サイバリンクス Research Memo(3):2021年12月期から4セグメント体制に再編成(1)
1. 事業セグメント
サイバーリンクス<3683>の事業セグメントは、2020年12月期まではITクラウド事業とモバイルネットワーク事業の2本柱であったが、2021年12月期からは流通クラウド事業(2020年12月期まではITクラウド事業のサブセグメント)、官公庁クラウド事業(同)、トラスト事業(2021年12月期からの新セグメント)、モバイルネットワーク事業の4つに変更している。2021年12月期のセグメント別売上高は、流通クラウド事業が4,021百万円(売上高比率30.4%)、官公庁クラウド事業が6,159百万円(同46.5%)、トラスト事業が95百万円(同0.7%)、モバイルネットワーク事業が2,964百万円(同22.4%)であった。また、セグメント別経常利益は、流通クラウド事業が565百万円、官公庁クラウド事業が596百万円、トラスト事業が349百万円の損失、モバイルネットワーク事業が381百万円であった。
(1) 流通クラウド事業
2020年12月期まではITクラウド事業のサブセグメント(流通クラウド分野)であったが、2021年12月期から単独セグメントとして区分している。流通クラウド事業に含まれる主な製品やサービスは、食品小売業(スーパー等)向けの基幹業務システム(製品名:@rms)やインターネットEDIシステム(同:BXNOAH)、大手卸売業向けのクラウドEDIサービス(同:クラウドEDI-Platform)、企業間連携プラットフォーム(同:C2Platform)、小売業・卸売業・メーカー向けの商品画像データベース(同:Mdb)及び棚割マネジメントシステム(同:棚POWER/棚SCAN-AI)、専門店向け販売在庫管理システム(同:Retailpro(リテイルプロ))となっている。
流通クラウド事業の主力製品は、流通食品小売業向け業務クラウドサービスの「@rms」シリーズである。この「@rms」シリーズには、基幹システムだけでなく生鮮発注システム、ネットスーパーシステム、小売業向け棚割システム、単品情報分析システム等の周辺サービスも含まれている。顧客は、基幹システムだけでなく周辺システムだけを単数あるいは複数契約することも可能である。2021年12月期末時点の「@rms」シリーズの導入店舗数は1,288店に上り、市場全体21,000店(同社推定)におけるクラウド小売基幹系システム導入実績としてはトップと推定されている。
次に大きな構成比を占める「クラウドEDI-Platform」は、流通食品卸売業向けクラウドサービスで、小売業者からの様々な通信手段による発注・入荷・受領・返品・請求・支払いなどの商取引に関する情報データを一括整理して卸売会社側に提供するシステムで、開発当初は業界初の仕組み(システム)であった。2021年12月期末時点で「クラウドEDI-Platform」を使った商流額(卸売側)は8.9兆円※にのぼり、市場全体36兆円※の24.7%となっている。加工食品卸売上高上位10社のうち7社が「クラウドEDI-Platform」のユーザーであることからも、同社のクラウドサービスがいかに高く支持されているかが窺える。なお、「C2Platform」の新機能「C2PF小売商談プラットフォーム」という小売業−卸売業間での商談プラットフォームの提供を2021年6月に開始した。
※同社推定。
また、同社の提供するクラウドサービスは「シェアクラウド」であり、高品質のサービスを低価格で提供できることが特色となっている(詳細は後述)。
(2) 官公庁クラウド事業
2020年12月期まではITクラウド事業のサブセグメント(官公庁クラウド分野)であったが、2021年12月期から単独セグメントとして区分している。官公庁クラウド事業の主な事業は、地方自治体(主に地元の和歌山県の他、同県、大阪府南部、奈良県内の市町村)向けの基幹系・情報系の行政情報システム、防災無線等の地域防災システム、小中学校向けの「Clarinet」という校務クラウドサービス、医療機関向けの医療連携プラットフォームである「青洲リンク」、民間企業向けPC保守等のカスタマサポートサービスである。和歌山県における地域防災システムへの同社の評価・認知度は高く、県内シェアは群を抜いている。2021年12月期の官公庁クラウド分野の売上高6,159百万円の内訳は、行政情報55.5%、地域防災20.0%、校務クラウド・地域医療連携22.7%、カスタマサポート1.8%となっている。この分野は、顧客が官公庁であることから比較的安定した売上高が期待できる反面、大きなプロジェクト(案件)の有無や納品のずれ込みなどによって売上高や利益が変動する場合もある。
(3) トラスト事業
2021年12月期から新たにセグメント区分された事業で、マイナンバーカードをベースにした「第3のトラストサービス」を提供する。同社は、2020年7月に「電子委任状取扱業務」の認定を取得したが、これと「時刻認証業務認定事業者(タイムスタンプ:TSA)」の認定(2017年4月取得)、「公的個人認証サービス プラットフォーム事業者」の認定(2017年12月取得)と併せて、トラストサービスを提供するための準備が整った。そのため2021年12月期から、トラストサービス市場に本格参入することを決定し、この事業を新たに「トラスト事業」としてセグメント分けした。マイナンバーカードをベースにした「第3のトラスト」を中核的な強みとして、「人(本人性)、物(存在)、コト(行為)」全方位のトラストサービスを展開する計画だ。なお、同社の電子委任状サービス「マイナトラスト電子委任状」が、政府の電子調達ポータル及び政府電子調達(GEPS)に採用され、2021年8月から稼働を開始している。引き続き積極的に研究開発投資を推進し、強み(マイナンバーカード・電子委任状・タイムスタンプ)を生かした新サービスの開発により、早期の事業化とサービス提供の開始を目指している。
(4) モバイルネットワーク事業
NTTドコモの1次代理店であるコネクシオ<9422>と「代理店契約」を締結し、2次代理店として和歌山県内で7店のドコモショップを運営している。同社の推定では、県内の運営代理店シェアは35.1%(2021年12月期)とトップであり、県内最大のNTTドコモ代理店となっている。同社が運営しているドコモショップは全体的に高評価を得ており、同社のこの事業部門も利益を確保している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<YM>
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