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カナミックN Research Memo(3):地域の医療・介護従事者の仕事を支えるプラットフォームをクラウドで提供


■事業概要

1. 事業環境
日本の人口ピラミッドにおいて2025年は大きな節目の年であり、“2025年問題”とまで言われる。団塊の世代が75歳を超え、2010年に全人口の11%だった75歳以上人口は、2025年に18%に達する。統計では75歳以上になると、要介護認定を受ける人の比率は23.3%に上り、65歳以上75歳未満の3%から大きく跳ね上がる。このような変化を反映して、国の社会保障費の中の介護費は2010年に7.8兆円であったものが、2025年には20兆円になることが推計されている。介護事業所も約27万事業所(2010年)から約70万事業所(2025年)に、在宅医療を行う医療機関も約1.25万(2010年)から約2.2万(2025年)にそれぞれ増えることが予想されている。同社の提供するシステムのユーザーは医療・介護従事者であり、その人数も今後大きく増加することが想定される。

地域包括ケアは厚生労働省が提唱・推進する施策であり、2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みの構築を目指すものである。「在宅医療・介護連携」の取り組みの主体は市区町村であり、介護保険法の中で制度化されており、2018年4月にはすべての市区町村で取り組みが開始された。

2018年度の介護報酬改定は、同社にとっても追い風となる改定となった。
(1) 改定率は+0.54%(プラス改定)
(2) 「地域包括ケアシステムの推進」が1番目のポイントとして取り上げられ、医療・介護の役割分担と連携の一層の促進などが挙げられた
(3) 「介護ロボットの活用の促進」、「ICTを活用したリハビリテーション会議への参加」の規制緩和があった

2. クラウドサービス:概要
同社のカナミッククラウドサービスの主要なモジュールは、「情報共有プラットフォーム(2階層)」と「介護業務管理システム(1階層)」の2つである。

「情報共有プラットフォーム(2階層)」の導入対象顧客は自治体、医師会、中核病院、在宅医などであり、それら顧客の所属する地域全域で導入される。システム画面は患者ごとに作成されており、患者のプロファイル(基本情報やケアプランなど)や日々のデータ(バイタル情報、食事、水分、排泄、薬剤情報、ケア実施状況など)が統合的に管理される。このページには患者を担当している関係者のみが入ることができ、クローズド型のSNS機能を持つ。1人の患者に関連する様々な主体(主治医、在宅主治医、ケアマネジャー、ヘルパー、地域包括支援センター、家族、薬剤師、訪問看護師)が連携する重要な情報インフラとなっている。

「介護業務管理システム(1階層)」は、「情報共有プラットフォーム(2階層)」と連携したシステムであり、介護に関わる法人や事業所(地域包括支援センター、ケアマネジャー、介護サービス事業者)が導入する。クラウドの特性を生かし、スマートフォンやタブレット端末で操作が行えるため、介護の現場で利用することができ、介護現場のペーパーレス化や業務の効率化が可能になり、多職種連携の課題である二重入力等の負担軽減も特長である。サービスラインの1つである「在宅介護サービス管理システム」では、訪問介護計画書、介護記録、モニタリング、シフト管理、介護保険請求、給与管理、債権管理など業務が一気通貫でシステム化されている。他社ソフトが注力するのが個別業務(帳票作成、レセプト管理)などであるのに対して、同社システムは営業管理(SFA)から勤怠・給与管理、経営分析までカバー範囲が広く、経営の見える化に主眼が置かれている。

3. クラウドサービス:ビジネスモデル
同社のカナミッククラウドサービスは、1階層の「介護業務管理システム」、2階層の「情報共有プラットフォーム」が相互に連携して地域内での医療・介護連携を支援している。基本戦略としては、無料で、2階層の「情報共有プラットフォーム」を使って連携の有効性を体験してもらい、1階層の「介護業務管理システム」に誘導するという、いわゆる“フリーミアム※”ビジネスモデルである。2011年には、特許「介護支援システム及び介護支援プログラム(特許番号4658225号)」を取得しており、この仕組みの独創性は折り紙付きだ。

※基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組み。


また、クラウドサービスの特徴は、売上げが積み上がるストック型ビジネスモデルである点だ。初期の開発投資は大きいが、ユーザーが増えて損益分岐点以上の売上げに達すると高い利益率を享受できる。リピート率が高く、ユーザーごとのカスタマイズが少ないためである。一度使い始めるとデータが蓄積されるに伴い、有効性も向上するため、離脱が少ないのも特徴だ。同社は既に損益分岐点を超えており、強固な収益構造を持っている。

4. クラウドサービス:主要経営指標
同社のクラウドサービスは急速に普及している。情報共有システム導入地域は2018年3月期末で701地域(前期末から85地域増)となった。また、クラウドサービスのユーザーID数は、有料・無料を合わせて80,572(前期末から9,705増)となり、特に無料ユーザーの伸びが大きい。結果として、クラウドサービス売上高は、2018年9月期第2四半期で628百万円(前期第2四半期より89百万円増)と順調に成長している。

5. 基本戦略:プラットフォーム化
同社の基本戦略は、クラウドベンダーからプラットフォーマーに進化することである。プラットフォーム化構想には、AIやIoT等を含むシステム連携、FinTechとの連携、シェアリングエコノミーとの連携が描かれている。カナミックユーザーにとっては、基本のクラウドサービスに連動・追加して利用することで利便性が向上する。

AI・IoTなどのシステム連携の具体例としては、「ケアプランシステム×AI」、「遠隔医療×IoT」などが研究開発中、「多言語化」、「業務基幹システム」は既に具現化されている。FinTech連携の具体例としては「電子マネー・仮想通貨等」、「ファクタリング」、「各種決済」、「Tポイント等」が挙げられており、Tポイントは既に導入済である。シェアリングエコノミー連携では、「スタッフ人材」、「介護施設」、「介護用品・車両」などが対象となる。人不足が深刻な介護業界において、人の偏在を解消するマッチング機能が求められており、(株)キャリアと連携して介護人材のマッチングを開始している。また介護ベッドのシェアリングにも着手しており、情報量の拡大によるサービスレベルの向上が期待される。プラットフォーム化は単なる構想ではなく、着実にユーザーの実利につながる方向に進化している。

6. コンテンツサービスの概要
インターネット広告市場は2017年に1兆5,094億円に達し、前年比15.2%で成長している。同社のコンテンツサービスは医療・介護専門職向けに特化したインターネット広告配信サービスである(患者やその家族も利用可能)。出稿する企業にとっては、対象が明確であるために効果が見えやすく、地域も絞りやすい。インターネット広告のほか、ユーザー会参加、Webアンケート、サンプル試供品配布などのサービスメニューもある。メディアとしての価値は広告を視聴するクラウドサービスのユーザーID数(無料ユーザー+有料ユーザー)に比例する。ユーザーID数は80,572(前年末比9,705増)と増加しており、これに伴って出稿社数及びインプレッション(広告掲載回数)も増加している。最近では、食品会社、製薬会社、福祉用具会社などに広告主の業種が広がり、使われ方も多様化している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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