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エヌ・シー・エヌ Research Memo(9):国策に先駆けて取り組んできた事業の拡大


■今後の見通し

1. 2023年3月期の業績予想
エヌ・シー・エヌ<7057>の2023年3月期の業績予想については、売上高9,734百万円(前期比13.6%増)、売上総利益2,384百万円(同16.2%増)、営業利益429百万円(同8.4%増)、経常利益461百万円(同10.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益326百万円(同7.0%増)を見込んでいる。コロナ禍による経済への影響のほか、住宅業界においても世界的な木材資源の需給バランスの不均衡を背景とした木材価格の高騰及び供給体制の混乱(ウッドショック)の継続は憂慮され楽観視できない状況にある。ただし、SE構法で利用する集成材は、すべて国内メーカーで製造した製品を使用しており、2023年3月期も引き続き集成材メーカーとの連携をより一層強化していく予定である。また、原材料の約3割が国産材であり、SE構法における杉材等の技術評定は2020年9月に取得済みで国産材比率を上げる準備は整っている。

なお、このような状況のなか、2023年3月期は中期経営計画(売上高100億円)の最終年度となる。2023年3月期の売上高は9,734百万円を計画しており、中計目標の100億円に対してはやや保守的な計画だ。ただし、国の政策に先駆けて取り組んできた事業の拡大が見込まれる。同社は保守的に映る確実性のある計画を期首に打ち出す傾向があるため、最終的な中計の達成確度は高いと弊社では考えている。

住宅分野の売上高については8,091百万円(前期比11.8%増)を計画。新規登録店の獲得による登録施工店ネットワークの強化により事業拡大の効果を見込んでいる。大規模木造建築(非住宅)分野については、木構造デザインによるプレカット工場ネットワークを拡大することで生産体制を強化するとともに、SE構法以外の工法にも対応した大規模木造建築のワンストップサービスによって、売上高は1,128百万円(同30.2%増)を計画。さらに、認知度向上と事業拡大に向けて、マーケティング活動を強化する。

その他の分野については、売上高515百万円(同10.7%増)を計画。住宅の省エネルギー化支援として一次エネルギー計算出荷を3,000件出荷し、MAKE HOUSEにおいては、BIM事業をさらに加速させるために新拠点となるBIMセンターを有効活用するとともに積極的な人材採用を行うことで、BIMモデルの生産体制強化と木造建築向けBIMソリューションの開発を進める。また、技術分野では木構造技術センター(ティンバーラボ)の積極的な活用を行い、5階建てSE構法の商品化及び国産材の利用率向上に寄与する予定である。

2.中期経営計画における進捗
既に完了したものは以下のとおり。
(1) 住宅分野の新規登録店増加に向けた営業体制の整備
(2) 木構造デザイン設立を含む、構造設計と木材加工のプラットフォーム整備と提携工場の拡充
(3) 省エネルギー計算サービス等の環境設計量産体制へ向けたビジネスモデル確立
(4) BIM設計時代到来に向けた基礎要件の整備
(5) 営業利益率確保のための社内経営システムの整備

以下の項目については2023年3月期も引き続き投資を計画している。
(1) 木構造デザイン及び非住宅分野への設計人材大幅拡充
(2) 主力商品であるSE構法以外の在来工法、CLT工法への構造計算システム投資
(3) MAKE HOUSEを中心としたBIM利用に向けたインフラ整備の拡充
(4) 木構造基礎研究を主眼とした「木構造技術センター(ティンバーラボ)」の利用拡大

3. 市場環境と今後の成長戦略
前述のとおり、「建築基準法 第20条 4号特例改正」が大きく市場環境を変えてくることになる。(1) 4号特例の縮小によって、2025年に木造2階建て建築でも構造確認が義務化されるため、施行に向けた動きとして木造の構造計算の普及が加速していくことになるだろう。また、(2) 「省エネ基準の適合義務化」においては、説明の義務化にとどまっていたものが、2025年にすべての住宅に省エネルギー基準への適合が義務付けられ、省エネ計算は必須となる。同社の省エネ計算、木造化、木造特例の縮小による構造警戒、耐震シミュレーションなど、各事業部門は時代のニーズによって成長するであろう。

また、MUJI HOUSEによるセカンドハウス・宿泊施設受注事業のほか、一宮リアライズによる地方創生・グランピング事業、さらにSanuとの合弁会社N&S開発におけるセカンドハウス事業など、新たなマーケットの創造によって、SE構法の認知度も高まることに繋がるであろう。

(1) 脱炭素社会への取り組み
2010年の「公共建築物等木材利用促進法」制定以降、農林水産省、国土交通省では、同法に基づき、公共建築物における木材の利用に取り組んできた。公共建築物の床面積ベースの木造率は、法制定時の8.3%から2019年には13.8%に上昇した。木造非住宅建築市場は拡大傾向にあるなか、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律が成立し、2021年10月には「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が改正施行された。これにより、法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大。非住宅分野や中高層建築物の木造率は今後さらに高まる可能性があるだろう。なお、持続可能な森林資源と経済の循環を実現する新たな木造建築市場等の創出に向けた政府の市場領域ロードマップによると、2030年時点で、木材活用大型建築(※低層住宅を除く)の市場規模は1兆円を見込んでいる。

同社は鉄骨造と同様の精密に構造計算された「SE構法」により、木造建築において資産価値の高い家を提供しているが、樹木は光合成を行うことによって温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を大気中から吸収し、木質繊維の形で炭素を蓄積している。

木造住宅が増えることによって、その分だけCO2貯蔵量が増加するため、大気中からCO2を取り除いたことになり、RC造から木造に構造を変更することで相当量のCO2削減効果となる。耐震長寿命化につながる耐震シミュレーションや生活スタイルに合わせたスケルトン&インフィルのほか、省エネ計算、高断熱パッシブといった省エネ住宅化など、同社の事業すべてにおいてCO2削減に不可欠な事業である。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)


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