北朝鮮のミサイル発射と心理戦【実業之日本フォーラム】
北朝鮮が保有すると見られる弾道ミサイル等を概観すると、まず驚かされるのは、その種類の多さである。2019年及び2020年の2年間で、射程が400~600kmとみられる短距離弾道ミサイル3種類(イスカンデル、ATACMSに酷似したミサイル及び600mm長距離ロケット砲)の発射を合計14回実施している。さらには、ミサイルの搭載ビークルとして、装輪(タイヤ)車及び装軌(キャタピラ)車の垂直発射装置(TEL:Transporter Elector Launcher)に加え、鉄道軌道、潜水艦搭載弾道ミサイル(SLBM)と多彩である。防衛省公表資料によれば、長距離弾道ミサイルを含め14種類の弾道ミサイルを保有している。
軍事的合理性から判断すると、多様な装備の保有は欠点のほうが多い。装備武器の種類が多ければ多いほど、その維持整備の手間やスペアパーツ等の数が多くなり、費用がかさむ。さらに、そのすべてを運用可能状態としておくためには、人の教育訓練や効率的なローテーション等の人的リソースも多く確保しなければならない。従って、北朝鮮が頻繁に行っているミサイル等について、その全てが実用化されているとは限らない。多種、多様なミサイル発射に翻弄され、対応が難しいというようなイメージを持ち、過度に反応することは控えるべきである。
次に指摘できるのは、北朝鮮が公表したミサイル試験データの信用性が低いことである。例えば、労働新聞には1月5日及び1月11日に行った極超音速ミサイルの試験に関し、5日は120km側面移動し、700km先の標的に命中したとしており、11日は240km旋回軌道し1,000km先の標的に命中したとしている。長距離ミサイルの発射試験を実施する場合は、ミサイルに電波(テレメトリー)を発信する装置を取り付け、その電波を追尾することにより飛翔状況や弾着精度等を測定する。電波の直進性及び地球が球面であることを考慮すると、見通し距離の概算方法は次の通りである。
D(見通し距離km))=4.12(ルートアンテナ高度(m)+ルート目標高度(m))
テレメトリー受信アンテナを山頂に設置し合計高度900mと仮定した場合、見通し距離1,000kmを確保するための目標高度は約45,000mの計算となる。すなわち高度45km以下の目標からの信号は1,000km先からは探知できない。このため、ロシアや中国は、弾着時の弾頭の状態を確認するため、長距離弾道ミサイル等の試験を行う際の弾着点は陸上に設定している。もちろん、途中に航空機や複数の船舶を配置し、テレメトリー信号を中継するという手段があるが、今回北朝鮮がこれらの兵力を運用したという情報はない。防衛省の発表も「通常の弾道軌道だとすれば」という注釈付きの飛翔距離しか公表しておらず、弾着点は計算上の推定であると考えられる。
長距離ミサイルの試験において、弾着時の弾頭の状態は計算どおりに起爆するかどうかを判定する極めて重要な評価項目である。北朝鮮はこの部分の評価ができていない可能性がある。一方で、防衛省も韓国国防省も、北朝鮮が極超音速ミサイルと称するミサイルが、通常の弾道ミサイルよりも低い高度で飛翔し、変則軌道をとったことを認めている。北朝鮮の公表に対し、科学的合理性等の評価を加えた上で脅威評価をする必要がある。
1月12日付労働新聞は、11日の極超音速ミサイルの発射を金正恩総書記が視察したことを写真付きで報じている。記事の中に「朝鮮労働党第8回大会が提示した『国防力発展5か年計画』の核心5大課業のうち、最も重要な戦略的意義を持つ極超音速兵器開発部門で大成功を成し遂げた」との表現がある。5大課業の中には「水中作戦能力」の向上という項目がある。北朝鮮は2021年10月に潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の発射を実施している。核心5大課業の第二弾として、SLBM発射試験を行う可能性があり、これを極超音速ミサイル同様大きく報道すると考えられる。この場合であっても、単にSLBM発射に注目するのではなく、科学的見地からその性能を評価し、対応について検討していくというプロセスが必要がある。
北朝鮮の極超音速ミサイルについて、迎撃手段がないということのみがクローズアップされている。これは北朝鮮の心理戦に侵されていると言えるのではないだろうか。北朝鮮が極超音速ミサイルと称するミサイルは形状や飛行パターンから、米中ロが開発または開発中の極超音速ミサイルの2種類「HGV(Hypersonic Glide Vehicle)及び「HCV(Hypersonic Cruise Missile)」のいずれにも該当しない。北朝鮮が米中ロをしのぐ技術力を保有しているとは考えにくく、性能は誇張されていると見るべきであろう。
しかしながら、このことは北朝鮮の核及び弾道ミサイルの脅威を過小評価してよいということにはならない。北朝鮮が極超音速ミサイルの開発に成功したのかどうかは別にして、各種の弾道ミサイルを保有し、核の小型化にも成功している可能性がある。レールガンやレーザー砲といった装備開発に加え、事前に発射基地やビークルを無力化する装備の開発を進める必要がある。全ての発射基地を網羅することができないことから、敵基地攻撃能力の保有を無意味とする意見があるが、日本が同種能力の保有に踏み切ること、あるいは少なくとも保有に向けて議論を重ねることは、日本の強い意志を内外に示すことにつながり、ひいては抑止力強化につながることを忘れてはならない。
これも、ある種の心理戦である。心理戦は専守防衛であっても行使できる戦闘方法であり、北朝鮮の心理戦に対応し、積極的に実施していく必要がある。
サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。
写真:AP/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
イチロー氏、試合前は志願の「球拾い」マリナーズのスターにもアドバイス「自分を見失うなと」
【阪神】村上頌樹ゆとり調整「肩できるのめちゃくちゃ早かった」反省生かし1カ月ノースロー調整
【阪神】梅野隆太郎、巨人入りの盟友・甲斐に負けない覚悟「やるしかない」東京五輪で共闘の後輩
【オリックス】来季高卒3年目のホープ内藤鵬が新打法に手応え「踏み込む力が上がった」
【阪神】中野拓夢、現役ドラフト加入の畠世周と意外な接点「ゲーム仲間です」バックアップも約束
【阪神】佐藤輝明、サンタへのお願いは「10割打てるバット」21年に同様回答で翌年打率アップ
【阪神】才木浩人が新兵器ディップスバー導入 前鋸筋&体幹トレーニングで球速180キロに!?
