利益は同1.9倍(同23.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は同1.8倍(同20.7%)と大幅な増益を計画しており、意欲的な目標であると言える。利益率の高い自社開発ビジネスを大きく伸ばすことで営業利益率の改善が見込まれるほか、2020年12月期及び2021年12月期の増員に伴う販管費増加が一巡したことも増益に寄与すると見られる。2022年12月期業績が順調に推移していることからも、中期数値目標達成に向けて好調なスタートを切っていると弊社では評価している。
中期数値目標達成に向けた具体的な取り組み施策としては、(1) 基盤となる技術者の大幅増員、(2) VADビジネスの伸長、自社開発ビジネスの拡大、システムインテグレーションビジネスの強化、(3) ストック型サービスビジネスの拡大、ビジネスの変革、資本・業務提携やM&A、(4) IR・資本政策、SDGsへの取り組み、などを計画している。具体的な内容は以下のとおりである。
(1) 技術者の大幅増員
同社グループの人員は約7割が技術者であり、取り扱い商材の新規検討や品質確保、自社製品の開発、各種サービスの提供など、事業の基盤として欠かせない存在である。そこで新たに採用チームを編成し、2024年12月期までに技術者採用数の倍増を目指す。
同社では人材投資として積極的な採用を継続しており、技術者の採用・育成を継続することはグループの成長に不可欠であると考えている。ITエンジニアが客先を訪問し、技術的付加価値を付けてシステムを構築・提供できることが、同社の強みの1つであり、同社への信頼感を高めている。国内ではITエンジニア不足が深刻だが、同社は技術レベルに応じた独自採用ルートも活用することで人材を確保してきた。加えて、自社開発ビジネスを強化するため、営業・マーケティング職を増員し、販売力を強化している。また、成長に即した報酬体系の見直し、新卒から幹部候補までの研修の強化、インサイドセールス(相手先を訪問しない内勤型営業)の強化なども実施している。今後も、継続的にグループ各社のリソース再配置を検討・実行し、グループ内組織・事業の整理・最適化にも取り組む方針だ。
2022年12月期第2四半期のトピックとしては、技術者採用倍増を社長直轄のプロジェクトとして始動した。また、採用、育成を加速するため、採用組織の見直しを進めるとともに、より魅力的な環境の整備を進めている。2022年6月末のグループ従業員数は前期末から31名増加したが、このうち29名が技術者となるなど、早くも成果が出ている。
(2) 3つのビジネスの強化
VADビジネスの伸長、自社開発ビジネスの拡大、システムインテグレーションビジネスの強化を図るものであり、同社の今後の成長戦略の中心をなす取り組みと言える。
a) VADビジネスの伸長
「VADビジネスの伸長」としては、新規セキュリティ商材の継続的取り扱い、効率的な販売体制のさらなる強化、着実なサポートサービス(ストック収入)の積み上げを推進する。売上高目標としては、2024年12月期に83.5億円(年平均成長率16.7%)を掲げている。
2022年12月期第2四半期のトピックとしては、半導体不足による納期遅延影響が続く逆風のなか、新規メーカーとの取引を増やし代替商材を確保したことにより、プロダクト販売が伸長し、売上高は前年同期比で約3割(5億円超)増加した。各社商材の売上でトップクラスの実績を誇る同社に対する評価は高く、Juniperから6年連続、Darktraceから2年連続で表彰を受けている。また、サポートサービス(ストック収入)についても同16%(約1.3億円)増加しており、着実に積み上げている。このほか、新規セキュリティ商材を継続的に取り扱っており、2022年4月にはサイバー攻撃の兆候を検知するRapid7「Threat Command」、6月にはMicrosoft365向けSaaS型バックアップサービス「Barracuda Cloud-to-Cloud Backup」、8月にはIPデバイス可視化を基盤としたセキュリティソリューションを提供する「Forescout」、9月にはMicrosoft365向けSaaS型メールセキュリティソリューション「Vade for M365」の販売を開始した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<NS>
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