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コラム【アナリスト夜話】重要なことは「細部」に宿る(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)


週末に、出先で紙版の日経新聞朝刊を久々に読みました。数年前にアプリ版に切り替えて以来、紙媒体は殆ど読まなくなっていました。

しかし、いざ紙媒体をみると、これはこれで、非常に興味深いと思いました。前日夜に携帯に送られてきたトップニュースは、どの媒体も、ペロシ氏の台湾訪問、雇用統計とアマゾンのルンバ買収でした。一方、翌朝の紙の日経新聞のビジネス面を広げてみると、これらとは別に、事業再編関連の記事が6つも掲載されていました。 一つ一つのニュースは大きくないため、トップ記事には取り上げられませんが、併せてみると重要なトレンドを表している気がします。まだ1日だけの話ですが、ひところよりは株価が落ち着いたことや今後の米政策金利上昇から、今のうちに事業を再構築しようという動きが見て取れます。この流れはまだ続き、その巧拙が将来の企業価値に大きく響くことになりそうです。

こうした全体感は、トップ記事だけを見ても感じにくいものです。にも関わらず、人々はネットだと紙媒体以上にトップ記事に集中してしまうようです。昨年行った実験では、ウェブ画面のトップ情報を少し下の方に移しただけで、人々がその情報を見る時間は3分の1近くまで減少しました。現実の世界では、次々と新しい情報が送られてくるため、上の方の数行を見ただけで次の記事に移る傾向は一層強いのではと思います。

最近分析したデータによれば、こうした目立つ情報に引きずられるというバイアスは、投資経験を積んでも案外解消されず、むしろ年齢とともに強くなってしまうようです。バイアスを避けるには、ネットのトップ記事や、「!?」が多い刺激的なタイトルに目を奪われないよう心掛け、自分の興味以外の情報に広く目を配ることが必要ではと思います。 あるいは、時々、コンビニで紙の新聞を購入し、電車の中で昔ながらの縦二つ折り手法で読み解いたり、机の上で大きく広げて眺めてみるのも一案かもしれません。


マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:8/8配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)


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