デリカフHD Research Memo(8):北海道、九州等の地方エリアの強化と冷凍野菜事業への進出で一段の成長へ
2. 成長戦略
デリカフーズホールディングス<3392>はここ数年、東名阪の3大都市圏でFSセンター開設、並びに物流網の内製化に取り組み、売上成長を続けてきた。今後の展開として、新たに地方エリアにおける売上拡大や冷凍野菜事業への進出などにも取り組んでいく予定で、更なる成長を目指している。
(1) デリカフーズ北海道をグループ化
2019年11月に同社の連結子会社デリカフーズは、北海道の委託販売先であった大藤大久保商店の全株式を取得し、連結子会社化した。社名についてはデリカフーズ北海道に改称している。今後、北海道エリアでの営業強化並びに契約農家の開拓に注力していく方針となっている。契約農家の開拓については従来も出張ベースで行ってきたが、子会社化することで人員を常駐させることが可能となり、仕入ネットワークの拡大につながるものと期待される。
デリカフーズ北海道の2019年3月期の売上高は656百万円、営業利益は11百万円となっている。売上高の約半分は同社の委託販売分で、残りが独自の仕入販売となる。このため連結業績への影響額は売上高で年間約3億円程度の増加要因となる。ただ、同社では営業体制を強化することで将来的に20億円程度まで北海道エリアで売上を伸ばすことが可能と見ている。また、今回のM&Aをきっかけに業務用野菜卸のM&A案件も入るようになってきており、財務面など条件に適う企業であれば前向きに検討していくとしている。
(2) 九州FSセンターを2020年4月より稼働
2020年4月には現在、建設中の九州FSセンターが稼働する予定となっている。従来、協力企業に委託していたカット野菜製造を内製化するほか、加熱野菜の製造ラインや人手不足対策として省人化、自動化ラインも導入した最新鋭工場となる。同センターで福岡県の2大都市(福岡市、北九州市)をカバーし、また、九州地区の産地との連携拡大も進めていく予定だ。総投資額は約23億円、年間売上能力は約45億円となり、現在の九州エリアの売上規模(15~18億円)から2倍以上の規模に拡大することになる。同センターの稼働によって既存顧客の九州エリアでの取引が拡大するほか、新規顧客の開拓も見込まれる。また、同時期にエフエスロジスティクスの九州事業所も開設する予定となっている。九州エリアの物流内製化と同時にJAグループとの産地引取便をスタートさせ、仕入コストの抑制につなげていく考えだ。
(3) エア・ウォーターとの業務提携について
同社は2019年5月にエア・ウォーターとの業務提携を発表した。両社の経営資源を有効活用することにより、農産物の生産・加工・販売等における事業強化・拡大、並びに共同研究に向けた取り組みを進めていくことになる。エア・ウォーターは農業・食品事業を重点事業領域の1つと位置付けており、北海道を中心に農産事業を展開し、青果物の卸売や冷凍野菜で高いシェアを有している。顧客は全国の卸問屋やBtoCの流通企業が主となるため、外食企業を主要顧客とする同社と直接競合しない。今回の提携により下記4点の協業を進めていく予定となっている。
a) 国内外における両社の契約農家及び調達ルートを活用した原料調達の協業(調達力の強化)
b) 両社の物流ネットワーク及び拠点・施設を活用したインフラ事業の協業(物流コストの効率化)
c) カット野菜、加熱野菜、冷凍野菜の相互販売による外食・中食産業への販売拡大(販売機会の増大)
d) 青果物の価値創造並びに加工・鮮度保持技術等に係る共同研究及び共同開発
同社にとっては、従来取扱商品になかった冷凍野菜が加わることで、既存顧客へすべての形態の野菜を届けることが可能となるほか新規顧客の開拓機会も増え、売上拡大に寄与するものと予想される。また、エア・ウォーターを通じて流通企業の総菜売り場向けに同社のカット野菜の販売が伸びる可能性もある。既に原料調達やカット野菜・冷凍野菜等の相互販売は徐々にスタートしているようで、将来的には冷凍野菜の製造についても協業して進めていくことを視野に入れている。
(4) 市場シェア拡大による成長ポテンシャルは大きい
業務用青果物の市場規模は年間2兆円程度と見られており、業界トップの同社でも市場シェアは2%弱にすぎない。ただ、安心・安全を担保するための国際標準規格での品質管理基準取得やBCP対策、自然災害リスクに対応した大型貯蔵センターの開設、外食企業の人手不足課題に対応するための真空加熱野菜の量産化など、様々な取り組みを業界に先駆けて進めてきたことで顧客からの評価は年々高まっており、2番手以下の企業との差も開いてきていると言う。今後は大都市圏だけでなく、北海道、九州など地方エリアでの拡販にも注力するほか、冷凍野菜市場への参入によって市場シェアはさらに拡大していくものと予想される。同社では長期目標として今後10年間で売上高を現状の約2倍となる800億円をターゲットに積極展開していく方針だ。
なお、2021年3月期からスタートする次期中期経営計画では、社会環境への貢献などESGやSDGsへの取り組みについても意識して策定していく意向となっている。健康増進に向けた野菜メニューの提案や地球温暖化による自然災害リスク上昇への対応、AIを活用した収穫量予測システムの開発、非破壊検査による青果物の自動選別機の導入など様々な取り組みを進めており、投資家にもアピールしていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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