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コラム【アナリスト夜話】ロシアのデフォルトで、東西の関係は「定常化」へ(マネックス証券 大槻奈那)


先週末、格付会社は、ロシアを「選択的デフォルト(一部の債券をデフォルトとすること)」とするとともに、異例の格付け取り下げを発表しました。

ロシアは、1998年にも債務の一時停止(その後支払い)で形式上デフォルトしていますし、それより遡れば、1918年に当時の政権が債務返済を拒否し、これらの旧ソ連債に決着がついた1997年まで不透明な状態が続きました。つまり、この100年でみると、ロシアについては、むしろ債務に問題がなかった2000年代初頭が特異であり、「定常状態」に戻ったとも考えられます。

もちろん、今回は1918年や98年よりも深刻です。98年当時の支払い停止宣言時は、アジア通貨危機の「もらい事故」的な面もありましたので、その後ロシアは西側寄りのIMFに資金支援を求めています。旧ソ連時代末期に加盟済みだったSWIFTについても、排除されることはありませんでした。

また、貿易や資本取引の制限も大きな違いです。ロシアの輸出量はこの20年で数倍に拡大し成長の原動力になってきただけに、その6割近くを占める西側との取引制限は大打撃です。また、近年のロシアは、外資獲得を推進し、2020年の世界銀行のビジネス環境評価では日本を上回る28位まで上昇しています。しかし、今後しばらくは西側からの資本流入はまず期待できないでしょう。

この20年間は、ロシアを含む全世界が、衝突を続けながらも、互いの成長を享受してきた「蜜月時代」でした。しかし、我々ホモサピエンス・サピエンス(新人類)は、1万年前の誕生以来、そもそも見知らぬ人との協業は苦手だったようです(P.シーブライト「The Company of Strangers」)。それが何とか成長という共通目標の基に協力し、単純な機械ですら一から一人で作るのは不可能なほどに分業を進めてきました。

今回のロシアのウクライナ侵攻に対する西側の反発は猛烈で、こうした経済的な歩み寄りの努力は水泡に帰すと考えざるを得ないでしょう。しかし、ロシアの再分断が懸念された99年のチェチェン紛争、14年のクリミア侵攻時も、世界の株価の動揺は短期間で終息しました。今回も、一時的なショックはあっても、戻りは早いかもしれません。長い歴史でみると、一定の分断が当たり前であり、これを前提とした新たな成長は十分可能だと思います。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:4/11配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)


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