アウトソシング Research Memo(1):足元の業績は想定を上回るペースで順調に拡大
アウトソーシング<2427>は、メーカーの製造ライン向けに人材派遣及び業務請負を行う「国内製造系アウトソーシング事業」や、メーカーの研究開発部内への技術者派遣等のほかIT及び土木建築系企業等に対して技術者派遣等を行う「国内技術系アウトソーシング事業」を展開するほか、米軍基地向け事業や海外展開にも積極的に取り組んでいる。海外を含めた人材提供数(外勤社員数※1)は5.4万人を超え、技術・製造系では業界最大の規模を誇っている(2017 年6月末現在)。旺盛な人材ニーズを背景として、業界全体が好調に推移しているなかで、景気変動の影響を受けやすい事業特性からの脱却や今後の環境変化への対応を図るべく、事業構造の変革に取り組んでおり、「国内技術系アウトソーシング事業」や「国内サービス系アウトソーシング事業」、「海外事業」に注力している。また、創業以来の「国内製造系アウトソーシング事業」においても、独自の事業モデルであるPEO※2スキームによって、これまでの短期の生産調整領域から長期事業領域での人材ニーズの創出と顧客の囲い込みに取り組んでおり、同社ならではの成長戦略は順調に進展している。
※1 外勤社員とは顧客メーカーにおける現場作業従業者の総称で、稼働中の派遣契約社員も含む(同社の定義を使用)。
※2 Professional Employer Organizationの略(詳細は後述)。
2017年12月期上期の業績(IFRS)は、売上収益が前年同期比84.4%増の105,811百万円、営業利益が同50.5%増の3,562百万円と期初予想を上回る大幅な増収増益となり、売上収益、利益ともに過去最高(半期ベース)を更新した。売上収益はすべての事業が順調に伸びた。特に、「海外事業」において、前期にM&Aした豪州、英国、マレーシアの各企業が期初から寄与したことや、当期にM&Aした欧州(ドイツ)企業が新たに上乗せされたことが増収に大きく寄与した。また、「国内技術系アウトソーシング事業」や「国内製造系アウトソーシング事業」も独自の人材育成カリキュラムやPEOスキームの活用等により伸長したほか、「国内サービス系アウトソーシング」は国内米軍基地向けの事業が順調に拡大している。利益面でも、グループガバナンス体制の強化や需要拡大に向けた先行投資がコスト要因になったものの、増収効果や顧客単価の値上げ等により大幅な増益を実現した。
2017年12月期(通期)の業績予想について同社は、期初予想を据え置き、売上収益を前期比58.6%増の213,000百万円、営業利益を同70.8%増の9,500百万円と見込んでいる。ただ、当期は「次の飛躍に向けた戦略的踊り場」と位置付けており、大規模な追加的M&Aは予定していない。オーガニックな成長と既に実施済みのM&Aが業績の伸びに寄与する想定となっている。グループガバナンス体制の強化及びシナジー創出に注力し、投資回収期間の短縮や財務基盤の強化に取り組む方針である。
同社は、2020年12月期を最終年度とする中期経営計画を推進している。国内では成長性及び付加価値が高く、人材不足が課題となっているIT及び土木建築分野(技術系)や参入障壁の高い米軍基地向け(サービス系)、海外では公的サービスの民間委託分野などを大きく伸ばす方針である。2020年12月期の目標として、売上収益を4,410億円(4年間の平均成長率は年34.6%)、EBITDAを344億円(同47.8%)と意欲的な水準を掲げている。特に、海外事業においては、引き続き、M&Aを重要な成長戦略の軸に据える方針である。
弊社では、外部要因(派遣ニーズの拡大、業界淘汰の動き、先進各国における公的サービスの民間委託分野の拡大等)及び内部要因(事業構造の変革、事業領域の拡大、PEOスキームなど独自戦略の進展等)の両方が同社にとってポジティブな状況にあることから、2017年12月期の業績予想を含め、中期経営計画の達成は十分に可能であるとみている。また、相次ぐ大型M&Aにより財務内容が大きく変化しており、有利子負債の拡大やのれんに対する減損リスクを懸念する見方もできるが、弊社では、同社のM&Aは各国政府や米軍基地向けのアウトソーシング分野など、固定資産を保有せず、キャッシュ・フローが安定的にプラスとなっている企業を対象としており、回収期間が短く、景気変動の影響を受けにくいことから、財務リスクは小さいものと分析している。また、足元ではM&Aした企業のPMI(買収後の業績向上)が順調に進んでいるほか、メーカーからの需要が大きいPEOスキームもいよいよ本格的に稼働を開始したことから、業績が上振れる可能性にも注意が必要である。
■Key Points
・2017年12月期上期業績は期初予想を上回る大幅な増収増益を実現
・M&Aした各企業の業績寄与(買収後の業績向上を含む)により海外事業が拡大
・「2018年問題」を目前に控えて、PEOスキームも5月から本格的な稼働を開始
・「次の飛躍に向けた戦略的踊り場」と位置付けた2017年12月期(通期)も増収増益を継続する見通し
・グループガバナンス体制の強化やシナジー創出、財務基盤の強化に取り組む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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