軍拡競争を繰り広げる朝鮮半島【実業之日本フォーラム】
文在寅大統領は、「国防改革2.0」を推進中であり、2022年までに61.8万人の兵力を50万人に削減する計画である。韓国統計庁による韓国の特殊出生率は2020年0.84であり、3年連続1を下回り、OECD加盟国の中で最も低い。少子高齢化が進む日本でも2020年の出生率は1.34であり、韓国の少子化は日本より深刻と言える。韓国の総人口は約5,130万人と、日本の半分以下であり、日本の自衛隊約24.7万人の倍以上の常備兵力を維持することは、徴兵制度下とは言え継続困難であろう。「国防改革2.0」に示される軍事構造分野の改革は、兵力削減に伴う抑止力の低下をいかに補うかが焦点となっている。
その中で、前政権から継続されている、北朝鮮の核及びミサイルを無力化する「3軸体系戦力」の構築は踏襲されている。2021年5月の米韓首脳会談で、文大統領が、韓国のミサイル開発を制限していた米韓ミサイル指針からの離脱を宣言したことは、韓国の対北抑止力強化への強い意志を感じさせるものであった。9月15日に実施した韓国初の潜水艦搭載弾道ミサイル(SLBM)の発射試験は、3軸体系の一つである「大量反撃報復」の具現化を目指すものである。韓国は、この他に射程80kmとされる弾道ミサイル玄II及びIVの発射試験を行っている。韓国の一連の弾道ミサイル等の発射試験に加え、国産ロケットの打ち上げは、北朝鮮にとっては脅威の増大としか見えないであろう。
2021年10月に、米軍情報局(DIA : Defense Intelligence Agency)は北朝鮮軍事力に関する報告書を公開している。報告書によると、北朝鮮はGDPの20~30%を軍に投資しており、その額は70~110億ドル(8,000億~1兆2,000億円)と推定されている。約150万人とされる兵力にしては少ない予算であり、頻繁に行われれるミサイルの発射実験から、その多くが核及びミサイル開発に使用されていると推定できる。
DIAは、北朝鮮の国家戦略を「政権の生き残り」と「朝鮮半島の統一」と見積もっている。金正日政権時は「先軍政治」を掲げ、軍の非対称戦能力の向上として、特殊部隊、生物化学兵器、長距離砲撃能力及び核能力が重視された。金正恩は軍に過度に依存する体制から、経済と軍事の「両輪戦略」に転換し、核、ミサイルに加え、空軍力を中心に通常戦力の強化を図っていると分析している。そして、北朝鮮はもはや1950年代のように朝鮮半島を席巻するような地上戦力を保有していないが、核からゲリラ戦に至るまで、広い範囲で非対称戦力を向上させ、抑止力を強化し、いかなる紛争にも対応できる体制をとっていると結論付けている。
2021年10月11に開催された「国防発展展覧会2021」における金正恩の記念演説にはDIAの分析に関連し注目点すべき点が確認できる。それは、韓国が弾道ミサイルを含む先端技術の開発、導入を北朝鮮に対する抑止力強化の名目で行っていることを強く非難、北朝鮮の自衛的権利まで損なおうとした場合、これを容認せず、強力な行動を持って立ち上がるとしている点である。自国の核、ミサイル開発はあくまでも韓国、米国の圧力に対抗するものであり、これを放棄する意思が無いことを明確に示すものである。
9月21日、文在寅大統領は国連総会の一般討論演説で、関係国が朝鮮戦争の終戦宣言を行うことを提案した。文大統領は「平壌共同宣言合意書」に署名しており、南北融和は政権のレガシーとしてさらに進めたい事業である。一方で、9月15日に実施した韓国のSLBM発射に際しては、「韓国のミサイル戦力を増強してこそ、北朝鮮の挑発に対する確実な抑止力になる」と発言し、金正恩の妹である金与正から「愚か極まりない」と非難されている。
南北融和を目指し対話を求める発言と北朝鮮抑止のためミサイル戦力の増強を進めるという発言を、日を置かずに行ったという事は、文大統領がこれらに何の矛盾も感じていないことを意味する。微妙な舵取りが必要な北朝鮮問題を考えると、韓国がどの方向を目指そうとしているのか国際的理解を求めるのは難しい。文政権は、中・長期的戦略に基づいて、外交・安全保障政策を推進しているのか疑わしいと言わざるを得ない。
一方、この文在寅大統領の姿勢は、思わぬ効果を果たす可能性がある。それは、朝鮮半島の軍拡競争が、北朝鮮経済を疲弊させ、政権崩壊の道を歩む可能性である。旧ソ連崩壊の一因に、アメリカとの軍拡競争に旧ソ連経済が耐えられなかったことが挙げられている。
10月11日の演説で、金正恩は「周囲の脅威に応じて北朝鮮の軍事力を絶えず強化することは朝鮮革命の時代の要請である」と述べている。それを実践するかのように、韓国のSLBM発射試験の同日に北朝鮮は列車に搭載した短距離弾道ミサイルの発射を行い、1か月後にSLBM試験を行っている。今回の韓国のロケット発射に対し、北朝鮮がロケット発射を試みる可能性もある。国防発展展覧会において、「米韓に対し強力な抑止力を持つ」と言っている以上、韓国が新たな装備の試験や導入を進めるたびに、それと同等またはそれ以上の能力を持つ装備の開発をしていることを国民に見せる必要に迫られる。韓国の半分以下の軍事費の北朝鮮が、新装備の開発を進めることは、必然的に軍の他の予算を圧迫するであろうし、ひいては経済制裁を受けて疲弊した国内経済に大きなインパクトを与えるであろう。このことは金正恩が進める「両輪戦略」の破綻を意味する。
