エルテス Research Memo(4):過去5年間は平均成長率40%を超える水準で業績を拡大
1. 過去の業績推移
2013年2月期からの業績を振り返ると、顧客数の拡大等により、年平均成長率40%を超える水準で順調に業績を伸ばしてきた。経常利益も株式上場を見据えた2015年2月期に一時的な損失を計上したものの、その後は順調に回復し、経常利益率は先行費用や上場関連費用等をこなしながら13%前後の水準で推移してきた。もっとも、連結決算に移行した2018年2月期は、今後の事業拡大に向けた先行投資の影響により利益水準は一旦落ち込んだが、本質的な収益力に変化はないと言える。
財務面でも、自己資本比率は2015年10月の産業革新機構等からの出資(534百万円)や2016年11月の株式上場に伴う新株発行(299百万円)により80%を超える水準で推移するとともに、「現金及び預金」も1,228百万円と高い水準にある(2018年2月末現在)。同社は、強固な財務基盤と潤沢な手元流動性を生かした戦略投資やM&Aも視野に入れているもようであり、今後の動向に注意が必要である。
2018年2月期は増収ながら、新規事業への先行投資等により減益決算
2. 2018年2月期決算の概要
連結決算へと移行した2018年2月期の業績は、売上高が前期(単体)比16.6%増の1,608百万円、営業利益が同60.9%減の71百万円、経常利益が同57.7%減の71百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同69.3%減の31百万円と増収ながら新規事業への先行費用の影響等により減益となった。もっとも、先行費用による減益決算は想定内。計画に対しては、売上高が下回ったものの、利益面では上回る着地となっている。
「ソーシャルリスク事業」が順調に拡大。特に、「ソーシャルリスクモニタリングサービス」が既存顧客からの継続受注と新規顧客からの受注により大きく伸びた。一方、創業来の主力である「ソーシャルリスクコンサルティングサービス」は若干減少したが、継続率の高い「ソーシャルリスクモニタリングサービス」への移行を進めていることが理由であり、同社の政策的な意図を反映していると言える。また、「その他サービス」が伸びているのは、新規事業である「内部脅威検知サービス」によるものであり、ログ管理ソフト会社とのアライアンス効果等により、まだ小規模ながら順調に立ち上がってきた。
ただ、売上高が計画を下回ったのは、営業組織体制の変更により、一時的に営業活動が停滞したことが理由である。同社は、経営責任を明確にするために役員報酬の削減を実施している※。
※代表取締役社長の月額報酬の20%、その他取締役(非常勤取締役を除く)の月額報酬の10%をそれぞれ減額(2018年3月から2019年2月まで)。
損益面では、人工知能の活用(リスク判定等)による業務効率化を進めているものの、成長継続のための新規事業投資(関連費用80百万円)や規模拡大に向けた経営基盤構築(会計システム、オフィス移転等に係る費用67百万円)により営業減益となった。ただ、前述のとおり、先行費用は想定内である。
財政状態については、先行投資(オフィス移転に伴う什器等、ソフトウェア開発、投資有価証券の取得)などにより固定資産が前期末(単体)比23.0%増の342百万円に増加した半面、「現金及び預金」が同15.2%減の1,228百万円に減少したことから、総資産全体では同6.5%減の1,801百万円に縮小。一方、自己資本は内部留保の積み増しや新株予約権の発行により同2.0%増の1,606百万円に拡大したことから、自己資本比率は89.1%(前期末は81.7%)と高い水準がさらに上昇した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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