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きちりHD Research Memo(7):ポートフォリオの多角化による「次世代型ビジネスモデル」を構築し成長を目指す


■今後の見通し

2. 今後の成長戦略
きちりホールディングス<3082>は外食業界を取り巻く市場環境の変化として、「ライフスタイルの多様化」「人口減少による市場規模の縮小」「人材不足」の3点を挙げ、これら課題を克服できるかどうかが成長のカギを握ると見ていた。今回、新型コロナウイルスの影響で、「ライフスタイルの変化」が急激に起こり、外食需要の急減に対して内食需要やデリバリー需要が拡大した。また、人材採用という点においては感染防止策としてWeb面接の導入が急速に進んでいる。同社ではこうした市場環境の変化に対応すべく、前期末より新規事業として、デリバリー事業やD2C事業、総合除菌サービス事業などを新たに立ち上げたほか、ASP/SaaS事業の拡大に注力し、事業ポートフォリオを多角化することによって、新型コロナウイルス感染症の影響を受けない「次世代型ビジネスモデル」を構築し、成長を目指していく方針を打ち出している。

(1) 既存外食店舗運営事業
既存外食店舗運営事業については逆風が続くなかで、各店舗で完全予防対策を実施し、極力非接触でのサービス提供に取り組むことで、利用客に安心感を持って来店してもらえるようにしていく。また、5月からは店舗売上の落ち込みをカバーすべく、約50店舗でテイクアウト商品の販売やデリバリーサービスを開始しており、既に店舗売上の2割を占めるまでになってきている。テイクアウト商品やデリバリー商品については1店舗当たり3~8業態のメニューをそろえている。

(2) デリバリー事業(ゴーストレストラン)
コロナ禍で拡大するデリバリー需要を取り込むべく、デリバリー事業の新会社、(株)レストランエックスを新たに設立した。東京・初台にセントラルキッチンを設け、独自開発したメニューをデリバリーやテイクアウト商品として販売する事業となる。開発力を生かして様々なメニューをラインアップしており、売上げも順調に伸びているようだ。同社では今後、セントラルキッチンを複数拠点に展開していくことも検討しており、外食事業に次ぐ柱に育成していく考えだ。なお、デリバリー事業における配送業務については専門事業者に外注しているが、それでも一定の収益は確保できている。

(3) D2C事業
レストランエックスではD2C事業も展開していく。2020年5月に「CHAVATY」オンラインサイトを開設し、EC販売を開始したが、開設3ヶ月で登録会員数が5万人を突破し、7月には利益が店舗営業を上回るほどの勢いとなっている。製造は初台のセントラルキッチンで行っているため、量産効果も効きやすい。今後もEC販売が可能な商品の開発に取り組み、ECでの収益拡大を目指していく。

(4) ASP/SaaS事業
オープンクラウドで展開するASP/SaaS事業では、録画型Web面接プラットフォーム「Apply Now」に加えて、新たに電子雇用契約「Apply Now Sign」の提供を開始している。「Apply Now」と組み合わせることで、採用面接から雇用契約締結までワンストップで処理が可能となり、業務の効率化が実現する。また、電子雇用契約にすることで、収入印紙が不要となり、契約書の保存コストも削減できるなどのメリットがあり、今後の導入拡大が期待される。

さらに、2020年5月に大手人材広告企業のマイナビと資本業務提携を締結したことで、事業の一段の拡大が見込まれる。マイナビが「Apply Now」の販売代理店となって2020年5月より全国で拡販を開始したほか、同年11月よりマイナビのアルバイト情報サイト「マイナビバイト」に「Apply Now」の機能を実装し、直連携する予定となっているためだ。求職者は「マイナビバイト」の各求人ページに表示される「Apply Now」のボタンをクリックすることで、採用面接の動画を録画し、求人先の企業に送信できることになる。採用募集から面接、採用の可否を判定するまでの時間が大幅に短縮されることになるため、導入企業や求職者それぞれにとってメリットがあり、契約件数の拡大ペースも加速していくことが予想される。

なお、「Apply Now」の利用料金は導入店舗数や利用オプション等によって異なるが、1社当たりで月額10~50万円と比較的リーズナブルな価格設定となっている。収益化の時期については、機能の拡充を今後も進めていくため未定としているが、成長ポテンシャルは大きいことから比較的早期に連結業績に貢献してくるものと予想される。なお、オープンクラウドの従業員数は10名となっており、大半がエンジニアとなっている。

(5) 総合除菌サービス事業
2020年4月に設立したサニタイズで、新型コロナウイルス感染症対策として除菌清掃サービス(臨時・定期)だけでなく、抗菌予防サービスや補助金申請サポート、相談窓口業務などをパートナー企業と連携してトータルで提供しており、売上高はサービス開始以降、毎月増加しており、既に利益化を実現している。除菌サービスについては月10件以上の受注規模になってきており、引き合いも多いことから今後は首都圏、関西エリア以外の地域へサービスエリアを拡大していくことも検討している。

(6) PFS事業
PFS事業では、今後も独創的な技術やアイデアを持つITベンチャーとのCVCや業務提携を進めていくことで、自社店舗の生産性向上を図るだけでなく、PFSのユーザー企業にも拡販し、収益基盤の拡大を図っていく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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