メディシノバ Research Memo(6):大型契約が期待される進行型多発性硬化症のライセンス契約動向に注目
1. 2018年12月期実績及び2019年12月期見通し
(1) 2018年12月期業績実績
メディシノバ<4875>は研究開発ステージであるため、業績については損失が続いている。2018年12月期の連結業績は、営業損失で15,586千ドル(前期は13,027千ドルの損失)となった。費用の内訳を見ると、研究開発及びパテント費は臨床治験費用の増加を主因に前期比1,402千ドル増加の5,625千ドルとなった。また、一般管理費は業績目標達成度に基づくストック・オプションの会計上の費用計上が増加したことにより、同1,157千ドル増加の9,961千ドルとなった。営業外収支が前期比797千ドル改善したが、これは米国の金利上昇による受取利息の増加が要因となっている。
(2) 2019年12月期見通し
2019年12月期の連結業績は、営業損失で26,066千ドルと前期比10,479千ドル損失が拡大する見通し。費用の内訳としては、研究開発及びパテント費が前期比6,100千ドル増加の11,725千ドル、一般管理費が同4,400千ドル増加の14,361千ドルを見込んでいる。増加要因についてはそれぞれ前期と同様となる。また、営業外収支についても受取利息の拡大により改善が続く。同社株主に帰属する当期純損失については25,072千ドルと前期比10,397千ドル損失が拡大することになる。
なお、同社は2019年12月期も営業利益及び営業キャッシュ・フローのマイナスが続けばJASDAQ市場の上場基準に抵触することになるが、現在進めているライセンス交渉やその他のパイプラインの導出、オプション契約など含めて多様な選択肢があり、クリアすることは可能と同社では考えているようだ。可能性は低いが、仮にJASDAQ市場で上場廃止になったとしても、NASDAQ市場での売買が可能となっている。当面は進行型多発性硬化症のライセンス契約動向に注目が集まるものと見られる。契約が締結されれば、その市場性から判断して大型契約となる可能性が高いためだ。
事業活動資金は米NASDAQ市場で調達
2. 財務状況
2018年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比33,804千ドル増加の77,222千ドルとなった。主な変動要因は、現金及び現金同等物が同34,322千ドル増加の62,313千ドルとなったことによる。同水準は2019年12月期末までの事業運営資金を十分カバーする水準となっている。
一方、負債合計は買掛債務の減少を主因として前期末比662千ドル減少の4,115千ドルとなった。また、株主資本は前期末比34,465千ドル増加の73,107千ドルとなった。同社株主に帰属する当期純損失14,675千ドルを計上した一方で、2018年2月に米NASDAQ市場で実施した公募増資のほか、ワラントの行使、新株発行の販売代理契約(ATM)の実施、ストック・オプションの行使等により払込剰余金が49,133千ドル増加したことが主因となっている。
同社は創業来、開発フェーズにあるため損失が続いているが有利子負債はなく、事業資金は米NASDAQ市場において公募増資を中心に普通株式を発行することで調達している。日本と比較して米国市場ではエクイティファイナンスの申請・審査手続きが簡便なほか、必要な際に迅速に調達を行う制度が確立されているためだ。同社は米NASDAQ市場で合計2億ドルのエクイティファイナンス(公募やワラントなど)の発行登録枠を設けており、同制度を使って各種エクイティファイナンスを行うことで事業資金を調達している。今後も開発の進捗状況と手元キャッシュの水準を見ながら、必要があればエクイティファイナンスを実施し、資金調達を行っていくものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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