Jトラスト Research Memo(2):アジアの総合金融グループとして成長を遂げる
1. 事業内容
Jトラスト<8508>は、国内外の金融事業などの事業会社を統括するホールディングカンパニーである。東証2部に上場しており、2022年4月からはスタンダード市場を選択している。日本で培ったノウハウを海外展開し、各国の利点を融合することで、アジアの総合金融グループとして成長を遂げてきた。同社グループでは、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業をベースに、東南アジア金融事業をけん引役として持続的な利益拡大を図ることを目指してきたが、コロナ禍による世界的な経済環境の悪化に直面したことから、2020年12月期よりいち早く抜本的な事業ポートフォリオの再編に踏み切った。2021年12月期は黒字化を実現し、成長フェーズに転換した。
同社の事業は、銀行とサービサーの2つを「コア事業」とした金融事業が中心である。藤澤社長による2008年のTOB以降、数々のM&Aによりグループの業容は急速に拡大し、資産合計は2008年3月期末の12,189百万円から2021年12月期末には610,631百万円に拡大した。また、韓国・シンガポール・インドネシア・モンゴルの4ヶ国の事業展開に加え、2019年8月には新たにカンボジアの優良銀行を傘下に収めた。コロナ禍による世界的な経済環境の悪化に伴い、2020年8月以降は事業ポートフォリオの見直しにより、不動産事業ではキーノート、日本金融事業ではJトラストカード、韓国及びモンゴル金融事業ではJT親愛貯蓄銀行及びJTキャピタルを売却した。その後は利益拡大に向け、成長性が高いJT親愛貯蓄銀行及びNexus Cardの再グループ化やエイチ・エス証券の子会社化を発表した。
2021年12月期のセグメント別営業収益の内訳では、東南アジア金融事業が最大の39.5%を占め、韓国及びモンゴル金融事業35.0%、日本金融事業23.1%、投資事業1.0%、その他(主にシステム事業)1.5%となっている。一方、営業利益段階では日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、投資事業では利益を出しているものの、同社が再建に向けて注力する東南アジア金融事業は損失を計上している。今後は日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業のさらなる利益拡大とともに、潜在成長性の高い東南アジア金融事業の黒字転換を図る方針だ。なお、同社は2022年以降に本格的な成長フェーズに入る計画である。
2. 沿革
同社の旧商号は株式会社イッコーで、中小企業及び個人事業主向け商業手形割引や手形貸付などの貸付業務を行っていた。1998年9月には大阪証券取引所(以下、大証)市場第2部に上場した。2005年に全国保証<7164>が同社の親会社になったのち、2008年3月に現 代表取締役社長の藤澤氏がTOBにより筆頭株主となり、2009年には商号を現在の社名であるJトラスト株式会社に変更した。藤澤氏の下、債権回収会社やファイナンス会社などに対して機動的かつ効果的なM&Aを実施した。一方、リスク管理を基本とした事業運営を軸に、外部環境の変化に的確に対応するとともに、迅速な意思決定ができる経営体制を目指した結果、2010年には様々な金融事業のノウハウを有する持株会社制に移行した。
その後、2011年6月に大阪から東京港区に本社を移転し、さらにM&Aを加速した。国内において蓄積したファイナンスノウハウを生かし、2012年には韓国で貯蓄銀行業を開始した。さらに2013年には東南アジアの投資拠点をシンガポールに設立した。2014年3月期から2015年3月期にはライツ・オファリングで調達した976億円を活用し、韓国におけるファイナンス会社や貯蓄銀行、インドネシアの商業銀行などを取得した。2018年10月には、新たにPT JTRUST OLYMPINDO MULTI FINANCE(以下、JTO)の株式60%の取得を完了し、韓国に続きインドネシアでも、銀行、債権回収会社、ファイナンス会社の三位一体体制を構築した。さらに、2019年8月には、カンボジアの優良銀行であるANZ Royal Bank(Cambodia)の株式55%を取得し、商号をJTRBに変更した。2019年3月期には、東南アジア金融事業及び投資事業において大幅な営業損失を計上することで不良債権の抜本的処理を断行し、業績回復への道筋をつけた。
しかし、2020年に入り世界的なコロナ禍による経済環境の激変に遭遇し、これまで安定的な利益貢献を続けていた韓国貯蓄銀行2行の売却など、抜本的な事業ポートフォリオの見直しに着手した。一方、経済・社会環境の落ち着きに伴い資産のキャッシュ化を急ぐ必要性が薄まったことから、成長性が高いJT親愛貯蓄銀行及びNexus Cardが2022年4月にグループに戻るほか、エイチ・エス証券を子会社化する予定となっている。藤澤社長の強力な指導力の下、同社グループの収益力拡大に向けた次の一手が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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