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Pウォーター Research Memo(2):宅配水業界トップ。天然水の製販一体経営に強み


■会社概要

1. 会社概要と沿革
プレミアムウォーターホールディングス<2588>は2006年、宅配水ビジネスの成長性に注目した(株)リヴァンプの玉塚元一(たまつかげんいち)氏(現ローソン<2651>顧問)、機関投資家の藤野英人(ふじのひでと)氏、(株)日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表の村口和孝(むらぐちかずたか)氏(現取締役)の3人が中心となって設立された(旧社名:ウォーターダイレクト)。創業当初からSPA型※の経営を志向しており、ウォーターサーバーの自社設計から、製造、販売、顧客へのアフターサービスまでを自社で完結させることで顧客ニーズを迅速に把握し、商品開発や販売方法に生かす戦略を採ってきた。2007年に家電量販店の(株)ヨドバシカメラでデモンストレーション販売(以下、デモ販売)を開始したのを皮切りに、全国的に大手小売店でのデモ販売を展開し顧客件数も順調に拡大してきた。2009年9月期に黒字化を達成、以降も成長を続け2013年に東証マザーズ上場、2014年には東証2部に昇格している。2016年7月に同じ光通信<9435>のグループであるエフエルシーと経営統合し、プレミアムウォーターホールディングスとして再スタートを切った。新会社を率いるのは、エフエルシーを起業しプロモーション営業力で国内トップクラスに引き上げた実績を持つ萩尾陽平社長だ。天然水の製造力No.1の旧ウォーターダイレクトと営業力No.1のエフエルシーが統合することで、宅配水業界トップ3の中でも圧倒的な成長力を持ち、2018年3月期の売上高(27,716百万円)はNo.1の規模である。

※SPA型:商品企画から製造、販売までを垂直統合させることでSCMの無駄を省き、消費者ニーズに迅速に対応できるビジネスモデルのことで「Speciality store retailer of Private label Apparel」の頭文字をとった造語。


成長する宅配水市場
2. 成長する宅配水市場
宅配水とは、サーバーとセットで供給されるミネラルウォーターで家庭や事業所などに宅配されるものを指す。2000年以降に普及が開始し、東日本大震災などの影響も追い風となり2012年頃までに急成長を遂げた。その後成長が鈍化した時期もあるが2015年以降成長軌道が回復し、2017年の市場規模は3,700千台である。配送方式別に見ると、初期にリターナブル方式(容器を再利用する)で市場が形成され、その後1 WAY方式(容器が使い切り)がより成長してきた。2017年の市場規模はリターナブル1,950千台(前年比50千台減)、1 WAY1,750千台(前年比250千台増)と明暗が分かれる。同社は1 WAY方式を採用しており、2017年に約180千台純増させており、1 WAY市場の成長の約7割が同社分である。宅配水業界の同業他社としては、リターナブル方式を主とするナック<9788>のクリクラ事業、アクアクララ(株)がある。


3つの強み。「製販一体型経営」「高い水質基準」「圧倒的な顧客獲得力」
3. 強み
(1) 製販一体型経営
同社は、2016年7月に天然水製造No.1のウォーターダイレクトと営業力No.1のエフエルシーが経営統合した経緯がある。製造面では出荷量が多いためにスケール効果が効き、PET容器完全内製化しているため製造コストで優位である。OEMでの供給も可能となり工場稼働率をさらに上げることができる。また、顧客との接点を持ち顧客ニーズが迅速に入るため、開発(ウォーターサーバーなど)、製造、品質管理、販売、アフターサービスの各プロセスに活かすことができるのも、製販一体型経営の優位性だ。

(2) 高い水質基準
同社は水の安定供給および地産地消を狙いとして水源を分散している。現状は、山梨県の富士吉田・島根県の金城・熊本県の南阿蘇の3ヶ所に工場を持つ。成分や安全性には厳しい基準を設定している。特に、硝酸および亜硝酸は毒性が指摘されているため、同社独自の高い基準を設けて管理する。2018年モンドセレクション金賞及び優秀味覚賞を受賞(6年連続)。富士吉田工場が食品安全に関するマネジメントシステムの国際規格であるFSSC22000の認証を取得している。

(3) 圧倒的な顧客獲得力
個人向けが9割以上、法人その他向けが1割。大型商業施設や大手量販店でのデモ販売が6割、家電量販店各社、ショッピングセンター、ホームセンターなどにブースを出展して販売している。取次店販売その他が4割と成長が著しい。家具、金融関連、各種通販、家電量販店、不動産などの多様な事業会社と取引を拡大中である。また宅配水事業を行う他社への製品提供(OEM)も増えている。旧エフエルシーはデモンストレーション販売では国内トップクラスの実力。作り込まれた従業員評価制度を始めとして、従業員の能力を引き出す仕組みが充実している。


「投資回収型ストックビジネスモデル」が特徴
4. ビジネスモデル
同社のビジネスモデルの特徴は、「投資回収型ストックビジネスモデル」である。ウォーターサーバーの原価やデモ販売の人件費、催事場代、販売店への販売手数料などの費用は先行して発生し、これを会社側が最初に負担する(1顧客当たり数万円)。この投資を、その後数年かけて天然水の売上で回収していく。もちろん一定の解約が発生するため永遠には続かないが、解約率1.5%(2018年3月期実績、月当たり)から概算すると平均67ヵ月(約5年半、フィスコ試算)となる。定期配送契約を結ぶため、ストック利益(毎月の水代などから得られる収入から顧客維持コストや提供サービスの原価などを除いた利益分のこと)は安定して継続する。つまり単純化すれば、数万円の先行投資をして、毎月少しずつ投資分を回収し投資回収が終われば利益のみとなる。新規顧客を一気に増やす時期は赤字になるが、その後回収が進んでくると大きく黒字に転換するという事業特性である。


新規顧客獲得は月2万件を超えるペース。保有顧客数が順調に積み上がる
5. KPI(重要業績評価指標)の推移
同社はKPI(重要業績評価指標)として新規契約件数及び保有契約件数を設定し進捗を管理している。新規契約件数に関しては、2016年7月の経営統合を契機に平常月で16千件ペース、2017年5月からは月20千件前後のペース。統合の狙いでもあった営業力強化の効果が顕在化している。宅配水の販売には季節性があり、7月から8月の夏の時期に新規獲得がピークとなる。また大きなブースでの販促を行った月は大きく新規獲得が増える。新規契約の増加に加え、解約率を低く抑えることに成功したこともあり、保有契約件数は順調に積み上がってきた。2016年7月の経営統合時点で394千件だった保有契約件数は右肩上がりを続け、2018年4月末時点で661千件に達している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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