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新晃工業 Research Memo(5):リーディングカンパニーとしての情報量や高精度な需要予測が強み


■事業概要

3. 同社の強みと製品別シェア
新晃工業<6458>は、二次側空調機器という、ある意味ニッチな市場を深掘りすることでリーディングカンパニーとなった。そうしたポジションを得ることができた背景には、設備工事という独特の世界で生き抜き培われた同社の強みがある。セントラル空調は、前述したように、建物に求められる仕様が様々でオーダーメイドの設計が求められる。その上、工事現場では柔軟な納期変更、迅速な不具合対応など非常に厳しい対応を迫られる。これらは一朝一夕に構築できるスキルではなく、一定の参入障壁(過去に大手メーカーが撤退した要因)になっている。

通常、建物の空調機器のオーダーメイドは、同じ建物でも1台ごとに求められる仕様・能力・サイズが異なるため、部材の調達や生産量を安定させることが難しい。しかし同社は、建物の計画段階から設計を行うことができるため、情報を早期に獲得し需要予測を可能にしている。また、生産量を安定させるために、更新案件や小口案件も取り込んでいる。さらにメンテナンスや故障などのトラブルにおいて、迅速な対応ができることも同社の強みである。これまで数多く製造・納入したオーダーメイド製品による現場経験の蓄積や、設計、製造、販売、メンテナンスを自社内で行ってきたことが、初動・原因究明から部品製造、メンテナンス・修理までの一連の動きを迅速にしている。工事現場では柔軟な納期変更、迅速なトラブル対応などの厳しい要求をクリアするためのノウハウも同社は有しており、施主・設計事務所からも厚い信頼を寄せられている。

以上から、同社はAHUで40%、FCUで15%、1位を追いかけるヒートポンプAHUでも16%と高いシェアを誇り、施主・設計事務所の同社に対する信頼はますます厚くなっている。この結果、新国立競技場などオリ・パラ関連大型施設に幅広く空調機器を設置したほか、あべのハルカス、スーパーコンピュータ「京」(理化学研究所)、ナゴヤドーム、トヨタ自動車<7203>本社工場、東京スカイツリー、東京国際空港、東京駅、東京都庁から吹上御所、正倉院東宝庫、法隆寺大宝蔵院まで、全国の有名施設にも納入している。海外でも、上海タワー、ザ・ペニンシュラ香港、マンダリンオリエンタル バンコック、マリーナベイサンズ、ラッフルズホテルなど、快適性が求められる国際的な有名ホテルを中心に納入が多くなっている。


今後は新規分野の取り込みや事業の効率化も重要
4. 収益構造と他社比較
同業他社とROE(自己資本当期利益率)の直近2期の数値を比較すると、空調全域を事業領域とし、企業規模が圧倒的に大きいダイキン工業が13.6%(19/3期)、11.7%(20/3期)であるに対し、空調機器専門メーカーの同社が10.1%(19/3期)、13.5%(20/3期)と均衡している。ROEは、ダイキン工業と2次側空調機器メーカーが2桁と総じて高いが、1次側熱源メーカーは1桁と低い。1次側のROEが低いのは当期利益率の低さによるが、レバレッジもやや高くなっている。2次側のROEが高いのは当期利益率の高さによるが、なかでも同社の当期利益率は10.1%(19/3期)、13.5%(20/3期)と安定して10%台と特に高くなっている。逆に言えば、同社の総資産回転率は0.66回転(19/3期)、0.68回転(20/3期)、レバレッジは1.52倍(19/3期)、1.47倍(20/3期)であり、同業他社に比べて低いと言うことができる。ROEをさらに高くするには、自己資本の使い方に工夫が必要と考えられる。自己資本の使い方としては、資本政策以外では、国内市場が成熟していることを考えると、現在進めている海外やヒートポンプAHUなど新規分野への投資による事業領域の拡張が有効と考えられる。加えて、後述する経営戦略のターゲットにもなっているが、既存事業の効率化へ向けた投資も重要と考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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