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飯野海運 Research Memo(4):東京都心部の一等地でオフィスビルを賃貸


■飯野海運<9119>の事業概要と特徴・強み

3. 不動産業
不動産業はオフィスビル賃貸・管理・メンテナンスを行っている。本社ビルである飯野ビルディング(イイノホール&カンファレンスセンター含む)など、東京都心部の一等地に賃貸オフィスビルを複数所有していることが特徴だ。また、レンタルフォトスタジオ事業(広尾スタジオ、南青山スタジオ)など関連事業も展開している。

1983年竣工の東京富士見ビル(東京都千代田区)、1988年竣工の飯野竹早ビル(東京都文京区)、2006年竣工の汐留芝離宮ビルディング(東京都港区)のほか、2009年には飯野ビルディング(東京都千代田区)の建て替え工事に着手、2011年10月には飯野ビルディング1期工事が完了して開業、2014年11月には飯野ビルディング2期工事が完了してグランドオープンした。そして2017年12月にはNS虎ノ門ビル(東京都港区、2016年竣工)の一部持分を取得している。

なお前中期経営計画「STEP FORWARD 2020」で掲げた不動産業のターゲットエリア戦略及び所有ビルのポートフォリオ見直しに伴い、2017年3月に笹塚センタービル(1995年竣工)を売却した。また新橋田村町地区市街地再開発事業(東京都港区、2018年4月建物着工、2021年3月建物竣工予定)への参画のため、2018年3月期に東京桜田ビル(東京都港区、1967年竣工)を解体した。

この結果、2019年3月期末時点の所有賃貸ビルは5棟(飯野ビルディング、東京富士見ビル、汐留芝離宮ビルディング、NS虎ノ門ビル、飯野竹早ビル)となっている。


高度な環境性能を追求した飯野ビルディング
4. 飯野ビルディング
2011年開業(2014年グランドオープン)した収益柱の飯野ビルディングは、「100年先にも愛されるビル」をコンセプトとして、ホール&カンファレンス機能も備えている。通常の外壁(インナースキン)の外側に、もう1つの外壁(アウタースキン)を設けて、断熱空気層を作ることで熱負荷を軽減する「ダブルスキン外装」を採用するなど、高度な環境性能を追求したビルである。

そしてLEED-CI(米国グルーンビルディング協会による環境対応評価システム)の最高位であるプラチナ認証を日本で初めて取得した。また2015年には、生物多様性保全に取り組むオフィスビルや商業施設を評価する「いきもの共生事業所認証」(ABINC認証)を取得し、2016年にはABINC認証事業所のうち特にABINCの普及啓発や生物多様性の主流化への貢献度の高い施設として「第1回ABINC特別賞」を受賞した。

2016年には、東京都環境確保条例における2015年度「優良特定地球温暖化対策事業所(トップレベル事業所)」に認定された。2018年2月には、東京消防庁による優良防火対象物認定表示制度に基づく「優良防火対象物認定証」(優マーク)を取得した。2018年3月には東京都環境局の在来種植栽登録制度「江戸のみどり登録緑地」の優良緑地として登録された。2018年10月には、飯野ビルディングの事務所基準階部分(7階~27階)がBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)で最高ランク5つ星を取得した。

さらに2019年3月には、(株)日本政策投資銀行のDBJ Green Building認証で、飯野ビルディングが最高ランク5つ星、汐留芝離宮ビルディングが4つ星を継続取得した。


市況変動の影響を価格変更などで対策
5. 収益特性・リスク要因と対策
収益特性・リスク要因として、海運業では特に外航海運業が海運市況、燃料油価格、為替等の影響を受け、主力のケミカルタンカーにおけるスポット貨物も市況変動の影響が避けられない。

こうしたリスク要因への対策として、ケミカルタンカーでは、輸送数量の約7割を占める1年程度の複数のCOA(数量輸送契約)と約3割を占めるスポット貨物を組み合わせることで、利益の最大化を図っている。なおCOAでは一般的に、燃料油価格変動に伴う価格調整条項(BAF)を付けているが、契約によっては燃料油価格が小幅に上昇した場合には、燃料油価格上昇分の価格転嫁されず、採算に影響を与える場合がある。

またオイルタンカーやガスキャリアは中長期の定期用船契約が中心である。オイルタンカーやガスキャリアでは長期安定収益源の積み上げを推進しており、2018年12月には三井物産<8031>から、スノービットLNGプロジェクトでLNG船保有のための特別目的会社Northern LNG Transport Co., I Ltd. 及びII Ltd. (以下、NLTC1及びNLTC2)の株式を追加取得し持分を増やした。また内航・近海海運業も含めて、コスト増加に対応した契約有利更改を推進し、採算向上を目指している。

なお2020年1月から、国際海事機関(IMO)の船舶燃料硫黄分規制(SOx規制)強化が適用開始となる。船舶燃料に含まれる硫黄分濃度を、現行の「3.5%以下」から「0.5%以下」とする国際規制の強化である。対応選択肢としては、スクラバー(脱硫装置)の設置、または低硫黄燃料油(規制適合燃料油)の使用がある。

この規制強化のマイナス影響としては、適合油対応仕様に変更するための船用品・修繕費の増加や、従来の舶用燃料油と規制適合燃料油との価格差などがコストアップ要因となる。同社の対応としては規制適合燃料油の使用が中心になるが、コストアップ分の負担を荷主に求め、COA(数量輸送契約)等の契約に反映すべく交渉する方針としている。一方のプラス影響としては、規制適合燃料油の輸送需要の発生や、規制強化に対応できない船が淘汰されることによる需給バランス改善などで、プロダクトタンカーやケミカルタンカーの市況上昇につながる効果が期待される。

不動産業は不動産市況、空室率、賃料などの影響を受けやすいが、同社保有の賃貸ビルはいずれも東京都心部の一等地に立地している。東京都心部(千代田・中央・港・新宿・渋谷の5区)においてはオフィスビル賃貸市況が堅調に推移している。

収益柱の飯野ビルディングは立地面に加えて、高度な環境性能が強みである。引き続き安定収益基盤として推移するだろう。さらにターゲットエリア戦略に基づいて、保有資産の入れ替えや再開発事業への参画も推進している。新橋田村町地区市街地再開発事業(東京都港区)は2021年春に建物竣工予定である。

海運業、不動産業とも市況変動の影響を受けるが、こうした市況変動リスクに対して、いずれの事業においても磐石な事業基盤構築に向けて安定収益源の積み上げを推進し、海運業と不動産業を両輪とする永続的な安定成長を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)



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