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クロスマーケ Research Memo(5):デジタルマーケティング事業などが好調で業績上振れ


■業績動向

1. 2022年6月期第2四半期の業績動向
クロス・マーケティンググループ<3675>の2022年6月期第2四半期の業績は、売上高12,300百万円、営業利益1,710百万円、経常利益1,661百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益1,111百万円となった。2021年6月期が6ヶ月の変則決算だったため、2022年6月期第2四半期と前年同時期となる2020年12月期下期(7月~12月)を比較すると、売上高で48.5%増、営業利益約2倍、経常利益86.0%増、親会社株主に帰属する四半期純利益で約2.5倍と大幅な増収増益となった。この要因は、2021年1月に子会社化したドゥ・ハウスの業績が加わった影響が大きいが、既存の国内外事業の収益向上による影響も同様に大きかったようだ。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」)等の適用により、売上高は54百万円減少し、売上原価は42百万円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益はそれぞれ12百万円減少した。

日本経済は、コロナ禍の影響により引き続き厳しい状況にあるものの、ワクチン接種の促進などにより個人消費に持ち直しの動きが見られた。一方、感染症再拡大に伴う世界経済への影響には注意する必要があり、依然として不安定な経営環境が続いている。デジタルマーケティング市場とマーケティングリサーチ市場(データマーケティング、インサイト)に関しては、企業によるDX投資が本格化してきたことを背景に堅調に推移している。このような事業環境のもと同社は、持続的成長実現のため策定した中期経営計画「DX Action 2024」に沿って、ビジネスモデルの進化と事業領域の拡大を進めた。

この結果、同社業績は急拡大した(四半期別で見ると着実に利益水準を上げている)。特に利益面では、2021年1月から連結したドゥ・ハウスの採算が先行投資期のためさほど高くなかったものの、コロナ禍を背景にオンラインリサーチの構成比が伸びて外注費や人件費が抑制されたことで、売上総利益率が上昇した。また、家賃や交通費などコロナ禍を背景に販管費率が改善したこともあり、営業利益率は前年同時期(2020年10月〜12月)比で2.9ポイント向上することとなった。営業利益率の改善は、コロナ禍という環境から食品企業などコストのかかるオフラインの定量調査が縮小したという側面もあるが、定性調査でオンラインリサーチが既に主流になっていることなどもあり、コロナ禍が落ち着いた後も売上総利益率の水準は比較的高い状態が続くことが予想される。なお、デジタルマーケティング事業を中心に国内外ともに想定以上に好調に推移した模様である。このため、2022年6月期第2四半期業績は同社想定以上に上振れとなり、通期業績の上方修正につながった。


デジタルマーケティング事業は3倍近い増益となった
2. 2022年6月期第2四半期のセグメント別業績動向
2022年6月期第2四半期のセグメント別業績は、デジタルマーケティング事業が売上高5,067百万円、セグメント利益(営業利益)526百万円、データマーケティング事業が売上高4,173百万円、セグメント利益1,413百万円、インサイト事業が売上高3,060百万円、セグメント利益605百万円となった。前期が6ヶ月決算だったため増減率は公表されていないが、前年同時期(2020年7月~12月)と比較すると、営業利益が3倍近く伸びたデジタルマーケティング事業ばかりでなく、データマーケティング事業とインサイト事業も大幅な増収増益となっていることが分かる。

(1) デジタルマーケティング事業
(株)クロス・コミュニケーションを中心としたシステム受託開発やIT人材サービスは受注・売上高ともに堅調に推移し、デジタルプロモーションを展開するディーアンドエムも、パネルの拡充や社会のDX化の加速を背景にサービスの幅を広げ、受注・売上高ともに好調に推移した。また、2021年1月から子会社となったドゥ・ハウスは、オンラインのサンプリングプロモーションがコロナ禍の生活様式にフィットしたことで、売上高・利益ともに順調に伸長した。この結果、クロス・コミュニケーション、ディーアンドエム、ドゥ・ハウスの主力3社の業績が計画を上回って推移し事業全体の伸びをけん引して、コロナ禍前の2019年7月~12月と比べても売上高、セグメント利益ともに大きな伸びとなった。

(2) データマーケティング事業
コロナ禍で引き続きオンラインサービスの需要が順調に推移しており、売上高も全体的に堅調に推移した。また、オンライン比率の上昇やアウトソーシング拠点の活用などによる採算向上により、セグメント利益は売上高の伸びを上回って増加した。ただし、生産部門では繁忙期の人員に余裕がなくなっており、下期には採用を強めることも検討しているようである。海外拠点については、体質強化が進んでいるため経済活動の回復に伴って売上高・利益が回復し、特に海外収益をけん引している米国で大型案件を継続して計上した。コロナ禍前の2019年7月~12月と比較すると、生産性の向上などによりセグメント利益は大きく伸長したが、売上高が2019年7月~12月の水準に戻りきれていないことが課題と言えよう。

(3) インサイト事業
対面インタビューのオンライン化や手法変更などに対応したため、国内案件を順調に確保し、売上高・利益ともに堅調に推移した。海外も、一部コロナ禍で厳しいエリアはあったが、米国を中心に経済環境の回復に伴って業況が回復し、前期から進めてきた固定費削減の効果などもあって収益貢献を継続した。収益状況は、同じリサーチ領域のためデータマーケティング事業と似た傾向になっており、2019年7月~12月と比較すると、生産性の向上などによりセグメント利益は大きく伸長したが、売上高が戻っていないことが課題と言えよう。なお、海外事業全体(主にデータマーケティング事業とインサイト事業)では、2020年7月~12月にコロナ禍で赤字となったが、2021年7月~12月には黒字転換した。米国のように好調な国は投資を拡大し大型案件を狙う一方、売上回復が厳しい国では固定費削減による収益改善を優先した結果、黒字拠点が増え、海外事業全体の収益体質が大きく改善したことが要因である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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