アストマックス Research Memo(3):2020年3月期決算には、ASTAMの非連結化が大きく影響
1. 2020年3月期の業績概要
当会計年度(2019年4月−2020年3月末)におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調で推移し、2019年10月には延期されていた消費増税がスタートした。世界に目を転じると、各国・地域間の通商問題の動向、中国及び東アジア諸国の政治・経済の先行き、英国のEU離脱問題、中東の地政学リスクの高まり、及びそれらに伴う金融資本市場の変動など、世界経済の先行きが不透明な状況ではあったものの、世界的に緩和基調の金融政策が継続されるなか、企業業績の更なる伸長が期待されて米NYダウは最高値を更新した。
しかしながら、年が明け新型コロナウイルス感染症が世界中に瞬く間に伝播すると、外出規制・都市封鎖等の措置が取られ、世界中の経済社会活動が大幅に抑制されることとなり、世界の株価も暴落、国内でも2019年12月末に前期末比10%以上上昇していた日経平均株価が、当年度末には同10%以上下落し18,917円となった。今後の内外経済の先行きについては極めて不透明であり、当面は新型コロナウイルス感染症が市民生活及び経済活動に与える影響は大きいと判断される。
こうしたなか、セグメントごとの経営環境を見ると、原油価格は、中東情勢の不透明さを要因として前期から引き続き上昇していたものの、米中貿易戦争による景気減退懸念から下落に転じた。2019年9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃されたことを受け、ブレント原油は上場以来1日の最大の上げ幅を記録したが、その後は急反落して10月には再び安値圏での取引となった。その後、OPECの減産拡大合意などを理由に堅調に推移していたが、当第4四半期に入ると新型コロナウイルス感染症拡大の影響で需要が急減したうえに、サウジアラビアが増産を表明したため、2020年3月には大幅に下落した。安全資産と目された金も大幅に下落したものの、その後は急激に値を戻し、高値圏での乱高下となった。
再生可能エネルギーを取り巻く環境については、改正FIT(固定価格買取制度)法に基づき、2019年度の太陽光発電のFIT価格は14円(税抜)、2020年度は12円(税抜)となり、入札制度の対象も出力500kW以上の設備から250kW以上の設備にまで拡大された。また、未稼働案件に対して運転開始期限設定を義務化する新たな仕組みも定められた。さらに既存案件については、同社グループの保有する太陽光発電設備も稼働する九州電力<9508>管轄内において、電力需給バランス維持、電力の安定供給の必要性により、出力抑制が発令された。今後は、ほかの電力管轄内においても発令される可能性が想定される。
また、FIT価格は制度スタート時の40円(税抜)から大幅に低下、既述のとおりFIT制度自体についても見直しが行われているが、「パリ協定」や「SDGs」「RE100(事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブ)」など、世界的に推進されている脱炭素社会を目指す動きが国内でもようやく広がりを見せてきている。新型コロナウイルス感染症の影響で世界経済に不透明感が高まっているが、SDGs等を重視する流れは一層進むものと考えられ、再生可能エネルギーの重要性も増すことが見込まれる。
さらに電力市場においては、2016年4月の電力小売全面自由化以降、小売電力事業者の事業者数及び切替件数は、ともに順調に増加している。一方で電力価格については、天候不順等による価格変動リスクが高まっており、小売電力事業者や発電事業者の経営においても、電力市場価格の「リスク管理」の重要性が認識されており、電力取引のヘッジニーズが高まってきている。
以上のような市場環境等のもと、同社グループの当年度の営業収益は11,932百万円(前期比7.3%増)、営業損失は166百万円(前期は160百万円の利益)、経常損失は185百万円(同130百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は243百万円(同45.1%増)となった。
営業収益の増加は、アセット・マネジメント事業でのASTAM非連結化に伴う減収を、再生可能エネルギー関連事業での売却目的で保有する太陽光発電設備の譲渡や、電力取引関連事業での盛夏・冬季取引活発化に伴う電力取引増加などの増収が上回ったためである。また、営業損失や経常損失の要因は、再生可能エネルギー関連事業や電力取引関連事業での増益を、ASTAM非連結化に伴う減益及びASTAM株式の追加譲渡による受託業務の減少などが上回ったことによる。
ただ、ASTAMの株式追加譲渡で944百万円、また日本取引所グループによるTOCOM株式に対するTOBに応じて68百万円の特別利益が発生した。さらに、ASTAMが持分法適用関連会社となったことで非支配株主持分利益が増加した。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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