韓国の国防力整備に関しては、いかなる脅威を想定し、いかなる軍事戦略の下で運用することを考えているのか分からないものが多い。海軍の装備で言えば、空母やSLBMそして原子力潜水艦がその代表例である。それらの多くは、戦略上よりも、国家としての威信を示す所要のほうが大きい。しかしながら、北朝鮮を軍拡競争に誘い込み、自壊を促す効果があるという側面があることも否定できない。
1991年冬、世界の超大国の一国であったソ連が崩壊した。当時ソ連の崩壊を正確に予測した人間はほとんど存在しなかった。北朝鮮の崩壊は、核及びミサイルに対するコントロール、大量に発生すると見られる難民対策等日本の安全保障に大きな影響を与える。北朝鮮問題は核・ミサイルだけではないことを認識し、各種対応策について、少なくとも頭の体操はしておく必要がある。
サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。
写真:AP/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
【U23日本代表】退場にPK…開催国カタールの判定巡り疑惑の声 A代表アジア杯決勝も物議
「マイアミの奇跡」中田英寿ら5人は2年後の98年W杯フランス大会に出場/過去の五輪経由W杯
アルラヤン谷口彰悟がU23日本の対戦国カタールの内情語る「スタイルも人間性もサッカーに出ている」
【ソフトバンク】柳田悠岐、落合博満と長嶋茂雄超え!5000打数以上での通算打率歴代5位
仲本工事さんの妻・三代純歌が2日連続で週刊誌との裁判に出廷「悪妻に仕向けて書かれた」
【静岡人魂】岩手の元日本代表MF水野晃樹の「地元愛」往復200キロ以上かけて運んだ支援物資
【DeNA】筒香嘉智、2試合計8打席「体のキレはまだまだ」冷静に分析 1軍合流へ状態上げる
大谷翔平また全国の子どもたちにプレゼント 今度はマットレス約2500本「一緒に大きな夢を」
【DeNA】三浦監督「昨日と別人のような感じ」9回登板の山﨑康晃3連打と押し出し死球でKO
松岡茉優フジ7月期連ドラ「ギークス」で主演「グルーヴを感じて」共演に田中みな実と滝沢カレン
何があった!?「エアコン」が想定外の壊れ具合!投稿者に話を聞いた
小澤征悦と再婚した桑子真帆アナ(34)黒い過去が流出、衝撃の過去にネット騒然
大原櫻子、ガーシー暴露後初のSNS投稿に賛否の声「イメージ最悪になった」
完全にダマされた! 『ラヴィット!』あのちゃん“事故レベル”大暴走は『水ダウ』遠隔操作のしわざだった ネットも納得
ガーシー、またも綾野剛の暴露写真でネット歓喜「この写真見て笑っちゃう」
30キロ減量の華原朋美、痩せた美貌で“ノリノリ動画”公開 美ボディーで熱唱
ユーチューバーもこう氏、元彼女・成海瑠奈について赤裸々告白
大久保佳代子「30代前半は性欲おばけ」“ストッパー”にするためあえてしていたこと明かす
「日本では日本語を喋る努力をしろ」外国人接客への投稿で炎上店主が「お詫びと休業のお知らせ」
アイドルの給与事情明かし「食べていくの無理に…」母が元おニャン子クラブのセクシー女優が訴え
何があった!?「エアコン」が想定外の壊れ具合!投稿者に話を聞いた
岡本夏生(56)、1600日ぶりにブログを更新した現在が衝撃
曙と熱愛した相原勇(52)の現在が衝撃的すぎると話題に
深夜のファミリーマート徘徊、必ず入っている「フエラムネのミニチュアおもちゃ付」を探し求めた結果……
ガーシー、佐野ひなこの暴露を示唆でネット騒然「ファンだったのに」
ユーチューバーもこう氏、元彼女・成海瑠奈について赤裸々告白
ガーシー、またも綾野剛の暴露写真でネット歓喜「この写真見て笑っちゃう」
いなば食品のホームページが表示されない!そして「プレスリリース」もヤバすぎると話題に
小澤征悦と再婚した桑子真帆アナ(34)黒い過去が流出、衝撃の過去にネット騒然
玉置浩二の妻、青田典子(53)の現在がとんでもない事になっていると話題に
【U23日本代表】退場にPK…開催国カタールの判定巡り疑惑の声 A代表アジア杯決勝も物議
「マイアミの奇跡」中田英寿ら5人は2年後の98年W杯フランス大会に出場/過去の五輪経由W杯
【ソフトバンク】柳田悠岐、落合博満と長嶋茂雄超え!5000打数以上での通算打率歴代5位
仲本工事さんの妻・三代純歌が2日連続で週刊誌との裁判に出廷「悪妻に仕向けて書かれた」
アルラヤン谷口彰悟がU23日本の対戦国カタールの内情語る「スタイルも人間性もサッカーに出ている」
【DeNA】筒香嘉智、2試合計8打席「体のキレはまだまだ」冷静に分析 1軍合流へ状態上げる
【静岡人魂】岩手の元日本代表MF水野晃樹の「地元愛」往復200キロ以上かけて運んだ支援物資
大谷翔平また全国の子どもたちにプレゼント 今度はマットレス約2500本「一緒に大きな夢を」
【DeNA】三浦監督「昨日と別人のような感じ」9回登板の山﨑康晃3連打と押し出し死球でKO
松岡茉優フジ7月期連ドラ「ギークス」で主演「グルーヴを感じて」共演に田中みな実と滝沢カレン