大同工業 Research Memo(5):第11次中期経営計画策定に向け、電気自動車対応やASEAN市場へ拡大を目指す
大同工業<6373>は、3年ごとに中期経営計画を策定し、第10次中期経営計画を実行している。現在の計画は2018年3月期を最終年度とするものであり、売上高の目標を55,000百万円としていたものの、今期の見通しは46,900百万円で大きくかい離してしまう。こうした反省に基づき、次期となる第11次中期経営計画においては、長期的な展望を描きながらも、向こう3ヵ年の中期計画の数値目標の精度向上を念頭に、次期中期経営計画の策定を進めている。
売上高目標は届きそうにないものの、海外を重視するという方向性は間違っていなかったと会社側では総括している。海外比率を50%以上に引き上げることを指向していたが、第10次の期間中に達成。前述したように日本のバイク完成車メーカーは海外に生産をシフトしており、今後も海外に重きを置く考えだ。
今後の課題、展望として、製品分野別と地域別、それぞれについて見ていく。
1. 製品分野別
(1) 四輪事業は電気自動車への対応が課題
四輪事業は、将来的にビジネスに大きな変動がありそうなだけに、変革が必要な分野と言える。具体的には、電気自動車の進展に合わせた対応だ。
同社の四輪事業は、ガソリン車やディーゼル車など、チェーンを使用する自動車であるのは言うまでもない。つまり、電気自動車では必要のない分野だ。先行き、電気自動車へのシフトが進んだ場合、同社が手掛ける事業が縮小することは想像に難くない。次世代自動車向け製品の積極的な開発が急務の課題だ。2017年7月に業務・資本提携した(株)スギムラ精工の技術が生かされることになる。
電気自動車については、共同開発事業に参画、効率的な研究開発を行い、新たな事業基盤を確立させる考えだ。
一方、同社の自動車エンジン用チェーンにおける世界シェアは約8%。高効率且つ高精度なエンジン用チェーンシステムの展開、海外生産拠点での一貫生産の強化・拡大、新興国生産拠点での現地調達化と品質安定などにより、グローバル競争力を強化し、シェア向上を図っていく。
とりわけ、四輪事業でカギとなるのは、北米自動車市場への本格参入だ。北米では自動車市場が急速に回復するなかで、自動車メーカー各社も事業拡大を目指しており、同社は一貫生産を推進することで、北米でのビジネス拡大を目指す。
(2) 二輪事業ではASEANでの拡大目指す
二輪事業は、ASEAN地域、インドでの取り組み強化が急がれる。バイクの市場動向を見ると、インドとインドネシアでは経済成長により、普及が拡大する一方、タイとベトナムでは、マーケットは成熟しながらも、買い替え・補修需要が続いている状況だ。また、新拠点が置かれるマレーシアやフィリピンでは、現地に拠点があることの利を活かした一貫サービスの展開により他社シェアの奪還を目論むなど、国の状況に合わせたビジネスを進めていく。
同社の二輪事業におけるシェアを見ると、ドライブチェーンがASEANで47.3%、インドで13.8%、カムチェーンがASEANで64.5%、インドで21.4%とインドが相対的に弱い。インドは、現地の品質に合わせると、生産コストが折り合わなくなるため、これが苦戦の要因となるが、マーケットが巨大かつ潜在成長力も大きいため、インドでの取り組みがポイントになるだろう。いずれにしても、バイクはアジアで生活必需品として位置付けられているだけに、ここでの二輪事業の拡大が今後の同社の成長を支えていくとみられる。
(3) 産業機械事業は新たな業種への参入を目指す
産業機械事業では、新たな業種への参入に取り組んでいる。特殊な環境下で、高性能・高品質の製品需要が見込まれる業種として、食品、不織布、物流、窯業、化学、包装の6業種を同社は挙げているが、このうち、不織布では紙おむつのラインに、窯業では自動車向けガラスの焼付けに、物流ではエスカレーター搬送向けや1本のチェーンで押し引きが可能なものなど新たに開発したチェーンを順次投入。さらに、食品、化学、包装の業種向けとしては、油や粉塵、騒音が抑えられるエコロジーな樹脂製チェーンと吸引(バキューム)システムを融合させ、新製品の軽量搬送システム「エコキューム(EcoCuum)」を開発・発表するなど、今後もいろいろなジャンルにおいて市場開拓と受注獲得を目指していく。
階段昇降機をメインとする福祉機器の内、「車いす用の階段昇降機」は、首都圏をはじめとする地下鉄の駅などでリニューアル需要が生じてくるため、そこでコンスタントにビジネスを進めていく。家庭用の「いす式階段昇降機」は、超高齢社会に対応するためのバリアフリー化によって製品そのものに対するニーズはあり、代理店を通じて広げていく。
2. 地域別
地域別の課題に対しては、各拠点における事業の状況や市場動向を踏まえ、適宜見直しと新規進出を行っている。このうち、アジアについては、2017年7月に新たな拠点としてマレーシアでの営業活動を開始した。また、同年11月末にはフィリピンにも新生産拠点を設立する予定だ。販売網の構築と補修市場の開拓を急ぎ、ASEAN地域における新たな市場に食い込む考え。さらに、2017年12月には、ベトナムでバイク用チェーンの組立生産を開始する計画を推進中。ベトナムは今後もバイク市場は堅調に推移するとみられ、拠点を強化する意味は大きい。
同時に、地域別では北米、欧州、南米についても各国で展開しているビジネスの状況に応じた取り組みを展開している。北米では、工場増設、自動車エンジン用チェーンの一貫生産推進などにより、回復している自動車マーケットの波に乗る。イタリアでは、産業用チェーンの拡販、バイク完成車メーカー向けの新規受注獲得を目指し、ブラジルでは資本の見直しや一部で人員整理なども実施し、基本的な財務体質の強化に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
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