橋本総業HD Research Memo(4):企業理念は「快適な暮らしを提供する」こと
1. 企業理念とビジョン
橋本総業ホールディングス<7570>は「環境設備商品の流通とサービスを通じて、快適な暮らしを提供する」という企業理念のもと、すべてのステークホルダーの期待に応え、社会に貢献することを目指している。ビジョンは、「3つのベスト」を追求することで「企業価値を上げて、7つのステークホルダーに貢献する」ことである。なお「3つのベスト」とは、「設備のベストコーディネーター」「流通としてベストパートナー」「会社としてベストカンパニー」のことである。
商品を直接手にする施主や工事店には「設備のベストコーディネーター」として、会員専用Webサイトやネットカタログ「e-設備NET/PRO」を通じて、最適に組み合わされた商品を提案している。また、仕入先や販売先とは「流通としてベストパートナー」として、購買代理機能や販売代理機能を発揮することで共存共栄を図っている。さらに、株主に対しては1株当たり利益を増加させることで株価や配当を充実させ、社員に対しては各人の働きがいやキャリアアップなど職場環境を拡充し、社会に対しては環境課題などに取り組むことで社会に役立つ「会社としてベストカンパニー」を目指している。こうした企業理念やビジョンを実現するための中期的な取り組みが、「3つのフルの追求」「みらい活動」「進化活動」である。これらは、管材1次卸の中でも同社だけが行っている独自性の強い取り組みと言って良く、取引先との強い結び付きが同社の差別化の源泉ともなっている。
「フルカバー」「フルライン」「フル機能」を追求することで共に栄える
2. 「3つのフル」
中期の取り組みのうち、「3つのフル」は「フルカバー」「フルライン」「フル機能」のことで、どこでも、何でも、どんなことでも対応するという同社の意思表示である。そして、「3つのフル」を追求することで成長し、ステークホルダーと共に栄えようという考えである。「フルカバー」は、県別営業体制でそれぞれの建築需要に対応することで、日本全国どこでも対応可能になることを目指している。「フルライン」は、設備関連資材であれば何でもワンストップで対応することができることを言う。管材以外の建材や電材、工具など新規分野にも積極的に対応する方針で、ネットカタログに追加していく考えである。「フル機能」は、どんなことにでも対応するということで、「対応、価格、在庫、配送、販促、研修、情報」の基本7機能、「事前の引合、受注、照会、当日の納入、施工、加工、事後のアフターメンテナンス、点検、取替」の工程9機能、「物流、施工、情報、システム、業務、サポート、教育、人材、金融、支援」のソリューション10機能を継続的に充実させる考えである。
業界最大かつ最良のネットワークの構築を推進
3. 「みらい活動」
同社のバリューチェーン作りを「みらい活動」と言い、業界最大かつ最良のネットワークの構築を進めている。「みらい活動」では、販売店、仕入先、工事店の各会員と同社が“4位1体”となって、県別(支店別)に「みらい会」を展開しており、「みらい会」の会員相互の商売の場である「みらい市」を開催することで、会員に対し、いつでも、どこでも、何でもサービスする「みらいサービス」を提供している。こうした活動を行っている企業は同社のほかにほとんどなく、“4位1体”の強いつながりは同社の強みの源泉となっている。
(1) 「みらい会」
「みらい会」は、研修やイベントを通じて会員の要望に応える会である。全国22地区それぞれにあり、販売店436社(970事業所)、仕入先メーカー155社(704事業所)、建設みらい会74社、金融会員27社、そして同社の各支店で構成されている。研修会は年4回以上開催され、参加者は互いに情報を持ち寄り、商材や経営などのノウハウの取得に取り組んでいる。また、川上企業から川下企業への情報伝達だけでなく、川下企業から川上企業へのフィードバックも多く、仕入先にとっても非常に有用な会と言える。
(2) 「みらい市」
「みらい市」は、業界最大級の展示会イベントで、メーカーの展示だけでなく、「みらい会」会員相互の販促の場にもなっている。2019年度の「みらい市」は、上期に北海道、中部、東北、東京で開催された。下期には九州と中四国で開催された。最大規模となった「東京みらい市」の2019年度の実績は、メーカー400社以上が出展、来場者数は15,000人を超える大規模なイベントとなった。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、12月17日に130周年感謝会を兼ねて合同総会を行う予定である。ほかに、メーカーのショールームを使った「ショールームみらい市」やネット上で「みらい市」を体験できる「Webみらい市」も開催している。
(3) 「みらいサービス」
「みらいサービス」は、販促、支援、研修、ITといった商売や経営に役立つサービスとして、既に広く取引先に浸透している。販促ツールとしては、社名入りの総合管材百科(カタログ)である「みらい百科」、市況や経済、商品の最新情報を毎月届ける「月刊みらい」などがある。支援ツールは、図面や3Dプレゼンシート作成をサポートする「設計支援」、リフォーム受注に向けた設備機器の省エネ診断ツール「省エネ診断」などがある。研修は毎月本社などで開催する経営幹部セミナー「橋本学校」、各地で開催するセミナーや講演会、商品研修などである。ITサービスとしては、OPSのほか見積もり・事務作業を富士ゼロックス(株)製DocuWorksで代行している。そのほか、重要テーマ別分科会研修会、販売店とメーカーをつなぐ製販懇親会、エリア内配送の充実やパイプ・バルブの組立・加工・システム配管の充実といったサービスも行っている。
「しくみ作り、人作り、しかけ作り」を通じて進化する
4. 「進化活動」
「進化活動」は、「しくみ作り、人作り、しかけ作り」を通じて、同社のみならず取引先の生産性をも向上させようという取り組みである。「しくみ作り」では、商流の一貫化(サプライチェーン)、物流の共同化(ワンストップ化)、情報流の共有化(ダイレクト化)に取り組んでいる。なかでも「みらいクラウド」は、情報流の高度化と流通全体の効率化を狙った「しくみ作り」となっている。「人作り」では、仕事の基本、商品知識、業界資格の習得などによりプロ人材の育成に取り組んでいる。「みらいアカデミー」では座学(橋本学校)とネットを併用した研修が行われ、大規模研修施設のある東雲研修センターでの施工研修も可能である。これらは、取引先各社と同社の人間関係の深化や、社会問題化しつつある後継者難の解消につながっていると考えられる。「しかけ作り」では、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底や情報・行動・成果の見える化、チームQC活動による会社の質向上を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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