【阪神】前川右京、掛布雅之OB会長の2割8分&2桁本塁打指令に「好不調を少なくしたら絶対届く」
慶大・広池浩成は「制圧できる投手」として2年後ドラ1目指す 西武編成幹部の父には「仕事で…」
ポール・マッカートニー、リンゴ・スターと再共演 ロニー・ウッドも登場し観客大興奮
高橋ジョージ「やっぱりお縄だよ」新曲の印税引き出したら銀行の態度が…その後に残高見て仰天
56歳熟女がかっこよさと自分らしさを追求「グラビアは60まで続ける」
膳場貴子が22日「サンモニ」欠席 TBS駒田健吾アナが事情説明
北九州中学生2人死傷 近くに住む40代男性を殺人未遂容疑で逮捕
さらば・森田、『ラヴィット』で放送禁止用語の大失言!麒麟・川島が即謝罪もブチ切れ
中川翔子「加害者を守る必要なんかない」 北九州・中学生殺傷事件では容疑者報道めぐり物議
特殊捜査係20人が窓ガラス割り突入、容疑者確保 中学生2人殺傷
「普通は即死」渡辺香津美、危篤状態から在宅療養に 妻「生きていてさえくれれば…」
59歳俳優が告白「俺は芸能界に入る前にAVプロダクションをやっていた」
八代弁護士「警察は早い段階から行動確認に」と推測 北九州の中学生殺傷事件で男逮捕
多部未華子(30)結婚の裏事情あまりにも恐ろしすぎると話題に!
二階堂ふみが結婚!?お相手が衝撃的過ぎてネット民「マジか・・・」
浜崎あゆみ、バスト丸見えの投稿にネット騒然「巨乳すぎて不自然」
クロちゃんを騙した「レイちゃま(小林レイミ)」の現在が別人すぎると話題に
高橋ジョージ「やっぱりお縄だよ」新曲の印税引き出したら銀行の態度が…その後に残高見て仰天
千円札に込めた奇跡!明石家さんまが30年間大切にした「ラブレター」に感涙
飯島直子「いつみんなに言おうか…」別れを報告「お空へ旅立ちました」
まるで別人?浜崎あゆみのFNS歌謡祭での姿に驚きの声
「わっぜか音がしっせえよ あたいは今朝ん台風か思っせえよ」 アルティメット鹿児島弁アニキが『Twitter』で話題に
WANDS復活で上杉昇(47)の衝撃的な現在の姿に注目が集まる事態に!
イチロー氏、試合前は志願の「球拾い」マリナーズのスターにもアドバイス「自分を見失うなと」
【阪神】村上頌樹ゆとり調整「肩できるのめちゃくちゃ早かった」反省生かし1カ月ノースロー調整
【阪神】梅野隆太郎、巨人入りの盟友・甲斐に負けない覚悟「やるしかない」東京五輪で共闘の後輩
【オリックス】来季高卒3年目のホープ内藤鵬が新打法に手応え「踏み込む力が上がった」
【阪神】中野拓夢、現役ドラフト加入の畠世周と意外な接点「ゲーム仲間です」バックアップも約束
【阪神】佐藤輝明、サンタへのお願いは「10割打てるバット」21年に同様回答で翌年打率アップ
ポール・マッカートニー、リンゴ・スターと再共演 ロニー・ウッドも登場し観客大興奮
【阪神】才木浩人が新兵器ディップスバー導入 前鋸筋&体幹トレーニングで球速180キロに!?
【阪神】前川右京、掛布雅之OB会長の2割8分&2桁本塁打指令に「好不調を少なくしたら絶対届く」
慶大・広池浩成は「制圧できる投手」として2年後ドラ1目指す 西武編成幹部の父には「仕事で…」