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RIZAPーG Research Memo(10):過去のM&Aでは圧倒的な投資リターンを実現


■中長期の成長戦略

5. M&A及びシナジー強化による成長戦略
(1) RIZAPグループ<2928>のM&A戦略の本質と実績
会社概要の項で述べたように同社はM&Aの積極活用で成長を遂げてきた。同社のM&A戦略について、弊社では2つの点で評価している。1つはM&Aにおける高い投資リターンの実現であり、もう1つは各子会社の収益改善(黒字転換も含む)だ。この両者は表裏一体の関係でもあると同時に、因果関係となっている。同社はこの両者の因果関係を正の循環(ポジティブ・スパイラル)の関係へと発展させる実績を積み上げてきた。この点が同社のM&A戦略の最大の強みと言える。

高い投資リターンの実現は上場企業において特に顕著だ。同社は2017年3月31日子会社化予定のぱども含めると、合計で7社の上場企業を子会社化してきた。その合計投資額は約8,420百万円だ。それに対して3月9日終値ベースの7社合計の評価益は18,510百万円(投資額と合わせた時価総額26,930百万円)となっており、投資リターンは実に3.2倍に達している。

この高いリターンを実現できた背景には、ただ安く企業を買えたからという評価をする向きもあろうが、重要なことはなぜ同社が安く買えたかにあると弊社では考えている。弊社では、RIZAPのブランド力を生かしたシナジー効果や同社の広告宣伝のノウハウの活用によって、過去に子会社化された企業が順調に業績を回復させているというトラックレコード(過去実績)が、同社の交渉力強化につながり、割安価格での買収につながっていると考えている。

各子会社の収益改善状況について、上場子会社については開示情報からそれを知ることができる。非上場子会社についても、2017年3月期第3四半期から同社が主要子会社の損益状況の概況を開示するようになったことで、方向性(赤字か黒字か、増益か減益か)についてはわかるようになった。それによると、直近の2017年3月期第3四半期単独期間においては、マルコとSDエンターテイメントが営業赤字となっているのみで、他社は黒字を達成しているだけでなく、かなりの企業が増益をも達成している。

詳細は後述するが、2017年3月期第3四半期累計期間の先行投資及び赤字事業の営業損失等の合計(すなわち、赤字のグロス値)は1,650百万円と前年同期の263百万円から大幅に拡大した。第4四半期にはジーンズメイトやぱども加わるため、損失額合計は2,000百万円前後に膨らむことが予想される。同社は2018年3月期には前年の先行投資事業・赤字事業の多くを黒字転換させる計画で、それらの合算値をプラスに転換させる計画だ。仮にプラス額が2,000百万円とすると、前期比改善額は約4,000百万円となり、大きな増益効果をもたらすことになる。こうした先行投資事業・赤字事業のターンアラウンドこそ、同社のM&A戦略の本質だと弊社では考えている。

(2) ジーンズメイトの子会社化
同社は2017年1月にジーンズメイトの株式を公開買付及び第三者割当増資で取得し子会社化することを発表した。2017年2月20日に予定どおりに払い込みを完了して株式の63.99%を取得した。

同社はこれまでも複数のアパレル企業を子会社化して収益改善に成功してきている。ジーンズメイトについても、これまでの経験則を生かして、過去のM&A事例以上のスピード感で収益のV字回復が実現できるとみている。

同社が掲げるジーンズメイトの施策は以下のとおりだ。リブランディング、商品力強化、販売力強化、業務再構築の4つの施策を柱に、店舗改革(店舗デザインや取扱商品、陳列方法の見直しなど)や外部コンサルタント導入によるマネジメント改革などの施策に着手している。新型店舗では既に効果が出ているもようで、今後の全店展開が待たれる。

(3)ぱどの子会社化
同社は2017年2月に、フリーペーパー発行部数No.1を誇るぱどの株式を第三者割当増資で取得し、3月31日付で子会社化することを発表した。同時にまた、ぱどを中核企業としてグループ企業の日本文芸社や北斗印刷、RIZAPメディアマーケティング部門を集約してメディア事業グループを形成し、メディア事業に本格進出する計画を公表している。これが実現したのちは同社は4事業セグメント体制から5事業セグメント体制に移行するとみられる。

ぱどの主要事業であるフリーペーパー・フリーマガジン市場では、ターゲットの多様化・細分化に合わせて媒体の多様化と媒体数の増加が進捗している。加えて、インターネット広告との競合も年々激化し、事業環境は厳しい状況が続いている。

一方、ぱどにはフリーペーパー発行部数No.1という事績以外にも、フリーペーパーのほうが新聞折り込み広告に比べて費用と効果の両面で優位性があることや、ぱど読者層の80%が20代~40代でRIZAPのメインターゲット層と重なること、ぱどが対象別に複数の媒体を発行しているなかで成長が続いている媒体(例:富裕層向け媒体)が複数あること、などの特長や強みがある。

同社はぱどが有する“底力”を、同社の有するノウハウとリソースを活用して再活性化させ、早期に業績のV字回復を果たすことを目指している。具体的施策としてはグループ各社からの広告の積極投入やグループシナジーを生かした新媒体の開発、業務再構築によるコストの適正化、などが行われる見込みだ。また、ぱどに期待されているのはコスト削減による利益回復ではなくあくまでトップライングロースを伴う成長路線への転換だ。そのための中期的目標として、2021年3月期までに発行部数を現状から倍増となる2,000万部規模を目指すことも掲げられている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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