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ワコム Research Memo(8):スマートフォンとタブレット・ノートPC向けで順調な出荷継続が期待


■今後の見通し

3. テクノロジーソリューション事業の見通し
テクノロジーソリューション事業の2020年3月期は、売上高44,350百万円(前期比0.7%増)、セグメント利益5,520百万円(同17.1%減)と、微増収・減益を予想している。

ワコム<6727>はテクノロジーソリューション事業が持つ、同社自身の努力やコントロールが及ばない要因によって収益が大きく変動するという特性に鑑み、“ベースライン”という概念を業績予想に導入している。これは想定しうる最悪ケースでも確実に確保できる最低ラインという意味で、このベースラインに基づく業績計画が微増収・減益予想という形になって表れている。したがって、顧客先の企業において同社のコンポーネント搭載モデルの販売が急減するようなことがなければ、期初のセグメント業績予想が上振れとなる可能性は十分あると弊社では考えている。

スマートフォン向け売上高は前期比2.0%減の17,900百万円が計画されている。この事業では、サムスン電子のGalaxy Noteシリーズにペン・センサーシステムを供給している。2019年3月期のGalaxy Noteシリーズは継続モデルのGalaxy Note 8と最新モデルのGalaxy Note 9で構成され、同社はその2機種への供給で18,265百万円の売上高を確保した。2020年3月期については、過去のパターンを当てはめると、Galaxy Note 9と次期新型モデルに供給することとなり、それによって17,900百万円の売上高を計画していると考えられる。ポイントは次期新型モデルの投入時期であるが、これはまだ明らかになっていない。このタイミングのずれによって同社の期中の売上高の計上時期も変動してくることになるが、通期の売上高に影響があるという前提にはなっていないようだ。

2020年3月期について、同社は前期に見られたような前倒し受注・出荷は想定していない模様だ。しかしながら今期も前倒しとなる可能性は少なからずあると弊社ではみている。理由はサムスン電子が折りたたみ式スマートフォン「Galaxy Fold」の発売を延期したことだ。上期の注力商材を失ったことで、Galaxy Noteシリーズの新型機への期待が高まり、ローンチ(発売)時期が繰り上がるというシナリオだ。なお、Galaxy Foldと同社の関係については明らかになっていないが、弊社がGalaxy Foldに関するこれまでの報道を見た限りではペン入力を確認できなかった。

タブレット・ノートPC向けの売上高は前期比2.6%増の26,450百万円が計画されている。これまでもレポートしてきたように、タブレット・ノートPCの領域ではデジタルペンの標準搭載の動きが加速しており、主要なタブレット・PCメーカーにおいてデジタルペン搭載モデルが増加している。同社のアクティブES(AES)方式のデジタルペンがタブレット・PCメーカーから高い評価を受けて、その需要の取り込みに成功しているという状況にある。

こうした成長市場には新規参入を図るライバル企業の出現はつきもので、その点を懸念する向きもあろうが、弊社ではこの点については懸念する必要はないと考えている。理由は、タブレット・PCメーカーの評価ポイントが価格よりも性能に重点が置かれており、性能評価では現在のところ、AES方式が一歩抜きんでているとみられるためだ。ライバル社の製品への対抗上、性能で劣るものを搭載するわけにはいかないというタブレット・PCメーカーの事情が同社にとって追い風になっているとみられる。なお、電磁誘導(EMR)方式のデジタルペンについても、教育分野で使用されるモデルとの親和性が高く、同分野に強みを持つメーカーでの採用が引続き拡大するものと考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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