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デジハHD Research Memo(1):エンタープライズ事業の成長加速、上流エンジニアの確保・育成が成長エンジン


■第3四半期(4月−12月)はエンタープライズ事業が大幅増収。事業拡大に向けた積極的な先行投資は継続

デジタルハーツホールディングス<3676>の2019年3月期第3四半期累計(4月−12月)決算は、売上高が14,393百万円(前年同期比11.1%増)、営業利益は1,241百万円(同19.9%減)、経常利益は1,233百万円(同21.3%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は847百万円(同15.5%減)で着地した。「エンターテインメント事業」及び「エンタープライズ事業」はいずれも増収となり、特に注力事業であるエンタープライズ事業が前年同期比約2倍の成長を実現した。一方、利益面については減益となったが、エンタープライズ事業を第2の収益の柱とすべく事業拡大に向けた取り組みを強化しており、人材をはじめとする積極的な先行投資を実施したことによるもの。また、アミューズメント(パチンコ等)機器向けのデバッグサービスの大幅な減収も影響しているが、こちらは期初計画段階で既に織り込まれており、同分野の減収の影響は想定線となる。


■10月−12月期売上高は過去最高更新だが、通期計画達成には若干のリスクが存在

第3四半期(10月−12月)の売上高は5,059百万円(前年同期比7.7%増)となり、過去最高を更新した。営業利益は、エンタープライズ事業を中心とする先行投資の影響により、464百万円(同15.2%減)となった。しかし、営業利益率は2018年第4四半期での4.2%を底に改善傾向にあり、現在は10%近い収益性にまで回復しているところは評価できるだろう。

また、通期計画に対しては、達成するためには、第4四半期で売上高6,607百万円、営業利益959百万円を稼ぐ必要があり、若干のリスクが存在すると考えられる。

第3四半期(10月−12月)は、デバッグの「ゲームコンソール」「モバイルソリューション」のほか、「システムテスト」の各サービスについて、強気の計画に対して若干未達だったとみられる。その中で特にゲームコンソールのデバッグは、顧客企業の開発スケジュールの影響を受けやすく、特に大型タイトルや人気タイトルの続編ともなれば、メーカー側の開発スケジュールに変更が生じやすい。そのため、四半期別でみると会社計画と多少ずれる場合もあるという点を考慮する必要があるだろう。


■「モバイルソリューション」は2ケタ成長、継続的な案件が発生。クリエイティブは新規案件の獲得が順調に進む

「モバイルソリューション」のデバッグが引き続き好調である。コンソールゲームと異なり、モバイルゲームの場合は、発売前だけではなく、運用過程でのアップデート等にかかるデバッグ作業が発生するため、継続的に需要が発生する。第3四半期におけるモバイルソリューションの売上高は2,098百万円と前年同期比7.4%増となり、第3四半期累計では14.3%増と2ケタの伸びを見せている。

その他、エンターテインメント事業において、ゲーム開発や2D/3Dグラフィック制作等、コンテンツ制作におけるクリエイティブ領域全般にわたる制作サポートサービスである「クリエイティブ」と、日本最大級の総合ゲーム情報サイト「4Gamer.net」等の運営やカスタマーサポートサービス等を提供する「メディア及びその他」がある。クリエイティブについては、技術力の高い人材の確保・育成に注力したことにより、継続的なゲーム開発案件に加え、2D/3Dグラフィック制作等の新規案件の獲得が順調に進んでおり、第3四半期累計の売上高は1,495百万円(前年同期比21.3%増)と好調。メディア及びその他については、「4Gamer.net」等の運営による価値向上、また、前期より新たに開始したカスタマーサポートサービスが順調に案件を獲得しており、売上高は692百万円(同59.1%増)と大きく成長している。


