イード Research Memo(4):2022年6月期業績見通しは期初計画を据え置くも、利益ベースで上振れの可能性

■業績動向

2. 2022年6月期の業績見通し
イード
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6038>の2022年6月期業績は、売上高で5,700百万円、営業利益で前期比16.6%増の530百万円、経常利益で同14.2%増の530百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同24.7%減の350百万円と期初計画を据え置いた。営業利益や経常利益は2015年6月期以来7期ぶりに過去最高を更新する見通しだ。第2四半期までの通期計画に対する進捗率は売上高で47.6%と50%を下回っているものの、営業利益は67.1%と直近5年間の平均進捗率58.3%を上回っており、今後インターネット広告需要が再び冷え込むようなことがなければ、計画を達成できる可能性が高いと弊社では見ている。
売上高については絵本ナビが子会社対象から外れた影響により3億円強の減収要因となるが、新規連結したSAVAWAYで5億円前後の売上寄与が見込め、ほぼ相殺できる見通しだ。ネット広告収入やデータ・コンテンツ、ECソリューション等の売上についても堅調推移が予想される。特にEC領域ではSAVAWAYを子会社化したことにより、既存のEC関連事業(ECコンサルティング、ECプラットフォーム、ECサイト運営等)との連携によるシナジーも期待でき、ECトータルマーケティング支援サービスとして事業規模の拡大が見込まれる。なお、SAVAWAYのECプラットフォーム一元管理サービス「TEMPOSTAR」の競合として、Hamee
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3134>やアイル
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3854>などが挙げられるが、同社も業界トップ5位内に入る主要ベンダーの一角を占めており、顧客企業数は1千社弱程度と見られる。
また、新たに子会社化したリンクは東京・神奈川で進学相談イベントを展開しているほか、フリーペーパーの発行やメディア運営なども展開している。子会社化した目的として、同社が運営する教育情報サイト「リセマム(保護者向け)」「リシード(教育関係者向け)」との連携により、リアルなイベントとオンラインでの情報発信を組み合わせることで教育分野での収益拡大を図っていくことに加えて、こうした学生を持つ世帯に対してグループで提供するその他のメディア情報を提供することで、新たな収益獲得機会を広げていくことが狙いとなっている。こうした世帯は住宅や自動車などの購入や資産運用など様々なニーズがあり、該当するメディア情報などを提供していくことで各メディアのUU数増加やEC物販の増加などといった効果が期待される。
そのほかネット広告収入以外の収益源の開拓として、メディアのコンテンツ力を生かした有料サブスクリプションモデルやアフィリエイトコマースの育成にも引き続き注力していくほか、新規ビジネスの開発にも取り組んでいく方針だ。有料サブスクリプションについては2023年6月期の後半にもARR※で1億円以上の規模を目指している。なお、2022年2月にはサイバーセキュリティ分野のソフトウェアを開発販売する(株)ティエスエスリンクと業務提携し、ティエスエスリンクに対してWebマーケティング支援を行っていくことを発表したほか、リカー・イノベーション(株)からお酒の専門メディア「nomooo」を取得した。
※ARR(Annual Recurring Revenue):年換算売上高
クリエイターエコノミーカンパニーとして積極的に事業展開を図り、2026年6月期に売上高100億円、EBITDA12億円を目指す
3. 中期目標
同社は中期業績目標として、2026年6月期に売上高100億円、EBITDA12億円の達成を目指している。5年間の年平均成長率は売上高で13%、EBITDAで17%となり、5年でそれぞれ約2倍に成長することになる。インターネット技術の進化とともに、誰もがメディア(発信者)となり、収益を獲得していくことが可能なクリエイターエコノミーの市場が今後ますます拡大していくものと予想されており、拡大するメディア市場においてメディアの収益化をサポートするプラットフォームとソリューションを提供していくことで、成長機会を取り込んでいく方針だ。
CP事業を主軸に積極的なM&Aや事業開発を行い、また、専門領域に特化したメディアによる360度のビジネスモデルを構築(収益基盤の多様化)していく戦略で、売上高の7~8割は既存事業の成長で達成可能と見ており、残りを今後のM&A、新規事業開発で創出していくことにしている。M&Aについては、同社の事業規模が拡大してきたことや過去の成功実績もあり、従来よりも大型の案件を手掛けていくことも可能になると見ている。
成長が期待できる分野としては、MaaS※関連が挙げられる。同社は2017年より複数のMaaS関連のベンチャーと資本業務提携を行い、事業支援を進めてきた。なかでも(株)ジゴワッツと共同開発した「バーチャルキー」については、レンタカー事業者等の民間企業や行政機関での採用が2020年以降相次いでおり、普及期に入ろうとしている。直近では2021年12月にJR西日本レンタカー&リース(株)が提供する無人レンタカーサービス「スマート駅レンタカー」でのサービス提供も開始するなど、導入先が広がっている。同社は「バーチャルキー」の月額利用料の一定率をロイヤルティ収入として受け取るため、導入台数が増えればストック収益として貢献することになる。なお、カーシェアリング市場の車両台数は現在の4万台弱から、今後は40万台規模まで拡大すると見られている。またレンタカー市場については約90万台の規模となっており、これらが「バーチャルキー」の当面のターゲット市場となる。同社収益への影響はまだ軽微だが、中長期的には貢献するものと期待される。
※MaaS(Mobility as a Service):代表例としてはカーシェアリングが挙げられるが、同社では新車販売からメンテナンス、給油、保険、中古車流通、リサイクルなど自動車に関わる既存のサービスを、ITを活用した利便性の高いサービスへと進化させたもの、また自動運転技術によって創出される新サービスを含めてMaaSと定義している。
また、子会社のエンファクトリーで2020年より提供している人材ソリューションサービス「複業留学」についても徐々に導入社数が増えている。「複業留学」とは、企業が従業員の人材育成や成長機会の提供、自立支援などを目的に、ベンチャー企業で2~3ヶ月程度、副業あるいは研修経験を積ませるサービスとなる。送り手側企業にとっては従業員の人材育成や成長機会となり、受け入れ側企業にとっては外部人材活用により課題解決につながる可能性があり、双方がメリットを享受できるサービスとなる。現在、導入企業(送手企業)は20社以上、受入企業は120社に拡大しており、新たな人財ソリューションサービスとして今後もさらなる事業規模拡大が期待される。
■株主還元策
同社は株主還元策について、期間利益に関しては内部留保の充実と成長投資に優先的に振り向けるため、当面は無配を継続し、企業価値を向上させていくことで株主に還元していく考えを示している。また、株価の水準次第では機動的な株主還元として自己株式の取得も選択肢の1つと考えているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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