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アクセル Research Memo(4):19年3月期は研究開発費の増加により収益が悪化するが、下期からの回復を見込む


■今後の見通し

1. 2019年3月期の業績見通し
アクセル<6730>の2019年3月期の業績は、売上高が前期比25.7%減の6,300百万円、営業損失が1,450百万円、経常損失が1,450百万円、当期純損失が1,050百万円となる見通し。

2019年3月期業績の前提となる遊技機器の年間販売台数は、前年比24.0%減の155万台程度とした。2018年2月に改正風営法が施行され、パチンコ、パチスロともに一段と射幸性を抑える方向となったことにより、新台の入れ替え需要が更に冷え込むと見られるためだ。遊技機器メーカーの見通しでは170万台程度の見方が多いが、同社ではホールの収益環境が厳しくなっていることや3月の販売実績、顧客動向などを踏まえて保守的な前提とした。半期ベースでは上期が規則改正前に型式認定を受けた旧基準機が中心となり、下期から新基準機が徐々に出始めると見ている。また、グラフィックスLSIの販売数量は上期が底となり、下期以降回復に向かう見通しだ。

製品別の売上見通しについて、主力の遊技機器向けグラフィックスLSIは販売数量で前期比32%減の43万個を見込んでいる。遊技機器販売台数の減少率よりも落ち込みが大きくなるのは、リユース率が上昇すると見ているためだ。「AG5」の販売比率は85%から90%に上昇し、モジュール基板販売比率も15%から25%に上昇するため、販売単価は若干上昇する。売上高としては前期比13億円減の約32億円※となる見通しだ。また、メモリモジュールやその他周辺LSIについては、市場全体の縮小の影響により同8億円減の約29億円※を見込み、組込み機器向けグラフィックスLSIやその他製品については横ばいで計画している。

※決算説明会資料よりフィスコ推定


営業利益が大きく悪化するのは、売上減による売上総利益の減少に加えて、研究開発費の増加が要因だ。売上総利益は前期比31.6%減の2,150百万円、売上総利益率は遊技機器向けグラフィックスLSIの売上構成比低下(55%→50%)に伴い前期比3.0ポイント低下の34.1%を見込んでいる。また、研究開発費は「AG6」の最終テスト費用を上期に計上することにより、前期比28.9%増の2,750百万円に増加する見込みとなっている。このため、半期ベースでは研究開発費が増加する上期の営業損失額が大きくなる。下期については売上高も上向きに転じることから、営業利益は黒字に転じるものと予想される。


遊技機器市場向けはグラフィックスLSIのシェア拡大と、1台当たり収益のアップにより今後も成長が可能
2. 今後の事業展開の基本方針
同社は今後の事業展開について、主力の遊技機器市場については2020年3月期以降170万台の市場規模を前提に、次世代グラフィックスLSI「AG6」の投入による市場シェア拡大やモジュール基板ビジネスへの移行、その他周辺LSIの拡充により、機器1台当たりの収益を拡大していくことで、市場全体が伸びなくても安定的な成長を目指していく戦略となっている。

また、組み込み機器向けグラフィックスLSIでは2016年より投入した「AG903」の産業用途での拡大を目指し、販売パートナーとのアライアンスを推進しながら、大型案件の獲得と顧客数の拡大を目指していく。ターゲットは医療機器や製造装置、車両設備、計測器、アミューズメントホール等になる。

その他、エスディーテックやザインエレクトロニクス<6769>、ティアフォーなど協業先とのビジネスも強化していく方針となっている。エスディーテックは主に自動車のHMI(ヒューマンインターフェース)分野におけるデザインエンジニアリングや車載機器向けソフトウェア製品を開発するベンチャーで、協業実績としてはカラオケ店舗の選曲リモコン端末の開発において、同社のムービーコーデック技術が採用された。現在は車載向けに同社のミドルウェア製品「H2MD」※の採用拡大が期待されている。

※ブラウザで動画を再生できる動画コーデックライブラリで、複数動画の同時再生や透過レイヤー(動画の重ね合わせ)制御が可能なこと、CPUの負荷が少ないこと等が特徴となっている。


また、2016年4月に業務提携したザインエレクトロニクスとは、車載機器や事務機器向けの半導体に関して、両社の知見を生かした共同開発プロジェクトが検討されている。ザインエレクトロニクスは、ディスプレイとCPUの間の送受信用LSIに強みを持っており、種類は異なるもののディスプレイ周辺LSIを展開していることに変わりはなく、今後のシナジーが期待される。

そのほか、2018年3月に出資したティアフォーとは、自動運転関連でのシステムLSIの共同研究を行っている。ティアフォーが開発した基本ソフト「Autoware」をベースに自動運転を効率的に制御する半導体の設計・開発を進めている。高齢化が進行する中山間地域における自動運転サービスの実証実験が2017年以降、各地で進められているが、同社も2018年末を目標にプロトタイプを開発し、実証実験の参加を目指している。

同社ではこれらの取り組みを進めていくことで収益を回復させ、後述する新規事業を育成していくことで、成長を加速させていく戦略となっている。業績のイメージとしては新規事業の効果を除いたベースで、2020年3月期に2018年3月期並みの収益水準まで戻し、2021年3月期は遊技機器向けグラフィックスLSIの売上拡大によって、営業利益で10億円近くまで回復する見込みとなっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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