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HAPiNS Research Memo(4):PASSPORTからHAPiNSへと変更


■HAPiNS<7577>の事業概要

2. HAPiNS業態の確立
長らくPASSPORTが主力業態だったが、業績低迷により店舗数は純減を続けていた。しかし、RIZAPグループ入り後に開発された新業態HAPiNSが好調で、企業としての業績も回復してきたことから、2018年8月に社名をパスポート からHAPiNSへと変更した。見直し当初は従来型PASSPORTの拡張版で、1人1人が持っているカワイイに応えることを目指し、RIZAPグループをバックに出店やプロモーションを強化、新商品の企画開発ではRIZAPグループ子会社とコラボレーションした。その後、現在の中心顧客層である30~40代の女性からシニア層も含むおしゃれなファミリーへとターゲットを拡大、誰もがバリューを感じる新たな領域(プライス・デザイン・テイスト)を取り込み、URBANSTYLEとSweet-FeminineStyleをトライアルテーマに実証実験を進めた。

こうした幅広い客層を目指した業態開発が奏功して1店当たりの売上高が回復傾向となり、自信を深めた同社は、2017年11月にブランドをHAPiNSとして本格展開することした。これに並行して、RIZAPグループなどからのアドバイスにより、商品仕入れ値の改善による粗利率向上や、低採算店の閉鎖や物流業務委託会社の変更などによる販管費削減が進み、2018年3月期は5期ぶりに当期純利益の黒字化を達成した。営業上の黒字転換要因はまさにHAPiNS業態にあると言えるだろう。現在、新規出店のみならずPASSPORTからの転換も含め、メインブランドをHAPiNSへシフトしているところである。

また、300社以上に上る取引先を通じて幅広く品ぞろえする一方、自社開発商品や取引先と共同開発したHAPiNSオリジナル商品も増えてきており、苦労していたオリジナル商品の開発も進み始めた。オリジナル商品の企画に当たっては、全国各店の店長が聞いた「こんなモノがほしい」といった顧客の声や売れ筋商品のデータを反映させながら、商品部が基本プランを作成、これを販売部門との意見交換をするなど検討を重ねて商品概要を決定、さらに工場や取引先と細部のチェックを行って作り上げていく。このように、HAPiNSは「商品を仕入れて売る」スタイルから「商品を作り上げて売る」スタイルへ変わることで、他の店では手にすることができない独自の商品を増やしているのである。

多くの店がひしめき合う非常に厳しい雑貨業界の中で生き残るためには、顧客のニーズに寄り添い、他社と差別化した唯一無二の雑貨店になる必要がある。そういう思いが、少家族向けのHAPiNS家具やオリジナルデザインのPavishPatternシリーズを持つ、マンスリーで商品やイベントが変わるタイムリーで新鮮な店、HAPiNSという業態を生んだと考えられる。オリジナリティの高い自社商品、RIZAPグループ子会社とのコラボレーション商品による品ぞろえの見直し、接客対応などサービスの向上、仕入れルートの最適化による原価率の低減、経費削減による不採算体質の改善などにより、PASSPORTはHAPiNSとして復活し、さらに業態面や財務面では同業他社との差別化もできつつある。また、もともとあった同社に対する消費者の購買動機の1つである「ちょっとしたギフト」も、ギフトアイテムとラッピング資材を強化し、年間を通じてギフトを提案するギフト特化型店舗をモデルに復活しつつあり、「ギフトのHAPiNS」としての認知度向上も目指している。さらにインターネットを通じたマーケティングもスタートし、アプリを使って実店舗やインターネット通販への送客を促進する考えである。


ハッピーを生み出すHAPiNS
3. ブランド変更の狙いとRIZAPグループのシナジー
HAPiNS新業態の確立に伴い、2017年11月にメインブランドをPASSPORTから変更した理由は、HAPiNSが同社の企業理念である「顧客、株主、社員」が店舗や商品を通じてハッピーになるという精神を引き継ぎ、自分と自分の周りのたくさんの人たちの間にハッピーを生み出すことのできる店舗という意味が込められているからである。また、インターネット環境の普及で店舗や店名を気軽に調べられるようになったことから、顧客が調べやすく覚えやすい、親しみのある店名にすることも狙ったものである(インターネットで調べる際、「PASSPORT」で検索すると旅券関連の見出しが多くなる)。

若者の1人暮らしや2人暮らしだけでなく、晩婚化による1人暮らしの長期化、少子化による世帯人数の減少などにより、1人暮らしの多様化や小家族の暮らし、ファミリーの中の個といったシーンが増えていることを背景に、HAPiNSのブランドコンセプトを「ジブン色、1人暮らし。幸せ空間、ミニ家族。」とした。オリジナルデザイン雑貨の中に、自分にあった商品の見つかるブランドとして、ファミリーから単身世帯をもターゲットにすることで、他社との差別化につなげる方針である。このようなHAPiNS業態をドライバーに、同社は今後の成長戦略を展開していく考えである。

同社は、決算短信に「継続企業の前提に関する重要事象等」の注記をしている。2017年3月期まで4期連続して当期純損失を計上し、将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しているということを示している。しかしながら、RIZAPグループのマーケティング力やプロモーション力を利用することができ、実際に売上拡大やブランドイメージ刷新、財務体質強化などを進める一方、RIZAPグループ子会社とのシナジーをいかしながら収益力も強化しており、HAPiNS業態を創出するなど体質の改善は着実に進行している。また、子会社間のコラボレーションにも拡大余地があることから、遠くない将来、「継続企業の前提に関する重要事象等」の注記は解消できると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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