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アンジェス Research Memo(2):大阪大学発のバイオベンチャーで、遺伝子医薬に特化した開発を進める


■会社概要

1. 会社沿革
アンジェス<4563>は1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。HGF遺伝子(肝細胞増殖因子)の投与による血管新生作用の研究成果を事業化することを目的に設立された。

HGF遺伝子治療薬では2001年に第一製薬(株)(現、第一三共<4568>)と独占的販売権許諾契約を結んだが、その後提携関係を解消しており、代わりに田辺三菱製薬と2012年に米国市場、2015年に国内市場で末梢性血管疾患を対象とした独占的販売権許諾契約を締結し、上市に向けた開発を進めている。

もう1つの主力開発品である核酸医薬品のNF-κBデコイオリゴは、アトピー性皮膚炎(顔面で中等症以上の患者が対象)治療薬として開発を進め、2005年にアルフレッサファーマ(株)と共同開発契約を締結したが、開発方針の転換により2008年に共同開発契約を終了。2010年に塩野義製薬<4507>と独占販売権許諾契約を締結した。2016年7月に臨床試験の結果で主要評価項目においてプラセボ群に対する統計的有意差が得られなかったため、今後の開発方針を検証しているところである。

また、2016年には第3のパイプラインとして開発を進めているDNAワクチン領域において、開発実績や製造ノウハウを持つ米国のVicalに追加出資を行うとともに戦略的事業提携を締結し、2017年4月には慢性B型肝炎を対象とした遺伝子治療薬の共同開発を行う契約を締結している。

このほか、導入品として希少疾病であるムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム」の国内販売権を、米バイオマリンファーマシューティカル(以下、バイオマリン)から2006年に取得し、2008年より販売を開始しているほか、2013年に韓国バイオリーダースから導入したCIN治療ワクチンについては、2016年12月に森下仁丹<4524>に独占的開発・製造・販売権の再許諾を行う契約を締結している。

連結子会社は海外に2社あり、米国子会社はHGF遺伝子治療薬の開発拠点として、英国子会社は欧州地域における情報収集やライセンス活動の拠点として事業活動を行っている。ただ、いずれも規模は小さく連結業績に与える影響は軽微となっている。なお、同社は2017年7月より会社名をアンジェスMG株式会社からアンジェス株式会社に変更している。

2. 事業の特徴とビジネスモデル
同社の事業の特徴は、遺伝子の働きを活用した医薬品である遺伝子治療薬、核酸医薬、そしてDNAワクチンを遺伝子医薬として定義し、その研究開発に特化していることにある。開発の対象疾患は、社会的な使命であると同時に確実な需要が存在する「難治性疾患」や「有効な治療法がない疾患」としている。また、自社開発品以外にもこうした事業方針と合致する開発候補品を海外のベンチャーや大学等の研究機関から導入し、開発パイプラインの強化とリスク分散を行っている。

同社は研究開発に特化しており、原薬の製造は外部の専門機関に委託している。また、販売についても開発品や地域ごとに大手製薬企業と販売権許諾契約を締結し、上市後も自社販売は行わないことを基本戦略とする。このため連結従業員数は、2017年6月末時点で57名と小規模となっている。なお、現在販売している商品は、バイオマリンから導入しているナグラザイムのみで、自社開発品の上市実績はまだない。

同社のビジネスモデルは、遺伝子医薬の開発を行い、開発の過程で販売権許諾契約(または共同開発・販売権許諾契約)をパートナー企業と締結することで得られる契約一時金収入、開発の進捗に応じて得られるマイルストーン収入及び上市後の製品売上高に対して一定料率で発生するロイヤリティ収入で収益を獲得していくモデルとなる。臨床試験の規模や期間は対象疾患等によって異なるが、第1相から第3相試験までおよそ3~7年程度かかると言われている。臨床試験の結果が良ければ、規制当局に製造販売の承認申請を行い、おおむね1~2年の審査期間を経て問題がなければ承認、上市といった流れとなる。

現在は開発ステージのため収益も損失が続いているが、開発品が上市されれば利益化も視野に入ってくる。特に主要開発パイプラインであるHGF遺伝子治療薬やNF-κBデコイオリゴについては、自社主導の開発と先行投資を行っているため、ロイヤリティ料率も一般的な水準より高く設定されており、上市後の収益へのインパクトも大きくなることが予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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