■「エンタープライズ事業」の成長加速、今後の事業成長が期待される分野

また、第2の事業の柱として事業拡大に向けた取り組みを強化している「エンタープライズ事業」の成長が加速している。同事業には、エンタープライズシステムの不具合を検出するサービスである「システムテスト」と、システムの受託開発やITサポート、セキュリティ等のサービスを提供する「ITサービス・セキュリティ」がある。同セグメントの第3四半期累計の売上高は、システムが911百万円(前年同期比41.8%増)、ITサービス・セキュリティは1,407百万円(同153.8%増)となり、エンタープライズ事業全体では2,319百万円(同93.7%増)と大幅成長を実現している。売上高全体の比率は2割程度ではあるが、今後の事業成長が期待される分野となる。


■「上流エンジニア」の確保・育成は業容拡大に向けた最重要課題。上流エンジニアの確保・育成が成長エンジンとなる

システムテストの要件定義や設計ができる「上流エンジニア」の確保・育成は、エンタープライズ事業の拡大に向けた最重要課題となる。上流エンジニアについては、第3四半期末において183名となり、前年同期(102名)と比較して1.5倍以上に拡大。通期計画(214名)に対する進捗率は85.5%となり、順調に人材の確保・育成が行われている。さらに、人材育成の取り組みの一環として、ゲーム好きをはじめとする約8,000名の登録テスター等を対象に、ソフトウェアテスト技術者資格の取得に向けた支援プログラムを開始するなど、上流エンジニアを育成するための社内体制の整備を推進している。上流エンジニアを多く抱えることにより、より幅広い企業からの案件等を受注することができることになり、これが成長エンジンの1つとなる。


■システムテストでは新規分野において幅広く受注、投資効果現れる

こういった取り組みにより、システムテストの受注案件では、「情報・通信」ではECサイトや音楽配信サイト、「金融」ではネットバンク、ネット証券サイト、「食品」ではIoTを活用した飲料機器、「自動車」ではコネクテッドカー向けシステム、カーナビ、「不動産」では営業支援システム、物件管理システム、「医療」では病院内情報システム、医療機器など、新規分野においてシステムテスト案件を確実に獲得している。このように、様々なソフトウェアのテスト実績を積むことで、ノウハウを蓄積し、さらなる新規顧客の拡大につなげるとともに、業界における認知度向上により上流エンジニアの採用強化につなげていきたいと同社では考えている。


■国内最大規模のソフトウェアテスト技術者資格保有者を抱える。DX実現に向けた動きが加速、ユニークな市場地位が強み

同社の一番の強みは、IT人材不足のなか、約8,000名のデジタル領域に親和性の高い登録テスターを擁していることである。その多くが、“ゲーム好き”というきっかけで同社に入社するテスターだが、中には、エンタープライズ領域におけるテストへの潜在的な能力を持っている人も多数存在している。そのため、同社では、独自の教育プログラムにより、彼らを上流エンジニアへと育成する取り組みを始めている。実際、ゲーム好きのテスター300人以上がソフトウェア技術者資格を取得できたという実績も出ている。これらのテスターが創業以来蓄積してきた100万件以上ものバグ情報及びその検出ノウハウをもとに、効率的なテストを実施する、さらには、同社のような、デバッグ・システムテストに特化した企業が少ないこともユニークな点である。

グループの成長戦略については、エンターテインメント事業の継続成長とエンタープライズ事業を第2の柱として拡大させることである。同社を取り巻く環境であるが、モノのインターネット(IoT)等によって様々なものをネットワーク化し、顧客や社会の課題解決に資する新たな付加価値を生み出す産業社会に向けて、政府における環境整備を含め、産業界全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)シナリオを実現する動きが加速している。ネットワークを介在するシステムや機器が様々な業界で増えることになるため、同社に対するシステムテストの需要は今後ますます拡大することが見込まれ、いかにこの需要を同社が取り込めるかに注視したい。ゲームデバッグでは市場で確固たる地位を確立している同社ゆえに、需要が見込まれるシステムテストの分野においても成長が期待されることになるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 村瀬 智一)




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