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カルナバイオ Research Memo(4):2015年に導出したBTKキナーゼ阻害薬は契約終了するも、自社開発を継続


■業績動向

(2) 創薬事業
創薬事業の売上高は前期比83.9%減の98百万円、営業損失は616百万円(前期は60百万円の利益)となった。売上高は米シエラへのCDC7キナーゼ阻害薬のグローバルライセンス契約締結に伴う契約一時金収入によるものとなっている。前期は米ヤンセン・バイオテックからBTKキナーゼ阻害薬のライセンス契約一時金収入を614百万円計上したため、前期比では減収となっている。また、利益面では開発パイプラインの研究開発などの先行投資を継続して行っていることを要因に損失を計上した。

なお、米ヤンセン・バイオテックと2015年6月に締結したライセンス契約については、2016年8月に相手先の戦略の理由により終了している。ヤンセン・バイオテックでリウマチ治療薬として開発すべく、前臨床試験を進めていたが、カルナバイオサイエンス<4572>が開発した化合物はそのままでは溶けにくいという課題があり、この課題を解決するのに1年ほど時間を要すると考えられたこと、その間に競合の独Merkが同じBTKキナーゼを標的とする治療薬候補の第1相臨床試験を2016年初め頃に開始したこと、ヤンセン・バイオテックが第1相臨床試験を開始するのは2019年頃となりそうで、競合よりも医薬品の上市が数年遅れを取ってしまう可能性があったこと等が、戦略変更を余儀なくされた理由となっている。

ただ、同社では今後、戻ってきた化合物について自社で残りの前臨床試験を実施した上で、他の製薬企業へ導出活動を進めていく予定となっている。上記の溶けにくいという課題は解決されている模様であるが、医薬品基準に基づく前臨床試験を開始するに必要な化合物の大量合成に半年程度の時間を要するため、本試験の開始は2018年以降となることが予想される。他社で現在先行する医薬品候補化合物があるものの、リウマチ治療薬の市場は抗体医薬品(4~5品目)で約2兆円の市場規模がある巨大マーケットであり、経口薬で薬効が同程度の治療薬を開発できれば、後発であっても十分な市場規模があると考えられるし、先発品の開発方針変更により同社の化合物が先行する可能性もある。

一方、CDC7キナーゼ阻害薬については、同社が前臨床試験を実施してきたが、導出後の現在はシエラで開発を進めている。CDC7キナーゼ阻害薬は細胞周期に関する薬剤であることから、多くのがん腫で治療効果があると見られるが、シエラがどのがん腫で開発を進めていくかは未定となっている。ただ、難治性がんである膵臓がんやトリプルネガティブ乳がんなどでも有効との研究報告があること、難治性がん領域においてブレークスルー・セラピーとして認定されれば、上市までの期間が臨床試験の開始から最短で3年程度と早期に実現可能となること等から、同領域で開発を進めていく可能性が高いと弊社では見ている。なお、シエラでは同社からCDC7阻害薬を導入した後、CHK1キナーゼ阻害薬を他社から導入して第1相臨床試験を進めており、両薬剤はDDR(DNA Damage Response)領域を標的としていることからの相乗効果も期待できると考えられている。

今回の契約では、CDC7阻害薬プログラムの進捗に伴うマイルストーン収入総額で270百万ドルとなっており、上市後の売上高に対するロイヤリティ率は1ケタ台後半のパーセンテージと見られる。2017年に米国で第1相臨床試験を開始する計画とシエラでは公表しており、同社には440百万円のマイルスストーン収入が入る見込みとなっている。なお、CDC7キナーゼ阻害薬としては武田薬品工業<4502>が固形がんを対象疾患とした第1相臨床試験を開始しており先行しているもようだ。

CDC7キナーゼ阻害薬のメカニズムとしては、細胞分裂する際に重要なDNA複製等の染色体サイクルにおいて、その制御に深く関与しているCDC7キナーゼを阻害することで、がん細胞におけるゲノムの不安定化を引き起こし、がん細胞を死滅させるというもの。正常細胞については影響を受けないため、副作用のリスクも低いと見られている。シエラでは、DDRに関与するキナーゼ阻害薬の開発にターゲットを絞っており、CHK1キナーゼ阻害薬とCDC7キナーゼ阻害薬を併用することで、抗がん剤としての治療効果がより高められるものと考えているようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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