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アウトソシング Research Memo(3):人材提供数の積み上げが業績の伸びをけん引する成長モデル


■企業特長

1. 事業特性
(1) 成長モデル
アウトソーシング<2427>の主力事業は、顧客に対する人材提供数(外勤社員数)の拡大が業績の伸びをけん引する成長モデルである。したがって、景気後退時を除けば、提供する人材の採用数をいかに積み上げていくかが業績拡大のカギを握る。採用難が成長のボトルネックとなっている業界において、独自のPEOスキームの活用(国内製造系)や人材育成カリキュラムによるキャリアチェンジ(国内技術系)など、採用コストを抑えた人材の獲得に特長がある。また、M&Aにも積極的であり、グループガバナンス体制の強化によるPMI(買収後の総合プロセス)やグループシナジーの実現も同社の成長をけん引していると言える。

(2) 景気変動や労働者派遣法の影響を受けやすい事業特性
創業以来の「国内製造系アウトソーシング事業」は、メーカーの量産工程における変動部分を請負う性質から、景気変動(生産変動)の影響を受けやすい事業特性が課題となってきた。また、関連法規の動向にも大きく影響を受けることに注意が必要である。最近では、「2013年改正の労働契約法」及び「2015年改正の労働者派遣法」による2つの「2018年問題」が注目されている。「2013年改正の労働契約法」は、契約社員や期間従業員等、雇用契約に期限のある(有期)雇用に対して、有期雇用契約が反復更新され5年を超えた場合は、労働者の申し込みにより、契約期間の定めのない(無期)雇用に転換することを定めている。したがって、2018年には5年ルールの定めから5年が経過することになる。一方、「2015年改正の労働者派遣法」については、これまで3年を超えて契約できなかった派遣について、派遣会社の正社員(無期雇用社員)の派遣の場合には期間制限なしで継続可能になるなど、派遣先企業にとっては派遣活用の利便性を高める内容となっている。こちらも2018年には3年ルールの定めから3年が経過することになる。ゆえに、これら2つの「2018年問題」が顕在化することにより、メーカーが直接雇用する期間社員を正社員派遣に切り替えるニーズが拡大する傾向にある。また、「2015年改正の労働者派遣法」については、特定労働者派遣事業(届出制)を廃止し、すべての労働者派遣事業が許可制に一本化されたことにより、一定の許可要件を満たさない中小派遣会社は事業継続が困難になることが予想されており、業界淘汰が進むものとみられている。すなわち、2つの「2018年問題」は、後述する同社独自のPEO スキームに対するニーズの拡大や、業界淘汰による事業機会の取り込みという点において、同社にとっては追い風となる可能性が高い。

2. 同社の優位性
(1) 独自のPEOスキームによる人材ニーズの創出と顧客の囲い込み
同社は、「国内製造系アウトソーシング事業」が、メーカーの生産拠点の海外移管や産業構造の変化(鉱工業からIT及び土木建築産業へのシフト)、国内人口の減少などにより、中長期的には縮小することが予想されていることや「2018年問題」の顕在化を見据えて、新たな領域での人材ニーズに対応する独自のPEOスキームを2014年9月に立ち上げた。そもそも製造工程に従事する労働者は、短いサイクルでの変動領域に対応する外部派遣社員(月々の生産変動を調整するための領域に対応)と長期サイクルでの変動領域に対応するメーカー直接雇用の期間社員(海外生産移管やリーマンショック時のような大量の雇用契約の打ち切りのリスクに備えた領域に対応)、メーカー正社員の3層構造になっているが、本スキームでは、これまでの外部派遣社員で賄ってきた短期の生産調整領域ではなく、メーカー直接雇用の期間社員で賄ってきた長期領域での人材ニーズに対応するところに特徴がある。

具体的には、メーカーにグループ会社(株)PEOの運営する「PEO会」に会員として参画してもらった上で、これまでのメーカー直接雇用の期間社員をアウトソーシンググループの正社員(無期雇用社員)として受け入れるとともに、メーカーに派遣する形をとる。派遣先メーカーにとっては、これまで長期雇用で効率性を高めてきたメーカー直接雇用の期間社員について、5年を超える継続雇用には一定の制約が課されることになったところを、本スキームにより期間無制限で活用することが可能となる。特に、同社の得意とする自動車メーカーは製品ライフサイクルが比較的長期になることもあって、この領域への依存度が高く、潜在的な需要は大きい※1。一方、同社にとっては正社員(無期雇用社員)を抱えることによる固定人件費のリスクがあるが、その反面、高騰が続いている採用費の削減を図ることができる上、顧客にとって重要な人材をプールするためのプラットフォームを提供することにより、契約単価の向上※2やスケールメリットの追求、顧客の囲い込みなど先行者利益を享受できる可能性は高い。もちろん、社員にとっても同社が安定雇用の担い手になることによる恩恵を受けるため、社会的な意義も大きい。

※1 現時点の計画では2020年には少なくとも2万人を受け入れる想定。
※2 これまでの短期サイクルの領域と比較して、契約単価が3割以上増加する想定となっている。


(2) スクール事業を生かしたキャリアチェンジによる人材育成
同社が注力しているIT及び土木建築分野においては、スクール事業を生かした人材育成カリキュラムによる差別化を図っている。具体的には、同社グループのKENスクールが顧客の通信キャリアと共同で開発したIT系育成プログラムや、大手ゼネコンOBと共同で開発した土木建築系の教育プログラムを活用することで、未経験・異分野からのキャリアチェンジによる人材育成を推進しており、成長産業で技術者が不足しているIT及び土木建築産業向けの事業拡大を支えている。すなわち、技術系派遣会社が抱える「ハイエンド技術者の採用困難によってトップラインが大きく成長できない課題」を、同社は独自のスキームで克服していると言える。

(3) 安定したキャッシュ・フローを生み出す事業ポートフォリオ
同社は、かねてより「国内製造系」に依存した景気変動の影響を受けやすい事業特性からの脱却を図るため、1)成長性や付加価値の高い「国内技術系」の強化、2)景気変動の影響が少ない公的業務や米軍施設向け事業への進出、3)コンビニ業界向けなど「国内製造系」とは景気サイクルの異なる分野への参入、のほか、4)「国内製造系」においてもPEOスキームによる長期事業領域へのシフトなどに取り組んできた。その結果として、安定したキャッシュ・フローを生み出す事業ポートフォリオも同社の強みとなっている。今後もM&Aを成長戦略の軸に据える同社にとっては、大きなアドバンテージになるものと評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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