リソー教育 Research Memo(4):徹底した感染防止策による対面授業の早期再開は高い評価を受ける
1. 2021年2月期の業績概要
リソー教育<4714>の2021年2月期の連結業績は、売上高で前期比5.6%減の25,201百万円、営業利益で同62.8%減の1,010百万円、経常利益で同56.6%減の1,192百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同71.6%減の555百万円となった。コロナ禍の影響により政府の緊急事態宣言が発出されたことを受け、2020年4月から5月にかけて主力事業の「TOMAS」や「名門会」(教室指導のみ)、「伸芽会」で休校を実施したほか、学校の休校により「スクールTOMAS」のサービスも一時休止となったこと、プラスワン教育で企画・運営していた体験ツアーの多くが中止を余儀なくされたことが減収要因となった。減収額は全体で1,503百万円となったが、このうち1,034百万円はプラスワン教育による減収となっている。ただ主力事業の「TOMAS」に関しては休校中に教室の改修工事を行い、徹底した感染防止策を施したうえで早期の授業再開を実現しウィズコロナ時代における新たな教育サービスの形として評価を高め、生徒数の増加につなげた。通期で見ると若干ながら増収を確保した点は注目される。
営業利益に関しては、減収による利益減に加えて感染防止策費用(教室改修工事、各種対策用品の購入費)で2~3億円、講師への補償手当や特別手当で3億円、スクールTOMASの海外子会社(TOMAS ENGLISH TRAINING CENTER,INC.)で運営していたオンライン英会話事業の完全外注化を決定したことによる事業閉鎖関連費用(従業員の特別退職金含む)3億円※を計上したことなどが減益要因となった。
※海外子会社の事業閉鎖に関連して、そのほかにも営業外で開業費償却20百万円、特別損失として関係会社整理損失引当金繰入額40百万円を計上している。
営業外収支が前期比で149百万円改善しているが、コロナ禍による休校要請に応じたことに伴う助成金収入214百万円の計上が主因となっている。また子会社数社の税効果会計を保守的に算定(繰延税金資産の計上を見送り)したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益の減益率が経常利益よりも大きくなっている。
2020年10月に発表した会社計画との比較においては、売上高で3.1%、営業利益で33.1%下回った。売上面では、2021年2月期第4四半期に入って新型コロナウイルス感染症の第3波が到来し、2021年1月に入って首都圏で2度目の緊急事態宣言が発出されたことにより、「TOMAS」など主力事業の売上が伸び悩んだほか、プラスワン教育の売上低迷が続いたことが影響した。営業利益で計画比5億円の未達となったが、このうち3億円は前述した海外子会社の事業閉鎖関連費用の計上によるもので、そのほか2021年3月以降の積極的な校舎展開を図るための優良物件の確保や、新校舎運営のための人員確保及び育成費用として1.8億円を計上したことが主な要因となっている。このため、2021年2月期第4四半期の営業利益が前年同期比で17.7%減の860百万円と再び減益となっているが(2021年2月期は第3四半期のみ前年同期比で増益)、海外子会社の事業閉鎖関連費用等の一時的要因を除けば増益となっている。
なお、「TOMAS」における感染防止策の取り組みについて見ると、全教室に設けた高さ190cm超の防御壁の個別ブースに生徒と講師を仕切るビニールカーテンを設置している。また生徒と講師は教室入出時に手指の消毒と検温を行い、サージカルマスクを着用し、講師についてはさらにフェイスシールドも着用して授業を行っている。授業終了後は講師がブース内の消毒作業を実施している。講師については、従来と比べて業務負担が増加するため特別手当を支給してきたが、2021年春からは恒常的な業務として時給に反映させている。こうした新型コロナウイルス感染症に対する徹底した対策は「TOMAS」だけでなく、「名門会」や「伸芽会」でもそれぞれの状況に応じて実施している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
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