プラッツ Research Memo(5):医療機関がハイバックサポート機能を高く評価
4. 製品
プラッツ<7813>は、「高品質」「高機能」「低価格」をテーマにした製品作りに徹している。これまで、顧客の要望を取り入れた商品企画・開発をしてきた。介護ベッドの価格が数十万円と高すぎるとの声に応えて、1997年に10万円を切る製品を発売した。1998年に、小物を置く場所が欲しいとの要望を受け、業界初の宮付ベッドを販売した。2001年に、介護ベッドは「白」ばかりで、家では使いたくないという意見に対応して、業界初の「木調」介護レンタル対応ベッドを商品化した。後発企業として、価格だけでなく、それまで市場になかったが利用者が求めていた独自性のある商品を企画・開発をしてきた。
(1) 高品質
経済産業省は、2009年に介護ベッドのJIS規格を選定した。有力企業7社は、JISの工業認証と製品認証を取得している。同社のベトナム製造関連会社は、2013年4月にJIS認証を取得した。
(2) 高機能
佐賀大学医学部と、介護ベッド及び付属品であるベッド用グリップなどを開発した。共同開発に携わった元佐賀大学医学部准教授の松尾清美氏は、大学時代に脊髄損傷を負い自身も車椅子の利用者だ。製品開発にあたっては、医学的見地だけでなく、実体験に基づく健常者と異なる視点からの提案を受けた。
同社は、市場別にブランド展開をしている。利用者のニーズに合わせてベーシックタイプから高機能製品とプロダクトラインナップを整えている。2018年11月発売の在宅介護用ベッド「ミオレットIII」は、利用者にも事業者にも優しい、新たな時代に対応するマルチなスタンダードベッドとなる。ラインナップとして、樹脂ボード、木製フラットボード、木製宮付ボードが揃えてある。「垂直昇降」「3段階のサイズ変更」「パーツの軽量化」を実現。利用者には、「低床」「省スペース」「移乗のしやすさ」「身体のズレ抑制」などのメリットを提供する。レンタル会社に対しては、「サイズ&機能変更で在庫負担軽減」や「パーツの軽量化で作業者の腰痛予防」など業務効率向上をサポートする。
医療・施設用電動ベッドは、2016年8月に「P300シリーズ」を、介護施設向けの「アーデル」を2017年12月に上市した。ベッドのロックペダルが、頭側・足側のセンターはもちろん、左右からの計6ヶ所に搭載しており、設置場所を問わずロック操作ができるため、スタッフの負担軽減につながっている。
これらの電動ベッドは、新しい背上げの仕組みとなるハイバックサポートにより、誤嚥と褥瘡(床ずれ)リスクの低減が図られている。導入した病院は、患者の食事量が増加したことや誤嚥性肺炎のリスクが低減したことを評価している。
ハイバックサポート機能は、背ボトムをハイバック(頭−背部)とローバック(腰部)の2つに分け、それぞれの角度を電動で調整する。背上げ時のズレを抑える膝位置のフィッティング機能は、利用者の大腿部の長さに合わせ、パーツの変更なしでひざ脚ボトムの屈曲位置を2段階に調節できるため、ズレの少ない快適な背上げをサポートする。背上げ時に頸部の角度を調節、腹圧を軽減し、嚥下しやすい姿勢を再現する。従来の背上げに比べ、背上げ30°の場合、腰・臀部の最大圧を10%、60°の場合は15%軽減できる。背上げ後の静止状態でのズレ力と圧力を減らすことで、深部組織損傷(DTI)のリスクを低減する。背圧や腹圧を軽減し横隔膜を広げ、呼吸がしやすい快適な姿勢をつくれ、循環器への負荷を抑える。
(3) 低価格
生産拠点、生産体制、商品企画において、低価格化のための取組みをしている。主要生産拠点を、賃金水準が日本の5分の1から10分の1、中国の半分のベトナムに置く。生産体制は、海外の優良な協力会社や仕入先との協力関係によるファブレス体制を採っている。商品企画では、商品バリエーションを顧客・利用者が求める機能に絞っている。
ファブレス企業として企画・開発・設計に特化しており、持分法適用関連会社となる合弁会社に製造を委託している。以前は、台湾資本の在ベトナム企業であるSHENGBANG METALに上工程の金属加工を委託し、同社の現地法人PLATZ VIETNAM CO., LTD.(連結子会社)がアセンブリと品質検査を行う分業体制であった。2015年10月に、SHENGBANG METALに出資し、持分法適用関連会社化した。2019年10月に、同社子会社のPLATZ VIETNAM CO., LTD.の全株式をSHENGBANG METALに譲渡し、SHENGBANG METALが上工程から検査までの全工程を手がけることにした。製造ラインの効率化と間接部門の集約によるコスト削減の成果が出ている。
ベトナムからの輸入に使用する通貨は、米ドルである。利益面では、為替と海運市況の変動の影響を受ける。収益構造としては、円高がメリットとなる。海外市場での販売は外-外の取引になる。この分は、決算集計時に為替換算時のレートに影響を受ける。
5. 社会貢献活動
同社は、福祉関連事業に携わっていることもあり、継続的な社会貢献活動を行っている。東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨などの災害時に、寄付金やマットレス及びベッドを寄付した。それ以外にも、日本赤十字社や難民・避難民を支援する国連UNHCR協会へ寄付を行っている。また、同社ベッドの売上の一部を、認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを」日本委員会(JCV)を通じ、開発途上国の子どもへワクチンを届ける活動を支援している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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