アジア投資 Research Memo(1):メガソーラープロジェクトの収益貢献により大幅な増収増益
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、主力のプライベートエクイティ投資や再生可能エネルギー投資を手掛けている。1981年に経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は23,299百万円(15ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投資残高は19,089百万円となっている(2017年9月末現在)。
2018年3月期上期の業績(ファンド連結基準)※は、営業収益が前年同期比165.7%増の5,062百万円、営業利益が同237.4%増の582百万円と大幅な増収増益(最終黒字転換)となった。
※同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。
また、従来連結基準でも、営業収益が前年同期比54.4%増の2,547百万円、営業利益が同232.0%増の714百万円と大幅な増収増益(最終黒字転換)を実現し、順調な進捗となっている。プライベートエクイティ投資事業(以下、PE投資事業)が前期のような大型売却案件(株式売却)がなかったことなどにより下振れたものの、メガソーラープロジェクトによる収益貢献(売却益及び売電収益等)が大幅な増収増益に寄与した。また、事業承継型バイアウトファンド(10億円)を新設したほか、メガソーラープロジェクトを含む17件(2,166百万円)の投資実行により、投資残高も19,089百万円(前期末比15.3%増)とプラスに転じている。
2018年3月期の業績予想については、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2018年3月期については、ある一定の前提を元に策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示しており、営業収益を前期比19.7%増の4,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同15.1%減の470百万円と見込んでいる(期初の見込値を据え置き)。下期においても、ファンド報酬や株式売却の下振れが想定されるものの、メガソーラープロジェクトによる収益貢献(売却益を含む)でカバーし、3期連続で最終黒字を確保する計画である。なお、上期業績が好調であったにもかかわらず、期初の見込値を据え置いたのは、PE投資事業における下振れのリスクを慎重にみていることや、メガソーラープロジェクトの売却についても、タイミングを含めて柔軟なスタンスをとっていることが理由と考えられる。弊社でも、上期の進捗率等から判断して、同社の見込値の達成は十分に可能であると判断しており、上振れの可能性にも注意が必要である。
同社は、再建期を抜け、収益拡大期に転換したことを契機として、2017年6月から新体制に移行(社長交代)した。ただし、目指す方向性に大きな変更はない。今後の収益ドライバーとして、1)PE投資事業の拡大(投資領域の拡大を含む)、2)再生可能エネルギー投資事業の拡大、3)第3の収益柱となる新規投資事業の立ち上げに注力し、引き続き、安定的な収益構造と健全な財務バランスの確立を目指していく。特に、基幹事業であるPE投資事業については、ファンド設立により投資資金を確保し、投資残高を拡大する一方、財務リスクの抑制(同社の出資持分の残高は圧縮)を図る方針である。
弊社では、これまで課題となっていた財務体質の改善に目処がついたことや、安定収益の確保を目的として取り組んできたメガソーラー事業投資についても継続的な事業拡大が見込めることから、これからの運用資産拡大に向けた動きに注目している。同社の強みを生かしたベンチャー投資を始め、第3 の収益柱となる新規投資事業の立ち上げ(市場拡大が予想されている高齢者施設への投資等)、First Eastern グループとの連携による事業展開などもフォローしていきたい。
■Key Points
・2018年3月期上期はメガソーラープロジェクトの収益貢献により大幅な増収増益を実現
・ファンド新設や売電プロジェクトの進展などでも一定の成果
・2018年3月期業績については、期初の見込値を据え置き、3期連続の最終黒字を見込む
・今後も運用資産拡大に向けた同社ならではの活動とその成果に注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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