アライドアーキ Research Memo(6):市場ニーズの変化を見据えた新構想の始動などで大きな成果
1. ファンリレーションシップデザイン事業
(1) 新たな「ファン・リレーションシップ・デザイン」構想の始動
スマートフォンやSNSの普及により生活者の消費スタイル(口コミ重視やこだわり消費など)が変化するなかで、企業のマーケティング戦略も単発型の「マスベース」から蓄積型の「ファンベース」へと大きく変化してきた。また、アライドアーキテクツ<6081>においても市場ニーズに合わせてサービスの拡充(進化)を図ってきたことから、顧客への提供価値を再定義した上で、次世代の「ファン」と企業の最適な関係構築を目指す「ファン・リレーションシップ・デザイン」構想を発表した。同社はこれまでも、SNSやWebサイトを駆使してファン作りやファンとの交流を図ってきたが、今後はさらにサービス領域を「SNSマーケティング支援」「ファンマーケティング支援」※1「UGCマーケティング支援」※2の3つの領域に位置付け、「ファンとの最適な関係性を設計(デザイン)し、ファンとともにビジネスの成長を目指す」ことを包括的に支援する方向性を打ち出している。特に、「ファンマーケティング支援」においては、これまでのSNSやWebサイトだけでなく、リアルな場を含めた生活者との接点を通じて、「ファン」との最適な関係構築を支援するところにポイントがあり、提案の幅がさらに拡がってきたと捉えることができる。
※1 企業やブランドと、リアルな場やWeb上で何らかの接点を持った生活者の「ファン」化を支援。生活者一人ひとりと最適かつ長期的なつながりを創り出すことで、「ファン」の深化と拡大を実現する。
※2 生活者によってSNSなどに投稿された写真や動画などのコンテンツ(UGC)のマーケティング活用を支援。生活者視点で作成されたUGCを収集し、投稿者の許諾のもとに広告クリエイティブや企業/ブランドのオウンドメディア(自社運営サイト)上で活用することで、具体的な成果につなげる。
(2) 各種サービス機能の拡充と営業体制の見直し
同社は、前述のとおり、市場ニーズに合わせたラインナップの拡充にも取り組んでいる。2018年3月にリリースした「echoes(エコーズ)」は、Twitterのオートリプライ(自動返信)機能を活用し、すべての参加工程がTwitter上で完結するプロモーションキャンペーンを手軽に実施できるサービスであり、既に多くの企業に導入されているようだ。また、新構想に基づくサービス第1弾として2018年8月にリリースした「ブランドタッチ」は、商品やサービスに愛着・関心を持つ「ファン」とWeb上でつながり、その中から、企業に代わって商品の魅力を周囲に伝えたり、SNSを通じて発信したりしてくれるブランド・アドボケーター(支持者)を発掘・起用することができるサービスである。さらには、新構想の第2弾として、飲食店や商業施設などの実店舗におけるファン獲得・育成を支援するサービス「リアルタッチ」の提供も開始している。また、営業体制及び運用体制についても、インサイドセールス等による仕組み化に取り組み、生産性の向上に結び付けることができた。
(3) 開発拠点の更なる強化
開発力強化のため、本社及びベトナム・ハノイに次ぐ第3の開発拠点として、ホーチミンにも開発拠点を設置した。エンジニアの獲得競争が激化するなかで、今後も独自性の高いプロダクト開発を推進し、業容拡大を目指すために、開発スピードや品質の向上を図るところに狙いがある。海外の優秀なエンジニア人材の獲得・強化が順調に進んでいるようだ。
(4) 外部連携の一層の強化
「ファンベース」を提唱するコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之(さとうなおゆき)氏※を顧問に迎え、顧客企業のファンベース施策を支援するサービス開発に着手すると、2019年3月28日には、豊富な経営者・経営層ネットワークを持つ野村ホールディングス<8604>と佐藤尚之氏との三者における「ファンベース」を基盤としたマーケティング支援事業を担う合弁会社(株)ファンベースカンパニーの設立を発表した(2019年5月7日設立予定)。自社の商品やサービスを支持してくれる「ファン」を大切にし、「ファン」をベースにして売上げや企業価値を中長期的に向上させていく考え方を基盤としたマーケティング事業を展開する。新会社には、佐藤尚之氏がChief Planning Officerに就任し、ファンベース事業の企画統括を担うとともに、コミュニケーションデザインやマーケティング、ファイナンス、ITソリューションなど幅広い領域から多様な人材がメンバーとして参画する予定である。
※佐藤尚之氏は、通称「さとなお」として業界に知られる存在であり、これまで広告コミュニュケーションを中心に多くの企業のマーケティング施策に携わってきた豊富な実績と知見を有している。特に、2018年2月に刊行された「ファンベース—支持され、愛され、長く売れ続けるために」(ちくま新書)は、大きな反響を呼んでいる。
2. 越境・インバウンドプロモーション事業
中国を中心とする越境プロモーション事業については、まだ本格的な業績貢献には至っていないものの、インフルエンサーとの相性の良い化粧品などで実績が出始めている。具体的には、資生堂<4911>「マキアージュ」が中国EC商戦のプロモーションに動画インフルエンサーを活用し、中国の大型越境ECモール「Tmall Global(天猫国際)」で大手ドラッグストアチェーン「マツモトキヨシ」が展開する公式ショッピングサイトにおいてアクセス数首位を獲得。インフルエンサーを活用した成功事例として評価できるとともに、更なる展開に向けても期待が膨らむ。また、ほかの商品でも、中国「W11(ダブルイレブン)」商戦の動画プロモーションや訪日中国人の検索の受け皿となる簡体字クチコミによるインバウンド販促などで実績を残した。一方、新サービスについても、在日中国人による口コミを収集・活用できる越境プロモーション支援サービス「チャイナタッチ」の提供を開始している。
3. クリエイティブプラットフォーム事業
海外子会社が提供してきた「ReFUEL4®」についても、提供する価値やビジネスモデルの見直しを行うとともに、サービス名称(及び子会社の商号)も「CREADITS®」に変更した。旧モデルとの大きな違いは料金体系にある。旧モデルは成功報酬型(広告出稿量に応じて料金が増減)であったため、顧客企業にとっては予算が取りづらかったところに難点があった。新モデルは、契約プラン(月額固定金額)に応じて発行される「CREADITS」と引き換えに世界中の広告クリエイターからの質の高い広告クリエイティブを短時間で利用できるシンプルな形に変更されている。ほかにも、特定のプラットフォームのAPI依存が強かったことや利用対応メディアに制限があったこと、開発工数が多かったことなど、旧モデルのネックを解消し、より幅広い顧客に対応できるビジネスモデルへと進化を図っている。その結果、広告予算の大きい顧客の一部で解約が発生したものの、新モデルに対する評判は上々であり、足元では順調に伸びてきている。同社では、大型のグローバル企業に向けては米国の拠点から営業を行う一方、圧倒的に企業数の多い中小企業マーケットに対しては、コストメリットの大きいフィリピンからの遠隔での営業・運用を推進していく方針である。
また、2019年3月22日には、Creaditsが、世界最大の動画共有プラットフォーム「YouTube」が新たに開始したプログラム「YouTube creative partners」の初期パートナーとして選定された。検索広告やディスプレイ広告を出稿する企業の多くがYouTube広告にも範囲を広げつつある一方で、リソースや専門知識の不足により思うような成果につながらないケースも少なくない。したがって、今後はこういった企業に対して包括的なサービスを提供する機会が拡大する可能性が期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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