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セルム Research Memo(3):「フィッティング力」×「新ニーズ対応力」で経営課題に柔軟に対応


■会社概要

3. 事業概要
セルム<7367>の事業は、主に1)経営塾・経営メンタリング、2)ミドルマネジメント革新、3)組織人材開発コンサルティング、4)ファーストキャリア教育、5)現地法人を対象とした、人材開発/組織開発となっている。2021年3月期通期における主要サービス別の売上高構成比は、経営塾・経営メンタリングが24%、ミドルマネジメント革新が46%、組織人材開発コンサルティングが9%、ファーストキャリア教育が18%、現地法人を対象とした、人材開発/組織開発が3%となっている。

同社の特長・強みは、パートナーシップを結んでいるプロフェッショナルタレントの質の高さである。プロフェッショナルタレントとは大手企業の元経営幹部や部門幹部、実績のある経営者、戦略コンサルティングファーム出身者、大学・ビジネススクール教授など、圧倒的な専門性や経営経験を有する企業の課題解決に秀でた人物のことであり、2021年3月末現在で1,300名超のタレントネットワークを有している。

(1) 事業概要
a) 経営塾・経営メンタリング
顧客企業の各部門、グループ企業、グローバル拠点等からの選出された次期経営幹部人材に対し、経営リーダーとしての「軸」の開発を通じた経営幹部育成を目的とした中長期のトレーニングプログラムである。内容は、同社が選任するプロフェッショナルタレントとの対話や議論を通じた個々人の経営人材としての資質の見極め、強みと弱みの把握、その後の困難な課題や役割の付与をトータルで支援するものとなっている。また、同様の層に向けてプロフェッショナルタレントとの対話を繰り返し、経営リーダーとしての意識・言葉・行動について、プロフェッショナルタレントが対象者へ実践的な指導と助言を行うメンタリングも行っている。

b) ミドルマネジメント革新
経営幹部人材層と現場をつなぐミドルマネジメント層に対し、集合研修とオンラインのグループで行うコーチング、アセスメント等を組み合わせたテーラーメード型の育成体系プログラムである。内容は、経営の一員として高い視座をもって職務にあたる意識の改革、組織能力向上のためのリーダーシップ強化、働く価値観やキャリア観の多様化に対応するピープルマネジメント力の育成等であり、ミドルマネジメント層の育成目標を各社固有の課題に合わせて行っている。

c) 組織人材開発コンサルティング
主に人事部門や経営戦略部門に対し、顧客企業の経営理念と戦略に同期した戦略実行を担う人材を、継続的に開発していくための人材開発体系の構築を行っている。同社の組織人材開発コンサルタントが、顧客企業の中長期的な経営シナリオや事業環境の変化に鑑みて人材の要件を定義し開発目標を定め、各種育成施策と投資計画に反映させていくコンサルティングである。また、同様の層に向けて組織の一体感や求心力、健全性を高め顧客企業の経営理念・ビジョン・行動指針の浸透支援も行っている。

d) ファーストキャリア教育
主に入社前の内定者から入社後5年目までの若手社員、入社後の一定期間に指導役となるメンターに対し、入社後の早期離職といった課題や一括採用の見直しなどの新卒採用と新人育成の問題解決のため、また、ファーストキャリア期(入社前の内定から入社後5年目)に社会人としての基本スタンスを身につけさせるための各種コンサルティングを提供している。具体的には、人材開発体系の構築支援、各種研修プログラムの企画・開発・実行支援、若手層育成に関する支援を行う。

e) 現地法人を対象とした、人材開発/組織開発
日本企業のなかでASEAN・中国に籍を置く経営幹部人材に対し、人材・顧客企業の現地での事業成長と組織発展のためのサポートを行っている。人材開発においては幹部候補になり得る人材を発掘、戦略策定力やリーダーシップ力を開発するプログラムの提供や国・地域ごとのリーダー人材の把握、アサインメント、評価、育成など、一貫した仕組みづくりを支援している。組織開発においては、自社の経営理念や行動指針の浸透と、チームワークによる問題解決の組織風土づくりを支援している。

(2) 同社の特徴と強み
同社は上記サービスにおいて1)「フィッティング力」×「新ニーズ対応力」、2)顧客企業との中長期の関係性構築という強みを有しており、競合企業との差別化を図っている。

a) 「フィッティング力」×「新ニーズ対応力」
同社では、提供するサービスにおいて基本的にヒアリング→課題仮説設定→仮説議論→プロフェッショナルタレントとの打ち合わせ→顧客企業へのプレゼンテーション→実施準備→実行→振り返り及び次回提案という流れで進めている。このなかで同社の特徴・強みとなってくる部分が、プロフェッショナルタレントに関する部分である。プロフェッショナルタレントの質の高さはもちろん、案件にアサインしなければ報酬が発生しない変動的立ち位置であるため、固定的な報酬で業績を圧迫することがない仕組みを構築している。

同社では顧客企業の課題に合わせ、ヒアリング→課題仮説設定→仮説議論を経て、最適なプロフェッショナルタレントの提供を行っている。この特徴により、一般的な研修会社やコンサルティングファームが自社コンテンツや自社の得意分野を軸としたカスタマイズ型であるのに対し、同社では課題と個社の特長に応じてプロフェッショナルタレントをカスタマイズできる、テーラーメード型のサービス提供を可能にしている。またコンサルティング中において見えてきた課題など、新ニーズに対しても一般的な研修会社やコンサルティングファームが都度、新コンテンツの開発が必要なのに対し、同社では新たなプロフェッショナルタレントの活用によって、スピーディーな対応が可能となっている点が強みである。同社のフィッティング力が高く、かつ新ニーズ対応のスピードに優れたビジネスモデルは、コロナ禍によりデジタルトランスフォーメーションの急進や価値観・働き方の多様化、副業の社会的な浸透、ESG・SDGsを軸とした組織・人材開発ニーズなど、新たなニーズが急速に顕在化している昨今において、変化し続ける個社固有の経営課題に併走可能であることから、大きな強みであるものと弊社では評価している。

b) 顧客企業との中長期の関係性構築
同社の顧客は、複数の事業法人と多くの従業員を国内外拠点に展開する売上高1兆円以上の大手企業、売上高2,000万円以上1兆円未満の準大手企業であり、そのなかでも主要取引先は大手企業である。顧客とは経営塾を軸とした経営層の育成、ミドルマネジメント革新やファーストキャリア教育など複数の顧客チャネルからの取引があり、前述の方法によって顧客企業の中長期的な課題解決に向けた関係性が構築できていることから、5年以上の継続的取引顧客による売上が約74%を占めている。顧客企業と親密な関係を築くために、同社では、営業担当者は1人につき平均4~5社を担当する体制とし、顧客企業との密着度を高めている。

これらにより同社は継続的取引の基盤をつくり、顧客との取引を拡大させていくことで業績向上を図っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)


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