1. クラウドサービス市場の動向
企業の情報システムの歴史を紐解くと、1960年代前半のメインフレームの普及から始まり、1980年代にはオフコン/ミニコン時代となり、1990年代後半からはパソコンの普及に伴って分散処理型のクライアント/サーバーシステムへと形態が変遷してきたが、2000年代後半からは通信ネットワークの高速化やインターネット技術の進展を背景に、クラウド・コンピューティング市場が立ち上がり、現在は企業がコンピュータを「所有」する時代から「利用」する時代への過渡期となっている。
クラウド・コンピューティングとは、SalesforceやAWSなどのクラウドサービスプラットフォームからインターネット経由でコンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションをはじめとした、様々な IT リソースをオンデマンドで利用することができるサービスを指す。従来、企業は自らで情報システムを構築、運用・管理しなければならなかったが、クラウドを利用することでこうした手間や時間が省け、業務の効率化や投資コストを抑えることが可能となる。また、情報システムの構築にかかる期間も短縮できるため、企業側の導入メリットは大きい。特に、ここ数年は通信ネットワークの高速化やクラウドサービス事業者のセキュリティ対策が強化されてきたこと、サービスの拡充が進んでいることもあって、規模を問わず既存システムからクラウドへ移行する企業が増加傾向にある。
調査会社によれば、2019年の国内パブリック・クラウドサービスの市場規模は、前年比22.9%増の8,778億円、2024年までの5年間の年平均成長率は20%弱となり、2024年の市場規模で2兆円強と2019年比で約2.4倍に拡大すると予測されている。自社でコンピュータシステムを保有している企業あるいは官公庁も多くあり、今後もこうしたユーザーがパブリック・クラウドサービスに移行することが高成長の背景にある。
なお、パブリック・クラウドサービスはサービスの形態により、SaaS※1、PaaS※2、IaaS※3等に大きく分類される。このうち、企業が情報システムを構築する場合はPaaS、IaaSを利用することになる。PaaSではSalesforce、IaaSではAWSが世界シェアトップ企業となっており、ここ数年で売上高も急成長している。年平均成長率で見るとSalesforceで30%、AWSで42%となっており、Microsoft(マイクロソフト
※1 SaaS(Software as a Service)パッケージ製品として提供されていたソフトウェアを、インターネット経由でサービスとして提供する形態。
※2 PaaS(Platform as a Service)アプリケーションソフトを稼働させるためのハードウェアやOSなどのプラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供する形態。
※3 IaaS(Infrastructure as a Service)情報システムの稼働に必要な仮想サーバーをはじめとした機材やネットワークなどのインフラを、インターネット上のサービスとして提供する形態。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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