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馬毛島(種子島)への自衛隊施設誘致を目指せ 【実業之日本フォーラム】


鹿児島県南部の種子島では、2021年6月4日、地元報道機関が、「南種子町と中種子町の2町が、西之表市馬毛島(種子島西方約10kmの位置に所在する)への米軍空母艦載機離着陸訓練の受け入れのための自衛隊基地整備計画について、関連施設誘致の方針を決定した」と報じた。南種子、中種子2町長は、2021年5月に地元の鹿児島4区選出の森山裕衆議院議員に要望書を提出済だという。

南種子町は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センターに運搬されるロケット運搬船が使用する島間港の近くの海岸を埋め立てて、全長450メートル級の岸壁を新設する計画である。同町は、自衛隊艦艇の寄港とロケット運搬が可能な施設を整備することによる地域振興を見込んでいる。

防衛省は、昨年行った住民説明会において、「実際に戦闘機を飛行させて音の状況を知りたい」との意見を受け、5月16日および25日に、航空自衛隊のF15により、馬毛島周辺空域でデモ飛行を実施した。西表市内では、両日とも速報値では70デシベル(やかんの沸騰音、騒々しい事務所内のレベル)前後を計測し、今後精密な測定値の分析が行われる見込みだ。

5月16日には、本計画におけるボーリング調査等の許認可を行う塩田康一鹿児島県知事が、種子島の西之表市でデモ飛行を視察した。約10キロ離れた馬毛島上空を飛行するF15の姿は、目視でようやく確認できる程度であったが、低いエンジン音が西之表市方面にも鳴り響いていた。塩田知事は、定例会見で「デモ飛行は、判断材料の一つであり、住民の皆さんの考えや、他にも環境への影響も考慮しながら鹿児島県としての判断を示していくことになる」と誘致に対して慎重な言葉を述べた。

一方、西之表市の矢板俊輔市長は、4月12日に防衛省を訪問し、大西宏幸防衛大臣政務官に面会して、「馬毛島への施設整備は市民の理解が得られておらず、騒音や環境汚染の拡大の懸念がある」と誘致反対の立場を表明している。また、今回のデモ飛行についても、西之表市の広報誌に「デモ飛行の方法等について地元に相談もなく一方的に決められ、実際の飛行訓練には程遠く、正確性に欠け、住民間の混乱が生じないか懸念している」とデモ飛行の是非を問う意向を示している。

厚木基地における騒音軽減のため1991年から行われている硫黄島での米海軍空母艦載機の離発着訓練は、米軍側から訓練の負担軽減や安全面の不安要素を払拭するため代替訓練場の確保が強く求められていた。2011年6月、当時の民主党政権は日米安全保障協議会(2プラス2)において、馬毛島を米海軍空母艦載機の離着陸訓練の移転候補地とすることで米国と合意している。その後、2018年3月、空母艦載機部隊が岩国基地に移駐し、2019年4月の日米2プラス2において米国は、馬毛島の取得に係る日本の継続的な取組に対し評価を表明している。

中国の台湾進攻が現実味を帯び、尖閣への領海侵入も日常化する中、我が国周辺での武力衝突の危機が増大している情勢だ。馬毛島が米軍艦載機の訓練施設として活用され、さらに自衛隊の戦略拠点として整備されることは、我が国の防衛構想に大きなプラスになるだろう。

種子島の1市2町や鹿児島県の施設整備へのスタンスは異なっているが、防衛省には意思疎通の欠如による感情的な反発などの不具合を抑制し、必要な場合には丁寧な対応を行い、計画の実現に尽力してもらいたい。また、西之表市には、馬毛島の基地が我が国の安全保障上きわめて重要であることに理解をいただき、自衛隊施設の整備が計画通り進捗することを望みたい。

サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。


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