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カルナバイオ Research Memo(6):リウマチや血液がんを対象疾患としたBTK阻害剤の開発が前進


■前臨床試験に進んだBTK阻害剤

カルナバイオサイエンス<4572>の開発パイプラインの中で、2017年は2つの非共有結合型BTK阻害剤(AS-871、CB-1763)が前臨床試験へとステージアップした。それぞれ2018年は臨床試験に向けた準備を進め、2019年前半にはIND申請を行いたい考えだ。いずれもブロックバスター候補となりうるだけに、今後の開発動向が注目される。非共有結合型とは薬剤の分子がBTKなどの分子と結合した後、時間の経過とともに結合した薬剤の分子が離れるタイプのことを指す。イブルチニブのほか現在、開発が進んでいる他のBTK阻害剤のほとんどは共有結合型で一度結合すると離れないタイプの薬剤であり、同社が非共有結合型BTK阻害剤の開発に成功すれば機能面で差別化できることになり、市場価値も上昇することが予想される。

1. AS-871
AS-871は免疫炎症疾患(リウマチなど)を対象に開発を進めている。その特徴は非共有結合型であること、高いキナーゼ選択性を持ち副作用リスクが低いこと、関節炎マウスモデルで高い治療効果が得られており、難病にも指定されている全身性エリテマトーデス※モデルでも効果が確認されていること、などが挙げられる。

※ なんらかの原因によって種々の自己抗体を産生し、それによる全身性の炎症性臓器障害を起こす疾患で、自己免疫疾患の中では最も難病とされている。


同社が公表しているキナーゼ選択性プロファイルを見ると、イブルチニブが多くのキナーゼを阻害するのに対して、AS-871はBTK以外では2種類とわずかなキナーゼを阻害するにとどまっており、副作用リスクが圧倒的に低いことがわかる。副作用が強いイブルチニブは、リウマチ治療薬としては使用されていない。

また、関節炎マウスモデルを使った試験では、溶媒群が投与後も関節炎スコアが高水準を維持したままだったのに対して、AS-871投与群は関節炎スコアが低下しており、溶媒群との比較においては半分以下の数値まで低減する結果が得られている。既存薬との比較データはないものの、試験を担当したCROによれば、薬効は極めて高いとの評価を受けている。リウマチ用治療薬では、抗体医薬品でヒュミラなど数種類が、低分子治療薬ではトファシチニブ(JAK阻害薬、製造販売元:ファイザー)が販売されている。抗体医薬品に関しては、薬価が高いことや、月に1~2回の注射投与となるため患者は通院する必要があり、患者負担が経済的・身体的に重たいのが課題となっている。一方、トファシチニブは薬効が高いものの副作用も強いため、現在はヒュミラなどの抗体医薬品が効かない患者にしか使用されていない。このため、副作用の少ない安全な低分子治療薬の開発が望まれている。リウマチなどの免疫炎症治療薬としては世界で約2兆円の市場規模があることから、AS-871の開発に成功すればブロックバスターに育つ可能性がある。

同社では2017年12月期第2四半期より欧州で前臨床試験を開始しており、2018年12月期は臨床試験に向けたGLP毒性試験などを実施し、2019年前半にもIND申請を行う予定にしている。また、第1相臨床試験は米国で実施する可能性が高いと考えられる。導出先候補企業の多くが米国企業であり、市場も大きいためだ。

2. CB-1763
CB-1763は血液がんを対象に開発を進めている。その特長は、非共有結合型であること、高いキナーゼ選択性があり副作用リスクが低いこと、イブルチニブ耐性BTK(C481S変異型BTK)にも強い阻害活性を示すこと、リンパ腫モデルで強力な抗腫瘍効果が確認されていること、などが挙げられる。

血液がん治療薬として、BTK阻害薬ではイブルチニブが既に販売されているが、最近の臨床研究から、一部の患者ではイブルチニブを投与し続けると、BTKに変異が生じてイブルチニブ耐性となり、治療効果が低下するとの報告が成されている。イブルチニブは野生型BTKに共有結合してその働きを阻害するが、何らかの原因によりBTKが変異(C481変異型BTK)し、イブルチニブ耐性がつくことで阻害作用が弱くなり、血液がん細胞が増殖するという。同社が開発するCB-1763は非共有結合型で、野生型及びC481変異BTKのいずれに対しても強力な阻害作用があることが確認されている。また、キナーゼ選択性に関してもイブルチニブと比較して影響を受けるキナーゼの種類が格段に少なく、副作用リスクも低いことが想定される。このようにCB-1763は既存薬と比較して複数の優位性を持つことから、次世代型BTK阻害薬として注目されている。

血液がんの治療薬としては、抗体医薬品としてリツキシマブ(商品名:リツキサン、開発元:バイオジェン)があり、2016年の売上規模は約8,000億円、BTK阻害薬のイブルチニブで約2,400億円ある。CB-1763はイブルチニブ耐性BTKにも強い阻害作用があることから、開発に成功すればブロックバスターに育つ可能性は十分あると言える。

さらに、CB-1763はリウマチへの効果も確認できており、今後の疾患領域の拡大も期待される化合物である。

同社では2018年1月より欧州で前臨床試験を開始しており、2018年は医薬原体(化合物の決勝)を決定し、製造プロセスの確立及びKgスケールでの合成を実施し、2019年前半のIND申請を目指している。AS-871と同様、米国で臨床試験を行う可能性が高い。

なお、両品目とも前期第2相臨床試験の試験までは自社で開発を進め、市場価値を高めてから導出を目指す方針だが、条件に適う相手先が見つかればそれを待たずに導出する可能性もある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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