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サンワテクノス Research Memo(6):売上高が達成されれば利益は予想を上振れてくる可能性


■今後の見通し

2019年3月期通期についてサンワテクノス<8137>は、売上高157,500百万円(前期比7.3%増)、営業利益4,450百万円(同7.6%増)、経常利益4,500百万円(同3.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,150百万円(同2.1%増)と増収増益を予想している。

弊社では各需要業界の動向に照らし、売上高の157,500百万円という予想は十分達成可能とみている。利益についても、売上高が達成されれば、おのずと会社予想の数値は達成されると考えている。同社は今期の営業利益率を前期比横ばいの2.8%で見ている。この点については多分に保守的という印象を受けるが、前期において構成差(プロダクトミクス)によって売上総利益率が低下したことが今期も継続する可能性が高いため、少なくとも期初の現時点では会社同様、慎重にみておくべきであると考えている。

1. 各需要先業界の見方
(1) 産業機械業界
同社は電機部門のサーボモータや制御機器、電子部門の電子部品や電子機器、部材などを幅広く販売している。主たる用途はFA(ファクトリーオートメーション)機器であり、中国やアジア諸国等での旺盛な設備投資需要を受けて、同社から産業機械業界向けの出荷も成長が続くとみられる。

(2) スマートフォン業界
需要は、販売台数の成長鈍化の影響などから2018年3月期の段階で鈍化がみられた。しかし、これはスマートフォンメーカーの設備投資を冷え込ますまでには至っていないもようだ。増産投資は期待しにくいものの、生産効率上昇による生産コスト削減を目的に自動化投資・省力化投資は2019年3月期も継続すると期待される。

(3) 自動車関連業界
同社は大きく2つの商流を有している。1つは電子部門における電子部品・電子機器類の販売だ。これは2018年3月期に伸長したのは前述のとおりだが、2019年3月期も同様のペースで拡大が続くと期待される。ADASやEVといった自動車のエレクトロニクス化の進展が背景にある。もう1つは生産ラインに対する電機部門からの制御機器やサーボモータなどの販売だ。これもまた自動化投資や省力化投資の需要は旺盛で、2019年3月期も高水準で推移すると期待される(これらは産業機械業界を介して、間接的に自動車関連業界に行くケースも含んでいる)。

(4) 半導体関連業界
同社は国内及び台湾、韓国に主として販売している。半導体メーカーよりも半導体製造装置メーカーに電機品や電子部品、電子機器等を販売するケースが多いとみられる。3DNANDフラッシュメモリなど半導体チップの価格低下が報じられているが、これらは本質的にコモディティで価格変動性が高いため、過度の懸念は不要だと考えている。IoTや中国の半導体業界の勃興といった構造変化を背景に、半導体関連業界向けの需要は高成長が続くとみている。

(5) FPD関連業界
液晶パネルについてはピークアウトした感はあるが、有機ELパネル製造装置向けは、むしろこれから本格的に増えてくると期待される。現状は日本企業が有機EL製造装置においても主導権を握っており、この構造が続く限り、同社は恩恵を享受できるとみられる。

上記のような需要先業界の見方や事業環境を踏まえ、同社は部門別見通しについて以下の様に予想している。

2. 部門別見通し
(1) 電機部門
前期比10.1%増の29,900百万円を予想している。スマートフォンの販売台数の鈍化もあって2018年3月期の下期にはスマートフォン向けの設備需要に一巡感が出たため、2019年3月期はこの点を警戒して前期よりも低い売上予想に至ったとみられる。一方で半導体製造装置関連や自動化投資・省力化投資への需要自体は業界をまたいで需要は旺盛であるため、会社予想の2ケタ増収は十分可能だとみている。

(2) 電子部門
前期比0.5%増の111,000百万円を予想している。電子部門の主要商材の向け先は電機部門で取り扱う電機品であるため、両者の需要トレンドは重なる。にもかかわらず電機部門の2ケタ増収予想に対して電子部門を横ばいと予想するのは、客先における過剰在庫の可能性を警戒しているためとみられる。2018年3月期の極めてタイトな部材需給のなか、実需以上の前倒し発注があり、その分の調整が起こる可能性があるということだ。この点は杞憂に終わる可能性も十分あると弊社では考えているが、期初の現段階ではあえて否定する材料もない。一方、ジャストインタイムが徹底している自動車業界にあっては、そうした前倒し発注リスクはなく、自動車業界の好調を考えると、0.5%増収という予想は若干控え目な印象だ。

(3) 機械部門
前期比81.3%増の16,600百万円を予想している。同社によれば、大手半導体メーカーや大手食品メーカーなどへの生産設備の売上が予定されていることが理由とのことだ。これらは(見込み生産ではなく)受注案件であるため、納期遅れなどが発生しなければ予想どおりに大幅増収となると期待される。むしろ懸念されるのは、こうした大型商談一巡後の反動減で、2020年3月期に前期比大幅減収となりはしないかということだ。この点について同社は、エンジニアリング事業の推進などの成果もあって、かつては1〜2億円が一般的な商談規模だったものが、ここ数年は10億円を超える商談も珍しくはなくなってきているということで、機械部門の拡大した業容の維持あるいは一段の拡大に自信を見せている。機械部門の案件は顧客の設備投資動向により直接的に左右されるため安心はできないが、機械部門が顧客規模や商談規模、担当領域拡大や難易度上昇、といった諸点において、転換期を迎えていることが推察される。今後の展開に注目していきたいと考えている。

2019年3月期の懸念材料として同社は、物流費の上昇とそれによる利益圧迫を懸念している。2019年3月期の予想営業利益率を前期比横ばいの2.8%としている大きな要因ともなっているとみられる。しかしながら弊社では、この点はあまり懸念の必要はないと考えている。理由は改善の余地が大きいためだ。同社はこれまで、コスト削減よりもトップライングロース(売上成長)に主眼を置いてきた。それが、2018年3月期の売上高が中期経営計画目標値を突破する原動力となったと言える。今回改めてコスト削減に注力する方針を明確にしたことで、2019年3月期に想定されるコストアップは十分吸収可能だと弊社ではみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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