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【フィスコ・コラム】エジプト旅行はいかが?


エジプト航空による東京-カイロ線の運航再開が、旅行好きの人たちの間で話題になっています。2010年代に入り中東に波及した反政府運動「アラブの春」以降、低迷が続くエジプト経済にとって、海外からの旅行者の掘り起こしは重要施策です。日本人旅行者のテコ入れは、外貨獲得に寄与すると期待されています。


東京-カイロ線は、エジプトでのテロ事件や政情不安による利用者の減退で2013年7月から運休していましたが、この10月29日から週1便で再開します。エジプト政府は日本からの旅行者を掘り起こすことにより、外貨の確保を目指しています。報道によると、日本人旅行者数は2010年の13万人をピークに激減し、14年は1.2万人となりました。その後16年は1.9万人、今年は1-6月の半年間で1.8万人と、徐々に回復しています。


エジプトの経済指標から判断すると、現在は混乱期といえそうです。消費者物価指数(CPI)は今年に入り実に30%台と後進しています。他方、2016年11月の変動為替相場への移行で、通貨ポンドは1ドル=8.8ポンド付近から一時19ポンド台まで下落。その後は18ポンド付近で推移していますが、穀物などの輸入依存度が高いため国内物価の押し上げ要因となっています。補助金の削減で、国民は生活苦を強いられているようです。


経済低迷の原因は「アラブの春」です。チュニジアで長期独裁政権の打倒を目指した反政府デモ「ジャスミン革命」は2010年末に始まり、世界中から注目を集めました。この動きが波及したエジプトでも、麻薬密売の警察の関与をネットで告発しようとしたコンピュータ・プログラマーが警察に撲殺された事件をきっかけに大規模な抗議活動が起きます。2011年1月の「エジプト革命」により、29年にわたるムバラク政権は終えんを迎えました。


ただ、その後混乱は増幅します。軍の暫定統治を経て、自由選挙で選出されたムスリム同胞団のムルシー氏が2012年7月に大統領に就任しました。ムルシー政権は経済の再建に乗り出したものの、成長のペースは鈍く有権者の期待は失望に変わります。そして、軍事クーデターによって就任からわずか1年後の2013年7月、民主化プロセスで発足した政権は幕を下ろすことになりました。

その後2014年5月に行われた選挙で選出されたシシ元国防相が大統領に就任し、停滞したエジプト経済の立て直しに着手。しかし、テロ事件による海外からの観光客激減が大きく響いて深刻な外貨不足に陥り、エジプト政府は国際通貨基金(IMF)への支援を要請します。シシ政権は支援の前提となる為替の自由化と財政改革を進めました。その結果、足元の激しいインフレを引き起こしています。


こうした状況で、日本からの直行便の再開は朗報ですが、エジプト政府の思惑通りに旅行者が回復するには時間がかかるでしょう。やはり、エジプトでの治安情勢に不安がつきまとうからです。つい最近にも治安当局と武装グループの銃撃戦が発生。シシ政権の発足当時の火種が残り、さらにイスラム勢力への締めつけへの反発も強まっています。筆者としても、かつて学んだアラビア語が通じるか試したい一方、もう少し待ちたい気もします。

「吉池 威」



<MT>

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