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ジェイテック Research Memo(3):新規事業「グルくる(R)」「staff-one」で積極的な戦略を展開


■今後の展望・課題

1. 経営理念の施策
ジェイテック<2479>は2016年3月期に事業・収益構造の改革を本格的に行っていく方針を示したが、そこでは技術職知財リース事業の強化を維持しながら、新規事業である「グルくる(R)」「staff-one」と、派遣・請負事業のすそ野拡大において積極的な戦略を展開するとし、「技術者の地位向上と業界最高の収入を実現し、創造的個人経営集団を形成させる」という経営理念に基づいて施策を打ち出している。

経営理念の施策として具体的に挙げているのは、「IoTテクノロジストの育成強化」、「人材採用と人材育成」、「自社開発及び販売の促進」、「新しい業務領域への継続挑戦」──の4点だ。

まず、「IoTテクノロジストの育成強化」については、IoTやAIにより、世の中の仕事のあり方が大きく変化することが予測され、そうした時代の流れに沿う形でIoTに特化した教育カリキュラムと人材育成を進めていく。そのため、同社では技術者が不足しているIoT分野に対応できる人材を育成するために、この分野に特化した独自の教育カリキュラムを整備した。とりわけ、オフィス系と異なり、工場、現場など制御系のエンジニアは少ないことから、将来的に引き合いが活発化するとみられる。

「人材採用と人材育成」ついては、空前の人手不足により、人材獲得競争が激化するなかにあっても、同社は高い採用基準を緩めることはしない。時代に左右されることなく、高付加価値のサービス品質を提供することを心がける。一方、ジェイテックアドバンストテクノロジ、ジェイテックアーキテクトにおいては、初心者・未経験者を教育し、配属するビジネススキームを確立し、幅広い人材を確保するとともに、新たな顧客を開拓する。

「自社開発及び販売の促進」では、派遣会社向け勤怠管理クラウドサービス「staff-one」の販売を進める。同社のシステムを、7万社あると言われる派遣会社に提供する訳だが、単に収益アップの事業としてだけではなく、同社が進めるM&Aにも活用する考えだ。既に、2018年3月期に試験導入が1件あったが、現在、数社から問い合わせがきているという。さらに、ここでは後述する「グルくる(R)」の拡販も目指す。

また、「新しい業務領域への継続挑戦」に関しては、主要取引先であるLIXILに加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたインフラ整備や首都圏の再開発における需要取り込みを推進。既に、建設分野では東京都で一般建設業許可を取得しており、自社設計施工案件の受注にも努める。さらに、人手不足がある意味、技術者以上に深刻である介護ビジネスの拡大にも積極的に取り組んでいる。介護ビジネスは、2018年3月期に関西地区で新規に31施設との取引が可能となったが、高級施設から庶民的施設など幅広い受け入れ先の準備が整ったことで、2019年3月期は更なる人材確保と人材提供に注力する考えだ。

2.技術職知財リース事業の展望
収益基盤で重きをなす技術職知財リース事業は、極めて高度な技術を持つテクノロジストに関して、もともと同社は景気が悪化した際に大量の優秀な技術系人材を採用して育成し、業績を伸ばしてきた。しかし、最近の決算動向でも明らかなように、大手メーカーの業績が堅調となっている現状では優秀な人材確保は極めて困難な状況にある。リーマンショック直後には100人に及ぶ優秀な人材を確保した時期があったものの、現在は思うように人材が確保できない。高いレベルを擁するため、好景気下では優秀な人材を採用するのは難しいと言える。

しかも、働き方改革によって残業が減少していることも、同社の業績にマイナスに作用する。高い技術力に対する評価がアップしたことで、単価は上昇傾向にあるものの、時間数が減っているため、売上高が伸び悩んでいる状況だ。

他方、労働契約法の改正に伴う、有期社員の「無期転換ルール」(2018年4月)、労働者派遣法の改正に伴う派遣社員の「派遣期間3年ルール」(2018年10月)などによる“2018年問題”に関しては、同社のテクノロジストは正社員雇用であることから、その影響を受けることはない。関連子会社の一部有期雇用社員についても、制度の整備を行い対応を完了した。

こうしたなかで、前述したようにIoT関連で伸びしろを作っていく。とくに、工場の無人化進展に絡んでビジネスチャンスが大きくなりそうだ。というのも、会計や発注といった業務に対応が可能なオフィス系のエンジニアは多いものの、搬送など工場の業務に精通した制御系のエンジニアは少なく、こうしたいわゆるファームウエアの分野で、同社のテクノロジストが活躍する余地が広がりそうだ。その意味でもIoTの進展が収益環境を変える可能性もある。

さらに、景気動向についても、長い目で見れば停滞する局面も出てくるため、中長期的な経営戦略とは別に、短期的な収益面ではリセッションが待たれる状況だ。

3. 「グルくる(R)」の今後
2015年3月にリリースされた店舗における注文支援システム「グルくる(R)」の今後についても期待がかかる。

「グルくる(R)」は、来店客が自分のスマートフォンを店内にあるQRコードにかざすか、NFCタグにタッチするとスマートフォンに店内の商品リストや価格、商品の説明が表示される。同時にそこから商品を注文することもできる。いわゆるセルフ注文システムだが、従来のように店舗にタブレットを置き、そこから注文する場合に比べ、店側の投資が格段に低く済むようになる。タブレットの場合は小規模の場合でも導入の初期費用に数百万円かかる一方で、「グルくる(R)」は原則として初期投資は不要である。使用料も、商品の数や、店舗の規模には関係なく月額1万円で済む。さらに、13言語での対応が可能となっている点も大きなポイントで、インバウンド消費に対応できるシステムだ。翻訳費用は別途かかる。

新規事業も「人手不足」がキーワードになっており、「グルくる(R)」も開発当初は、アルバイトや従業員の確保が難しい小規模飲食店向けに開発したが、インバウンド消費の活況で市場が注目した。その結果、現在では当初の対象だけでなく、観光地の名所案内やおみやげ店のほか、大型専門店への導入も視野に入っている。

2018年3月期の「グルくる(R)」の導入実績は25件だったが、今後の拡大のカギを握るのがQRコードの普及具合だ。QRコードの国内市場は、当初の見込みよりも広がりが遅れている。QRコードがキャッシュレス化の進展によって拡大すれば、「グルくる(R)」の導入は加速度的に増える可能性もある。

「グルくる(R)」は、注文管理装置及び注文管理手法に関して2016年1月に特許を取得し、技術の先進性も認められた。加えて、クラウド対応のサービスであるほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて全国に無料Wi-Fiが整備される予定であることなどから、あらゆる店舗での注文の際に標準的に使われる「社会インフラ」への育成を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)



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