明豊ファシリ Research Memo(7):2022年3月期の業績はDX投資や人材投資を継続しつつ増収増益を見込む
1. 2022年3月期の業績見通し
明豊ファシリティワークス<1717>の2022年3月期の業績は、売上高が前期比0.7%増の4,270百万円、営業利益が同1.1%増の920百万円、経常利益が同1.0%増の920百万円、当期純利益が同2.8%増の638百万円と増収増益を見込む。売上高はアットリスクCM方式が前期でなくなったことにより4期ぶりの増収に転じ、営業利益、経常利益については過去最高を連続更新する見通しだ。
市場環境としては、コロナ禍が続くなかで先行き不透明な状況にあるものの、CM業務については、大手企業や公共分野において導入メリットが浸透してきたことにより、発注者ニーズも多様化、複雑化してきており、今まで以上にコスト縮減や工期短縮への強い要請などに対する関心が高まるものと予想している。また、SDGsに取り組む企業が増えるなかで、脱炭素化や環境共生、BCP、長寿命化等をテーマとした案件の増加や、同社が得意とする働き方改革をベースとしたオフィス改革を支援する業務の需要増加も見込まれる。会社側では、コロナ禍におけるリモートワークの導入により、オフィス面積を縮小する動きが見られることもあり、オフィス事業の売上計画に関して厳しめに見積もっているものと見られる。このため、今後市場環境が一段と冷え込むことがなければ、売上高は上振れする可能性もあると弊社では見ている。
費用面では、同社の競争優位性をさらに高めるためのDX(システム開発)投資を実施するほか、人員の増員に伴う費用増を見込んでおり、営業利益率で前期の21.5%から21.6%とほぼ同水準を見込んでいる。人員の採用計画は10~15名を予定しており、引き続きスキルが高く同社の経営理念に合致した人材を厳選して採用していく方針となっている。
ESG/SDGsをテーマとした新たなCM需要の取り込みと、生産性向上による競争優位性の確保を推進していく
2. 今後の事業方針について
同社は2022年3月期の経営方針として、2021年を社会的な転換点となる一年と位置づけ、より広い視野で発注者支援事業としての需要を高めることを目標とし、以下の2点に取り組む方針を示している。
(1) 視野を広げたCM事業の創造と新たな価値の提供
中立性、高い技術力、幅広い技術的網羅性、デジタル活用力など同社独自の競争優位性を生かし、多様化、複雑化する顧客の課題解決を支援し、個々の要求を上回る価値(品質、コスト、スピード)の提供に取り組んでいく。特に、多様化するニーズにたいして、サービス提供分野ごとの専門性を高め、CM業務の品質向上を推進していく方針だ。
競争優位戦略としてESG/SDGsの視点、及びDXを活用した事業創造によって、新たなCM需要の創出と価値提供を図っていく。企業理念でもある「フェアネス」「透明性」「顧客側に立つプロ」としての強固なガバナンス体制を維持しながら、環境に配慮した施設の導入・運用支援(ZEB※、オフグリット等脱炭素化に資するCMの提供)のほか、施設の長寿命化のための各種提案、実現支援(CREMの提供)を推進していく。
※Net Zero Energy Building略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。
DXを活用した事業創造に関しては、同社のCM業務の基盤となる自社開発システムのさらなる機能強化を進めていくほか、AI技術やRPA等の連携、データベースへの実装による生産性向上を図っていく。自社開発システムとしては、アクティビティの可視化・定量化等を行う「Meiho Activity Management System」や、社内での情報の一元管理と維持保全を行う「Business Process Collaboration」、リアルタイムかつ正確な経営管理情報の可視化を行う「Meiho Databese Analysis System」などがある。
これら自社開発システムの一部は顧客と共有しながらプロジェクトを進めている。また、システムを外部販売する事例も若干ではあるが出てきている。建築業界とはまったく別の業界の企業からの依頼があり、カスタマイズして導入したほか、試験的に導入する企業も出てきている。同社では社内利用を優先にシステム開発を進めているが、今後リソースに余裕が出てくれば、外販用としてサービス展開していくことも視野に入れており、その際にはSierと連携して展開していく可能性も考えられる。
また、新たな取り組みとしてCM業務の価値向上を目的とした新組織「ナレッジ・センター」を2021年4月より立ち上げている。CM業務で蓄積した全社のドキュメンテーション(ノウハウ)と各種データを融合することで、CMのナレッジを共有化していく組織となり、社内の人材教育システムとして活用していくことにしている。コロナ禍でテレワーク率が90%を超え、社内での新たなOJT推進の施策の1つと考えられる。
(2) 競争優位性としての生産性向上
競争優位性を確保するための施策として、同社では人材育成と働く環境や働き方の進化による生産性の向上を推進していく。高品質なCMサービスを提供できる人材育成のための取り組みとして、同社では、企業文化や発注者支援業務への適応を支援するOJTの充実、優秀な人材の積極的な採用、時間をかけて多くの人の目を通す納得性の高い人事評価制度と処遇、の3点を推進している。
また、働く環境や働き方の進化としては、すべての業務を社内のデジタル基盤上で実行できるよう構築しており、90%超の高いテレワーク率でも高い生産性を維持すべく、社員からの新たな提案も組み込み、働く環境を日々進化させている。加えて、自社開発した「Meiho Activity Management System」によって、社員自らが働き方を向上させ、労働時間を自己管理できるシステムを構築している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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