窪田製薬HD Research Memo(1):「クボタメガネ」は台湾で製造許可を取得、2021年内の発売を目指す
窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米クボタビジョン・インクを子会社に持つ持株会社である。現在は、近視の進行を抑制または改善させる効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」と、スターガルト病※及び網膜色素変性を適応対象とした治療薬候補品の開発を主に進めている。また、加齢黄斑変性等の網膜疾患患者向けの遠隔医療眼科用モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」はパートナー企業が見つかり次第、商業化に向けた取り組みを進める方針となっている。
※スターガルト病:遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。
1. クボタメガネの開発状況
同社はメガネのいらない世界をつくるという理想を掲げ、近視進行の抑制効果が期待できる「クボタメガネ」の開発を推進している。同デバイスは網膜に人工的な光刺激を能動的に与える独自のクボタメガネテクノロジー(アクティブスティミュレーション技術※1)を用いており、自然光を受動的に用いる他社先行品よりも眼軸長※2を効果的に短縮することが可能と見られる。2021年5月に台湾で医療機器としての製造許可取得を発表し、現在は製造委託先工場の品質管理検査を行っている段階にある。同社はテストマーケティングの意味合いも含めて2021年中の販売開始を目指し、2022年以降その他のアジア市場へも横展開していきたい考えだ。世界における近視人口は年々増加しており、同社は潜在的な市場規模として2030年に全世界で最大1兆3千億円の市場の可能性を有していると見ている。当初の販売価格が数十万円程度と想定されるが、将来的には量産効果で価格も低下することが予想され、今後の動向が注目される。
※1 アクティブスティミュレーション技術:ナノテクノロジーを用いて網膜に能動的に人工的な光刺激を与えて近視の進行抑制、治療を目指す同社独自の技術。特許も申請中となっている。
※2 角膜から網膜までの長さ。成人の場合、平均約24mmで、1~2mmでも長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまうため、遠くが見えにくくなる(=近視)。
2. 開発パイプラインの状況
そのほかの主要開発パイプラインのうち、スターガルト病治療薬候補の「エミクススタト塩酸塩」については、第3相臨床試験の被験者登録が完了しており、順調に進めば2022年第3四半期以降に試験結果のデータベースロックが完了する見込みだ。有効性が確認されれば販売承認申請を行う予定で、販売パートナー契約についても、承認申請が視野に入った段階で交渉が本格化するものと予想される。一方、「PBOS」については、スイスの大学病院で実施していた網膜断面の3D画像の検証やソフトウェア改良、患者データの収集などが7月頃には完了する見込みで、同データを持って複数のパートナー候補企業と販売契約交渉に臨む。そのほかVAP-1阻害剤の候補化合物について、共同研究契約先のLEO Pharma A/S(デンマーク)のスクリーニング評価が終わり、安全性が高いとのポジティブな評価が得られた模様で、今後、共同開発契約などに発展する可能性が出てきている。
3. 業績動向
2021年12月期第1四半期(2021年1~3月)の連結業績は、事業収益がなく、営業損失で685百万円(前年同期は740百万円)とほぼ計画通りの進捗となった。研究開発費が前年同期比74百万円減の506百万円となり、営業損失の縮小要因となっている。また2021年12月期通期の業績は、「クボタメガネ」の販売開始を想定し、事業収益10百万円を見込んでいる。一方、営業損失は「クボタメガネ」の商業化に向けた関連費用の増加により2,900百万円(前期は2,484百万円の損失)とやや拡大する見通し。なお、2021年3月末の手元資金は約6,185百万円となっており、当面の事業活動を行うための資金は十分に確保されている。また、2020年7月に発行した第三者割当による新株予約権の行使は順調に進んでおり、2021年5月末時点で未行使分は578万株相当となっている。
■Key Points
・「クボタメガネ」は台湾での製造許可を取得し、2021年内の販売開始を目指す
・「PBOS」は販売パートナー契約締結に向けた交渉が2021年夏以降始まる見通し
・VAP-1阻害剤候補化合物のスクリーニング評価でLEO Pharmaからポジティブな評価を受ける
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
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