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「王国」崩壊でランド高の可能性もあるか【フィスコ・コラム】


南アフリカの与党アフリカ民族会議(ANC)の党首選で、ズマ政権の「終わりの始まり」が鮮明になりました。今後は来年の総選挙に向け、ラマポーザ新党首の基盤固めが注目されます。新政権への期待から通貨ランドは上昇基調に振れましたが、2018年はどのようなチャートを描くでしょうか。


昨年12月のANCの党大会のなかで行われた党首選は、2009年に就任したズマ大統領が3選禁止の規定で出馬できず、ズマ氏の元妻であるドラミニ・ズマ前アフリカ連合(AU)委員長(68歳)とズマ路線脱却を掲げるラマポーザ副大統領(65歳)による事実上の一騎打ちとなりました。その結果、ラマポーザ氏は2440票を獲得して2261票のドラミニ氏を下し、次の大統領候補に選出されました。


投票結果が好感され、ランドは対ドルで13.50ランド台から12.50ランド台まで約7%も上昇。ラマポーザ氏が大統領に就任するには、2年後の下院選(400議席)を待たなければなりませんが、金融市場は国内の閉塞感を打ち破る材料と受け止めました。実際、ズマ政権では汚職が蔓延したほか、財政赤字の拡大で経済は停滞。大手格付け会社の格下げでマネーが流出するという負のスパイラルに陥っています。


ネルソン・マンデラ氏による黒人解放運動で国民政党としての地歩を固めたANCですが、2014年の議会選では、ズマ氏の汚職疑惑が響き249議席と、前回2009年から25議席も減らしており、対照的に反ズマを掲げた野党が躍進しました。昨年8月にズマ氏への不信任案が下院に提出された際にはANCからの造反が相次ぎ、ズマ氏に対する党内の強い不満が露呈していました。

地元メディアでは、「ズマ王国」解体の待望論が広がっているようです。公金を自宅の建築費用に充てるなどズマ氏の数多くの汚職疑惑の解明を求める声が高まっています。また、南ア国営企業と有利な契約を次々と締結し、政権との親密ぶりが取りざたされてきたインド系の富豪グプタ家の国外退去も歓迎されそうです。どれだけ腐敗が進み、希望をそぐような社会になっているのかがうかがえます。


経済の立て直しに関しては、ランド高政策への転換も1つの手段でしょう。資源国の南アにとっては通貨安の方が国内経済に恩恵をもたらすと思われがちですが、現在のランド安は輸入インフレによる物価高で国民の生活を圧迫しており、不満が高まっています。また、南ア国民の多くはランド安で海外に渡航する機会が減り、それも閉塞感につながっているようです。市場の信任が厚いゴーダン氏の財務相復帰も必須でしょう。


幸いなことに、足元の資源高は税収アップなどで財政赤字が縮小する可能性から、経済立て直しに追い風です。外為市場では、アメリカの金利正常化によるドル「1人勝ち」は終わり、南アが改めてクローズアップされる可能性もあります。ただ、ラマポーザ氏が新党首として来年の総選挙に勝利し大統領に就任するのは1年以上先です。その間にズマ氏が何か仕掛け波乱が起きないとも言い切れず、南ア情勢にはなお目が離せません。

「吉池 威」



<MT>

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