コスモ・バイオ Research Memo(9):自社ブランド製品・サービスを強化して高収益化目指す
1. 新中期経営計画で事業基盤強化に取り組み
2017年12月期からの取り組みとして3ヶ年の新中期経営計画(2017年12月期−2019年12月期)を策定した。ビジョンを「生命科学の研究者に信頼される事業価値を高める」として、基本戦略に既存事業基盤の強化、新たな事業基盤の創出、企業価値の向上を掲げている。
既存事業基盤の強化では、高付加価値の自社ブランド製品・サービスの販売を強化する。新たな事業基盤の創出では、従来とは異なる成長分野を積極的に開拓し、事業基盤の拡張に取り組む方針だ。
2. 2017年10月開設の札幌事業所で自社ブランド製品・サービスの開発強化
既存事業基盤の強化では、商社機能(製品情報の即時発信などの情報力、特長のある製品・サービスを導入する製品力、課題解決型営業やユーザー密着営業などの提案力)及びメーカー機能(自社製品・サービスの開発力)を一段と強化している。
商社としての営業活動強化では、2016年12月期に複数の大手仕入先との契約が終了した影響を取り戻すべく、営業体制変更による業務効率化、代替品への切り替え営業、Web抗体百科のリニューアル、海外販売の拡大、2017年4月から本格活動開始した米国PGIとの合弁会社プロテインテック・ジャパンの販促強化、利益率の高い製品・サービスの導入・拡販などを推進している。なお商品検索システムを2018年12月期中にリニューアル予定である。
メーカーとしての開発力強化では、2017年10月札幌事業所を開設・稼働した。従来の初代培養細胞(プライマリーセル)製造事業、2016年12月開始したペプチド合成・抗体作製受託サービス事業、2017年8月開始した鶏卵を用いたゲノム編集技術によるタンパク質製造に加えて、更なる自社ブランド製品・サービスの開発を強化する。
3. ペプチド合成・抗体作製受託サービス事業は2019年12月期から利益貢献見通し
2016年12月開始したペプチド合成・抗体作製受託サービスは、当初目標を超える売上げを達成しており、2019年12月期から利益貢献の見通しとしている。
更なる売上拡大に向けて、2017年12月には(株)Proteomedix Frontiers(宮城県仙台市、以下PF)と業務提携した。同社の既存のAQUAグレードペプチド合成サービスに、PFのAQUAペプチドデザイン技術を加えて、AQUAペプチドの配列デザインから合成までの一貫サービスを2018年春から開始する。またペプチド合成装置を活用して、将来的には医薬原体等の製造につなげたいとしている。
4. ヒトインターフェロンβタンパク質は2018年12月期下期から販売開始予定
2017年8月には、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)及び国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)より、ヒトインターフェロンβタンパク質の製造に関する特許実施許諾を受ける契約を締結した。
産総研、農研機構、同社は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の平成28年度「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」に採択された「鶏卵バイオリアクターを用いた組換えヒトサイトカイン試薬製造」というテーマで研究開発を行っている。特許実施許諾を受け、鶏卵をバイオリアクターとしたゲノム編集技術によるタンパク質製造でヒトインターフェロンβタンパク質の製造方法を確立し、2018年下期から研究用試薬として販売開始する予定だ。
5. エクソソーム研究分野の自社ブランド製品発売開始
2016年7月には、塩野義製薬<4507>が所有するエクソソーム検出用モノクローナル抗体の特許権、並びに関連する抗体製品の製造・販売権に関する特許権譲受契約を締結した。
エクソソームは脂質二重膜で形成される直径40nm~150nm程度の小胞である。ヒトを始めとする多くの生物では唾液、血液、尿、母乳等の体液中に存在している。細胞から細胞外に分泌され、血液などを介して遠く離れた細胞まで情報を伝達する。
特許権を譲り受けた本抗体は、簡便に高純度のエクソソームを単離することができ、エクソソーム研究に不可欠とされている。本抗体を自社製造することで、安定的な抗体の供給、エクソソーム研究に必要な新規試薬の開発を積極推進する。
エクソソームの利用方法としては、エクソソーム内に治療用薬剤を搭載して標的細胞や臓器に薬剤を届けるDDSツールとしての応用が期待されている。また近年、エクソソームの中に含まれているマイクロRNAが新たなバイオマーカーとして注目され、病気の診断を簡単かつ確実に行える技術の研究・開発が進んでいる。
そしてエクソソーム研究分野の自社ブランド製品として、2017年8月にウシミルクエクソソーム、2017年12月にELISA・抗体シリーズを発売した。
6. 周辺機器の開発・販売も強化
周辺機器の拡販や、顧客ニーズを捉えた新規受託サービスの導入も強化している。
周辺機器では2017年10月に「HIENAIマット」をリニューアルして発売した。新規受託サービスは2017年に40種類以上を導入し、2017年9月には遺伝子強制発現細胞株作製サービスを導入した。
7. 企業価値向上に向けた取り組み強化
企業価値向上に向けた取り組みでは、業務の効率化、2018年から実施する人事評価制度改革による就業意欲の向上と事業の成長、リスク管理の徹底、積極的なCSR活動などを推進しており、中期的な企業価値の向上を目指すとしている。
なおCSR活動については、大学等が行う公開講座に協賛する「公開講座応援団」、米国マサチューセッツ工科大学で毎年行われている「iGEM生物ロボットコンテスト」参加日本チームへの支援、米国科学振興協会が発行する「Science Signaling」日本語サイトの運営、食道から大腸まで子供が潜り抜けられるトンネル構造模型「消化管体験ツアー」などを行っている。
8. 高付加価値化や新規事業基盤創出で高収益化目指す
市場伸び悩みや円安環境下でも、高付加価値化や新規事業基盤創出などで高収益化を目指す方針だ。再生医療関連の市場拡大も背景として中期的に収益拡大を期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
<MW>
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