テラ Research Memo(2):第4のがん治療法であるがん免疫療法で世界トップクラスの症例実績
1. 事業概要
テラ<2191>はがん免疫療法の1つである樹状細胞ワクチン療法を中心に、医療機関に対する技術・運用ノウハウの提供、及び再生・細胞医療に関する研究開発を行う企業で、2004年に元外科医師で現代表取締役社長の矢崎雄一郎(やざきゆういちろう)氏によって設立された。2016年12月末時点で、がんや再生・細胞医療に関わる周辺事業を担う4つの連結子会社を有している。事業セグメントは細胞医療事業、医薬品事業、医療支援事業で構成されており、子会社において医薬品事業、医療支援事業を展開している。また、持分法適用関連会社として、細胞培養の研究試薬の開発販売を行う(株)バイオベルデに出資している。各事業セグメントの内容は以下のとおり。
(1) 細胞医療事業
細胞医療事業には、同社が開発する樹状細胞ワクチン療法を中心とした独自のがん治療技術・ノウハウの提供、細胞培養施設の貸与、特許実施権の許諾及び集患支援サービスが含まれる。
売上高の大半は、契約した医療機関から樹状細胞ワクチン療法の症例数に応じて得られる技術料や設備貸与料、特許使用料などからなる。医療機関との契約形態には、「基盤提携医療機関」「提携医療機関」「連携医療機関」の3タイプがある。「基盤提携医療機関」とは、同社が細胞培養施設を当該医療機関に設置・貸与し、技術・ノウハウの提供や特許使用の許諾などを行い、その対価として施設使用料、技術・ノウハウ料、権利使用料を治療数に応じて受け取る医療機関となる。「提携医療機関」とは、細胞培養施設を自身で既に整備している医療機関で、主に大学病院など大型の医療機関が対象となる。施設使用料がかからないため、1症例当たりの売上高は基盤提携医療機関より少なくなる。「連携医療機関」とは、細胞培養施設を持たず、基盤提携医療機関及び提携医療機関と連携して治療を行う医療機関となる。同社が当該医療機関に対してマーケティング・権利使用許諾などを行い、その対価をコンサルティング料として徴収する。樹状細胞の培養を基盤提携医療機関または提携医療機関で行うため、1症例当たりの当該医療機関から得られる売上は、培養を実施した基盤提携医療機関または提携医療機関を通じて徴収することになる。
こうした契約医療機関の数は2016年12月期末時点で39施設※となっており、北海道から沖縄に至るまでほぼ全エリアに拡大している。また、症例数としては累計で約11,010症例と樹状細胞ワクチン療法では世界でトップクラスの症例実績を積み重ねている。1症例当たりの平均売上高は90万円前後となっている。
※連携医療機関である明神町クリニック及びメディポリス東京クリニックは、閉院にともない契約を終了したため、2017年3月現在で契約医療機関は37か所
(2) 医薬品事業
医薬品事業は、膵臓がんに対する薬事承認取得に向け、2014年1月に設立した子会社のテラファーマ(株)が中心となって行う事業である。
(3) 医療支援事業
医療支援事業は、細胞加工施設の運営受託・保守管理サービス、並びに消耗品や細胞培養関連装置等の販売を行うバイオメディカ・ソリューション(株)(以下、BMS)や、イメージングCRO事業を行うタイタン(株)、遺伝子検査サービス事業を行う(株)オールジーンなど子会社の事業で構成されており、BMSが売上高の7割強を占めている。なお、従来子会社であったテラ少額短期保険(株)については事業の集中と選択を行う方針のもと、2016年8月末にコンサルティング会社の大樹ホールディングス(株)に全株式を6百万円で譲渡している。
2. 樹状細胞ワクチン療法とは
がんの治療法には一般的に、「外科療法(手術)」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線療法」と3つの標準的な治療法があり、それぞれ単独で行うか、症状に応じて複数の治療法を組み合わせながら治療を行っている。同社が提供する樹状細胞ワクチン療法は「第4のがん治療法」と言われる免疫療法の1つであり、これらの標準的な治療と組み合わせることで効果を発揮する最先端のがん治療法である。
免疫細胞療法とは患者自身の体から血液(免疫細胞)を一旦採取して、それを培養、活性化して体に戻し、悪性細胞(がん細胞)を退治していく治療法である。「樹状細胞」は免疫細胞の1つであり、体内で異物を捕食することによりその異物の特徴(抗原)を認識し、リンパ球(異物を攻撃する役割を持つT細胞等)にその特徴を覚え込ませるといった役割を担う。これにより、そのリンパ球が異物(がん細胞)を狙って攻撃することができるようになる。こうした「樹状細胞」とリンパ球の体内での役割・特徴をがん治療に生かしたものが、「樹状細胞ワクチン療法」と呼ばれるものである。同療法は同社が先駆して開発してきたが、現在は同療法を独自で開発・実施する競合企業や医療機関が増えてきている。
「樹状細胞ワクチン療法」の最大のメリットは、がん細胞を狙って攻撃し、正常細胞を傷つけないため、副作用が少ないという点にある。一方、デメリットは、保険適用外であるため治療費が全額自己負担(200~230万円/1セット)となることである。このため、現状では「手術」や「抗がん剤」療法など一般的な治療法では効果がなくなった重度のがん患者、あるいは膵臓がんのように外科的手術が難しいがん種患者の症例数が多くなっている。2016年12月末までの約11,010症例をがん種別で見ると、膵臓がんが約2割と最も多く、次いで大腸がん、肺がんが各1割強となっている。
3. 同社の強み
樹状細胞ワクチン療法を手掛ける競合が増えるなかで、同社の強みは大きく3つ挙げることができる。1つ目は、ほぼすべてのがん種に発現する「WT1」と呼ばれるたんぱく質をがん抗原とした「WT1ペプチド」の独占的通常実施権を保有しているほか、他のがん抗原「MAGE- A4ペプチド」「サーバイビンペプチド」の特許権等も保有していること、2つ目は、東京大学医科学研究所発の高品質で安定的な「細胞培養技術」を保有しており、細胞培養施設の保有・導入支援で国内トップの実績を持つこと、そして3つ目は累計症例数で1万症例を超える世界トップクラスの「臨床実績」を誇り、専門誌などでも共同研究先などから多数の論文が掲載発表されていること、などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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