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サン電子 Research Memo(10):世界的に拡大するDI領域でリーディングポジション。M2Mなど成長分野の収益


■成長戦略

サン電子<6736>の中期的な成長戦略は、情報通信関連分野のグローバル展開によって、成長を加速することである。特に、犯罪捜査におけるデジタル・インテリジェンス分野のリーディングカンパニーとして世界市場の開拓を進めるとともに、新たな成長分野であるM2M、AR関連、O2Oソリューション等の強化を図るため、M&Aを含めて先進的な技術への積極投資を行っていく方針である。Cellebriteについては、買収当初から担当していた前代表の山口氏を担当取締役として専念させることで、主力事業のモバイルデータソリューション事業の成長加速に注力する。新規IT関連は新代表の木村氏が直接担当し、外部目線の事業評価を行い、早期の事業化を図っている。

1. モバイルデータソリューション
成長性の高いDI向けに経営資源を集中することにより、世界的な需要の拡大を自らの成長に取り込む戦略である。特に、独自技術を生かしたデータ抽出の対象機種数を拡大するとともに、インターポールとのパートナー契約締結を始めとしたトレーニングプログラムの充実や、新製品・新サービスの開発(UFEDの優位性が生かされる機能の強化)などにより事業拡大を目指す。また、中長期的にはポテンシャルの大きいデータ分析(AIや機械学習の活用による犯罪捜査の効率化等)やデータ管理の領域へ拡充を図り、持続的な成長を実現する。特に、今回の増資資金をM&Aに活かすことで、DI領域における総合的なプラットフォーマーとして必要となる事業や技術を獲得し、リーディングカンパニーとして確固たるポジションを確立していく戦略である。

2. M2M
M2Mについては、需要拡大に対応するための製品ラインナップの強化を図るとともに、BacsoftのIoTプラットフォームとの連携によるトータルソリューション化により差別化を実現する戦略である。特に、「おくだけセンサー」の拡販による成長加速に注力していく。まだIoT市場の裾野が十分には広がっておらず、汎用性や手軽さを強みとする「おくだけセンサー」の本格的な導入には至っていないが、今後の切り札としての期待は大きい。また、デバイスマネジメントサービス(ルータや後位端末死活監視、電源制御サービス等)などを通じてRoosterの競争力を高め、大型案件の受注向上にも取り組む。一方、進捗が遅れている海外においては、IoTソリューションの実証実験を本格フェーズへと進めるとともに、世界展開に向けて販売チャネル及びマーケティング強化を図る方針である。

3. AR関連
「AceReal」については、産業用スマートグラス及び業務支援アプリケーションによる強みを生かし、産業界の改善に特化した製品を開発するとともに、実証実験を重ねていくことにより、B2B向けの共通プラットフォームとしてデファクトスタンダードの確立を目指す戦略である。特に、土木・建設、保守・点検、製造・物流、インフラ(鉄道、航空、発電)、医療、警備・セキュリティ分野をターゲットにしているようだ。

4. O2Oソリューション
引き続き、テイクアウト予約決済アプリ「iToGoプラットフォーム」による差別化を図る。有効性については十分に確認できたため、アプリ機能の更なる改善や利用率のアップに取り組むとともに、中堅規模のチェーン店などをターゲットとし、まずは規模の経済を狙う戦略と考えられる。また、顧客購買データの活用(顧客嗜好を反映したメニュー開発など)も視野に入れるほか、他事業部とのコラボ企画も進行中のようだ。

弊社でも、今後の成長ドライバーとして、潜在需要の大きさや業績へのインパクトが期待できる1)モバイルデータソリューション、2)M2M、3)AR関連の3つの事業が軸になるとみている。モバイルデータソリューションは、既にリーディングカンパニーとして世界開拓を進めているが、世界規模で拡大している需要(安全、安心に対する社会的な要請)にどう対応していくのか、その戦略に注目している。特に、今回の第三者割当増資が、将来に向けて大きな転換点になる可能性が高く、ソリューションビジネスの強化や予定しているM&Aをどのように成果に結びつけていくのかを継続的にフォローする必要があろう。一方、M2Mについては、汎用性や手軽さに優れた「おくだけセンサー」による差別化や、同社ならではのIoTソリューションの提供を通じて、これからの裾野拡大をいかに取り込んでいくのかが成功のカギを握るとみている。また、新たな市場であるAR関連については、どのような戦略(ポジショニング)により先行者利益の享受や事業拡大を図っていくのかが重要なテーマと考えられるが、共通プラットフォームの確立により産業分野でのデファクトスタンダードを目指す戦略は、同社の強みが生かせる分野であるとともに、スケールメリットの享受や参入障壁を構築するうえでも合理的な戦略であると評価できる。それぞれが順調に立ち上がってくれば、事業間連携の促進(ソリューションと顧客基盤を含む事業資産の相互利用など)による新たな収益チャンスの獲得にも期待が持てるだろう。成長加速に向けて、M2MやAR関連がどのようなペースで業績貢献してくるのか、今後の動向に注目していきたい。

一方、リスク要因は、市場環境に不透明感のあるエンターテインメント関連の動向である。構造的な問題(遊技人口の減少、低貸玉化による影響等)に加えて、2018年2月に施行された新たな規制(出玉制限など)の影響が懸念材料として挙げられる。いずれにしてもパチンコホールの業績や投資意欲の状況次第の展開と言えるだろう。業界環境の悪化に伴うリスクを最小限に抑えながら、安定した収益を稼ぐ事業構造変革の進捗や市場変化への対応による新たな事業機会の創出にも注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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