アルプス技研 Research Memo(6):農業関連分野において、人材派遣会社で全国初となる「特定技能1号」を取得
1. 採用実績
アルプス技研<4641>成長のドライバーとなる人材の採用については、2019年新卒採用者が314名(前期は288名)、外国人材の採用が約80名※であった一方、質を重視したキャリア採用は150名弱(前期は150名)と若干前年を下回ったが、総じて順調と言える。また、2020年新卒採用者については250名程度を予定。目標(280名)には未達となったものの、高い水準を確保できており、未達となった部分についても通年採用で対応していく方針である。一般的に採用難と言われているなかで同社にとって追い風なのは、求職者の意識がメーカー志向一辺倒から主体的なキャリア形成を重視する方向へと徐々に変化してきたことである。同社では、積極的な広告宣伝活動による知名度向上や多様な採用活動を通じた魅力発信などを通じて、そのような求職者のニーズを捉えてきたことに手応えを感じているようだ。さらには、子会社のアルプスビジネスサービスやパナR&Dについても、グループ連携強化により採用面でも大きな成果を残すことができた。
※そのうち、グローバルエンジニアが約50名、新設在留資格によるアグリ(就農)人材が約30名と見られる。
2. 継続的な契約単価の向上を実現
前述のとおり、契約単価についても毎年着実な向上を図っており、前期は初めて全社平均で4,000円を突破することができた。その背景には、各々のキャリアプランに基づく能力開発プログラムや計画的なローテーションが存在する。すなわち、社内のキャリアサポーターによるキャリア開発面談を通じて、本人の希望や適性を考慮したキャリアパスをデザインし、キャリアアップに必要となる技術や知識、資格などを明確にしていく。そのうえで、専門部署による様々な技術研修をはじめ、配属先拠点の先輩エンジニアが講師となる勉強会(年間約3万人が参加)などを通じて能力開発を実現していく仕組みとなっている。さらにポイントとなるのは、計画的なローテーション(職場シフト)により、能力開発を契約単価(市場評価)の向上につなげているところである。弊社アナリストは、今後も業界最高水準である5,000円程度までは少なくても増やせる余地があると見ている。
3. 新規事業(農業・介護関連分野)の進捗
2018年4月の新会社設立(アグリ&ケア)により参入した新規事業分野(農業・介護関連分野)については、農業関連分野が先に立ち上がり、2019年9月に人材派遣会社で全国初の外国人新在留資格「特定技能1号」を取得すると、取引実績も全国規模で着実に積み上がってきた。ベトナム、ミャンマー、中国からのアグリテック(農業先端技術)及びアグリ(就農)人材は約100名に増えてきたが、今後も現地で教育した人材を計画的に採用していくとともに、国内での派遣先開拓にも注力していく方針である。
一方、介護関連事業についても、既にミャンマーで介護人材の育成を開始しており、日本の介護関係の法制整備に合わせて事業化を進めていく方針である。ミャンマーのヤンゴン支店では介護関係の人材を教育し、日本へ送り出すスキームの構築に向けて準備中である。
4. SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み
同社グループは、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」に賛同し、経営理念「Heart to Heart」の下、技術開発をはじめとしたアウトソーシングサービス事業等を通じ、SDGsの達成に貢献することを目指している。2019年8月に同社サイト上にSDGs推進に関するページを新設すると、SDGs推進企業として外務省のホームページにも掲載された。
同社は大きなテーマとして、「社会変化への対応」「社会的課題の解決」「環境・資源対策」「健康経営」「人材育成」「倫理観・コンプライアンス」の6つを取り上げているが、特に「社会的課題の解決」に向けては、これまで同様高度技術サービスの提供を通じた日本のものづくりへの貢献に加え、前述のとおり、農業や介護関連分野における人材不足という新たな社会的課題に対しても、アグリ事業推進、介護人材育成といった事業活動を通じて貢献していく考えであり、それによって自社成長(企業価値向上)にも結び付ける戦略である。またダイバーシティ(大勢の外国人社員が活き活きと活躍)やバリアフリー(2020年パラリンピックに向け、バリアフリープロジェクトに協賛)などにも取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>
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