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【FISCOソーシャルレポーター】菟道りんたろう:労働者も株式投資をした方が良い理由


以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人投資家菟道りんたろう氏(ブログ「The Arts and Investment Studies」を運営)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

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※2017年10月10日0時 に執筆

政府は先月発表した月例経済報告の記者会見で、2012年12月に始まった景気回復の長さが58カ月(4年10か月)となり、戦後2位の「いざなぎ景気」を超える長さとなる可能性を表明しました。ところがそういったニュースに対してインターネット上の掲示板やSNSでは「実感できない」という批判的な言葉が溢れています。では、なぜ私たち庶民は現在の景気回復を実感できないのでしょうか。いろいろと理由はあるのでしょうが、最大の理由は日本がいよいよ普通の資本主義社会になってきたからだと思います。つまり、企業が獲得した収益を労働者に分配するのではなく、株主への配当などに優先的に回す社会になったということです。そして、そうであるからこそ労働者も株式投資をした方が良い理由があるのです。

そもそも株式投資は庶民にとって無縁のものという先入観が日本では強いのですが、はたしてそうでしょうか。私も含めてほとんどの庶民は労働者階級に属しているわけですが、資本主義の原理を把握すれば、じつは労働者階級こそ株式投資が必要なのです。なぜなら、資本主義とは剰余価値を生み出しながら進展する資本の自己増殖運動だからです。このことを明確に分析したのはマルクスの「資本論」でした。資本の自己増殖運動によって生み出される剰余価値が労働者に分配されないからこそ、資本家は富み、労働者は貧しくなるのです。

資本の自己増殖という仕組みは、有名は次の式で表されています。

G(貨幣)—W(商品)—G’(貨幣)

これは企業が商品を仕入れ、仕入れ値よりも高い値段で売る仕組みです。「´」が剰余価値となります。この剰余価値を生み出す生産過程で仕入れる商品には原材料のほか生産設備、そして労働者から買った労働力商品も含まれるのですが、労働者に支払われる賃金には「´」の部分、すなわち剰余価値が十分に含まれていません。なぜなら、賃金は労働者が提供した労働力商品の対価ですから、基本的には等価交換されたものと考えるべきだからです。剰余価値が労働者に分配されないからこそ、企業が儲かるほどに、労働者の賃金は増えないのです。

では、労働者が企業から剰余価値を回収する方法は何なのか。ひとつは労働運動によって労働分配率を高めていくことであり、これは非常に重要なことです。そして、もうひとつが株式投資による剰余価値の回収だと私は強調したい。

労働者が株式投資するということは、剰余価値を資本から取り返す行為です。まず、配当という形で剰余価値の一部を回収する。残りの利益剰余分は設備投資や利益剰余金など株主資本の形で企業の中に蓄積されていきますが、株式を保有するということは、その企業の資産を間接的に保有するということですから、これも投資家のものになる。その増加は長期的には株価の上昇という形で反映されるでしょう。こう考えると、労働者が株式を保有するということは、たとえ部分的にでも剰余価値の分配のすべての局面に参加することを意味しているのです。

だから、公開された株式会社というのは労働者階級にとって極めて大切なものです。実際、マルクスも株式会社の意義を強く認識し、「資本論」の中で次のような言葉を記しています。

“株式会社は未来社会への通過点である。”
“株式会社は詐欺師と預言者の顔をもつ”

私が労働者階級に属していながら、なぜ株式投資をするのか。それは、株式会社の「未来社会への通過点」「預言者の顔」としての可能性に賭けているからなのです。日本の経済システムがますます“普通の資本主義”に近づいていく現在こそ、こういった原理的な認識が大切になっていくでしょう。それこそ、労働者も株式投資をした方が良い理由なのです。
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執筆者名:菟道りんたろう
ブログ名:The Arts and Investment Studies




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