1. 事業内容と売上高構成
エコモット<3987>はIoTインテグレーション事業の単一セグメントであるが、提供スタイル・ソリューションで売上高を区分している。2020年8月までの12ヶ月間の参考値売上高(2,346百万円)の内訳は、顧客ごとのニーズに対応したIoT導入を支援するデータコレクトプラットフォーム「FASTIO」のインテグレーションソリューションが301百万円(構成比12.8%)であった。用途・業種別ソリューションで分かれるパッケージサービスは、建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」のコンストラクションソリューションが1,155百万円(同49.2%)、融雪システム遠隔監視ソリューション「ゆりもっと」のモニタリングソリューションが454百万円(同19.4%)、交通事故削減ソリューションである「Pdrive」のGPSソリューション※が435百万円(同18.5%)であった。
※2021年8月期よりGPSソリューションをモビリティサービスと変更している。
IoTシステムの構築は、モノが介在する現実社会とインターネットのサイバー空間をカバーするため、各分野で優位性を持つ企業とのアライアンスが必要となる。同社は、「つなぐ力」「システム構築力」「組織力」などの領域でエッジを効かせた製品やサービスの提供を得意としている。IoTプラットフォームを自社開発しているが、クラウドインフラとしてはアマゾン・ドット・コム
2. 3つの強み
IoT利活用に必要なエコシステムは、モノ・コトからのデータ「収集」、クラウド上にデータ「蓄積」、クラウド上でデータ「分析」、分析結果を現実世界の「モノ・人」にフィードバックし「活用」するという4つの機能で成り立つ。IoTは、センサーをインターネットにつなぐことで、離れた場所の状態を知ることや遠隔でモノを操作することを可能にする。具体的には、現実世界で起こる温度、湿度、気圧、照度、騒音、振動などの物理現象をセンサーにより電気信号に変換し、通信デバイスにより通信回線でインターネットに接続してクラウド上のサーバーにデータを収集する。サイバー空間では、クラウドサーバーからの計測データの表示、画像監視、遠隔操作、車両の運行管理を行い、機械の稼働状況などを解析する。なお、データ解析にはAIを活用することもある。データをビジネスに生かすため、グループウェアやBIツール※とリンクさせる。
※BIツール:Business Intelligenceツールの略。企業の業務システムの一種で、膨大なデータを蓄積・分析・加工し、意思決定に活用できるような形式にまとめる。昨今は、情報の収集や成型といった入り口側の機能を簡略化し、美しく直感的なアウトプットに特化したものが注目されている。
同社の強みは、「つなぐ力」「構築力」「組織力」である。「つなぐ力」では、パートナープログラムを通じて2,000種類以上の接続実績があるセンサーを用意し、モノ・コトからデータを収集し、多彩なニーズに対応可能としている。多様な顧客ニーズに適応するため、豊富な自社開発の通信デバイスを製品化している。また、顧客の利用形態に応じて、自社エンジニアがカスタマイズもする。多くの導入実績に基づき、多種多様な屋内外の設置場所において最もセンシングに適した場所の選定などフィールドでの設置ノウハウを蓄積している。「構築力」では、豊富なノウハウに裏付けられたシステムの構築力とサービス運用力を併せ持つことが強みで、コンサルティングにより顧客ニーズに即したソリューションをワンストップで提供できる独自性を持つ。累計13,000以上の現場にIoTシステムを提供しており、常時30,000アイテムの運用を行っている。「組織力」では、IoT専業システムインテグレータとして、多岐にわたる分野をカバーしている。ワークフロー順に並べると、マーケティング、商品・サービス企画、ハードウェア設計・製造、組込ソフト・プラットフォーム設計・開発、ネットワーク設計・開発、Webアプリケーション設計・開発、コンサルティング、システムインテグレーション、他社アプリ連携、設置・工事、保守運用・アフターサポートとなる。
バーチャルの世界で完結するネットビジネスとは異なり、IoTは現場での活用で真価が問われるが、同社の最大の強みは圧倒的な現場力にある。同社のIoTビジネスを構成するのは、「センシング技術」「システム構築力」「サービス運用力」の3つの現場力になる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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